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第142話 新たな追跡者 ①

「「「「私たち Rosy lilies!」」」」


ビシッとVサインを決める私たち。




「「「うーん、何だかなぁ。」」」




何その反応、せっかく私が考えたのになんか気に入らない事でも?


「いや、別に……」


そう言ってチラリとメロディを見るリズ。


「う うん。ねぇ……」


何か言いたげにドロシーに目線を投げるメロディ。


「ダサイ。」


酷っ!

ドロシーさんさぁ、流石にそれはないんじゃない?

最近ドロシーの私に対する当たりが頓に雑になってる気がする。

Vサインが気に入らないのね?

だったらこれは?

これなら文句ないでしょ。


「私たち Rosy lilies!」


そう言って「チュッ!」て投げキッスをする私。

どうだ!


「「却下!」」

「下品すぎ。」


何でよーっ!

じゃあどんなのがいいのよ、言ってみてよ。


「いや、そもそもね掛け声とか振付とか要る?」

「だよね、私は要らないと思うなー。」

「恥ずかしいからイヤ。」


くっ。


「みんな我が儘はいけないと思うなー。もっと広い視野と心でもって大人になろうよ。」


「異議あーり!」

「大いに異議あーり!」

「絶対に異議あーり!」


そうですか、徹底抗戦の構えですか。

戦争も辞さぬとな。


「それでは多数決を取りまーす。」


ずるっ!!

それって絶対私が勝ち目ないヤツじゃん。


「反対の方は挙手をお願いします。」


「「「はーいっ!」」」


「反対3、賛成1 反対多数により本議案は否決されました。」


「「「パチパチパチ」」」

「正義の勝利だー!」


「卑怯だー、陰謀だー、横暴だー!」


「もう諦めなって。」

「そうだよ、子供じゃないんだからさ。」

「オルカもその変な性癖さえ無ければいい子なんだよね。」


みんな酷い言い草だ。

まるで私が聞き訳の無い駄々っ子みたいじゃないの。


「取り合えず名前はそれでいいから変な振り付けとかは無しだよ。」


3人にそう言われて渋々納得せざるを得なかった。

見てなさいよ、その内機会みて決めポーズやるんだから。



一番肝心のパーティ名はみんなの了承を得られたのでヨシとする。

次はリュックだね。

こっちの世界には何故か片方の肩に掛ける一本紐タイプの袋しかない。

あれ何でだろうね?

両肩で背負う方が両手仕えて便利で絶対いいのにねー。

そう思ったので作ってみた、そして登録しておいた。

これは便利だから絶対売れると思うのよ。

誰かこれで売り出ししてくれたら私は何もせずに特許料が貰えてすんごい助かるんだけどね。

そしてこれもジーンズやスニーカー同様リズとメロディにはすこぶる評判が良かった。


「これいい。背中に担ぐから重さも大して気にならないのがいいね。」

「今まで何で気付かなかったんだろう?」


これだったら背中に担いだまま戦闘すらも出来そうとすごく喜ばれた。

ただリュックを背負ってローブを着けると背中がポコンと膨れてちょっと不格好になっちゃうのがネックよね。

何なら仕事以外の普段着の時にしてもいいかも。

リズとメロディがすごく喜んでくれたのに対してドロシーは前世で知ってるどこにでもあるありふれた物だからか特に驚く様子もなく淡々とした口調で「ありがと。」と言って受け取った。

うんまぁ、これは予想の範囲内だね。

ドロシーがあっさりとした様子で受取ったのを見てリズとメロディは「あれ?」って顔をしたけど特に追及はしなかった。

ドロシーって時々すごくあっさりした対応したりするから今回もそれだと思ったのかな。



所でこれからどうする?

せっかくみんなでお揃いのに着替えたんだしパーティ名登録しに行く?

これ着てギルドに入ったら「キャー、可愛いー!」って注目の的なんじゃない?

行く?

行っちゃう?


「ジー……」


そんなジト目でドロシーさんなんですか?

何か言いたい事でも?


「それ、オルカが言われたいだけなんじゃない?」


ギクッ。


「チチチ チガイマスヨー。」


「図星か。」

「黒だね。」


「しょうがない子ねぇ、はぁ。」


ねーちょっと、ドロシーってば、そんな呆れたようにため息吐かないでよ。

それじゃあまるで私がとっても駄目な子みたいじゃない。

私さぁ、自分で言うのもなんだけど結構出来る子だと自負してるよ?


「「「はぁ?」」」


そこ!

なんでこんな時だけきっちり声が揃うの!

失礼じゃない?


「ま、まぁそう思うのは本人の自由だしね。」

「今は分からなくてもその内大人になったらイヤでも分かるよ。」

「もういい加減夢見がちな子供を卒業して欲しいもんだわ。」


「ちょっと!」


ねぇ、ほんと失礼よ?

いっぺんじーっくりとオハナシが必要かも。

で?

ギルドに行くの?行かないの?


「パーティ名は絶対登録しないといけないからね、取り合えず行くだけ行ってみて空いてたら登録しよっか。」


リズのひと言であっさりとそう決まった。

やっぱリズがリーダーの方が良かったんじゃないの?

何やかんや言ってもリズはリーダーシップあるよ。

そんな訳で私たちはリズを先頭にもう一度冒険者ギルドへ向かった。


「ちゃーっす!」


朝の喧騒は少し落ち着きを見せていている。

それでもまだちょっと忙しそうにしているメイジーさんに声を掛けるリズ。

チラっとこちらを見て他の冒険者の対応をしながら「どうしたの?」とリズに聞くメイジーさん。


「うん、えっとね。」


そこで一回区切って私を見て目で合図するリズ。

私に言えって事よね?

左様ですか。

はいはい、子供みたいなリーダーですけど私が言わせて頂きますね。

笑いながらそう言う私を「悪かったってば」と言って苦笑いするリズたち。


「私たち4人で新しいパーティー組む事にしたので登録をお願いします。」


そう言うと他の冒険者しながら右手でスッと紙が出て来る。


「そこに必要事項を書いて下さい。登録は後でこちらでやっておきます。登録料は小銀貨一枚になりますので書いたら銀貨と一緒に置いておいて下さいね。」


それだけ言ってメイジーさんは他の冒険者に掛かりっきりになってしまう。

なんかまだ忙しそうね。

ちぇっ、格好良くキメたかったのに。

残念。

後ろからドロシーにポンと肩を叩かれる。

分かったわよ。

私は記入して提出する。

メイジーさんはそれをチラっと見て「ん?」と小首を傾げたあと「ま、いっか」とそれを受け取る。


「名前は、これは何て読むのか分からないのでこのまま登録しておきますね。メンバーは4人で間違いないですね?」


「ええ。」


登録作業の為そのまま何やらカチャカチャして


「登録出来ました。今後は依頼を受ける時はパーティーで受けるのか個人で受けるのか明確にして下さいね。以上です。」


そう言うや否やまた他の冒険者へ向き直ってしまった。

うーむ、あっさりしてる。

名前の事何にも聞いてくれなかったな。

このパーティーの制服の事も誰も聞いてくれなかったし。

って言うか誰も注目すらしてくれない。

どして?

ねぇ、どうしてなのよ?

せっかくお揃いで作ったのに のにのにのに。


「ま まぁ、忙しそうだしさ ほら。」

「だよね、昨日の今日だし? 仕事頑張らないといけないし?」

「そうそう、明日になったらみんな気付いてくれるって。ね?」


みんなそんな必死にならなくても大丈夫だよ?

私落ち込んでなんかいないし。


「「「う。」」」


「そそそ、そうだ! 狩りに行こう狩りに! 気分転換にパーッと派手に暴れて憂さ晴らししよ? ね?」


リズぅ、私そこまで暴れん坊じゃないよ?

大体気分転換で暴れたりしないし!


(そうで御座います。狩りはいいものですよ狩りは! 闘いとは血沸き肉躍るもの、砕け散る骨飛び散る血肉! まさに至高の時。)


(くーちゃん……貴女どこの戦闘民族なのよ。)


はぁ。

まぁここに居ても仕方ないし気分転換に街の外に出るのはいいかもね。


「分かったわ、それじゃあ草原にでも行ってごはん食べよっか。」


私たちは草原に向かう事にした。

パーティーを組んだ記念すべき最初の日が草原にピクニックとはね。

けど、それも私たちらしくていいか。

そうゆう訳で門の所まで来る。


「お、姫さん今日は遅いんだな。って何だそのナリは? 何でみんな同じ格好してんだ?」


門兵さんが気付いてくれた!

うふー。

やっぱり分かる人には分かるのよ。


「分かっちゃう? 分かっちゃうわよね、そうよねー。 私たちこんなに可愛いんだもの。」


「ん?」


何言ってんだコイツみたいな顔してこっちを見てポカンとしてる。

あれ?

何か思った反応と違うような。


「なぁ、ザックのお披露目は昨日だったんだろ? もういい加減お祭り気分はお終いにしときな。 俺はまた何か怪しい宗教とか始めたのかと勘繰っちまったぞ。」


なっ。

何でそうなるの!

それを聞いたリズたちは思わず「ぶふっ。」と吹き出してるし。

俺何か変な事言ったか?みたいな顔してるのを見て更に笑い転げるリズたち。

ぐぬぬ、許すまじ。

「まぁまぁまぁ」とドロシーに宥められて門をくぐって外に出る私たち。


「何か知らんが頑張って来いよー。それとあんま遅くならないようにな!」


「「「はーい、ありがとー!」」」


私以外の3人は手を高く上げて陽気にブンブンと振っている。

わ 私は手なんか振ってあげないんだもん。

ちくせう。



それから街道をえっちらおっちらと歩いて行く私たち。

今日は結構人が出てるねー。

前も後ろも商人やら冒険者やらがそう遠くない距離を開けずに歩いている。

昨日冒険者たちの活動が少なった分今日に集中してるみたい。

何か普段あまり見ない冒険者風の人もチラホラと見かける。


(主様、ちょっと宜しいでしょうか?)


(ん? くーちゃんどうしたの?)


おや?

くーちゃんから念話だ、ちょっと改まった感じにいつもと違う何かを感じる。

私は前を向いたまま何食わぬ顔で歩きながらくーちゃんと念話を続ける。


(わたくしたちの後ろにさっきから尾けてくる反応が2組あります。)


(それっていつもの監視の人なんじゃないの?)


(いえ、それも尾いて来てはいるのですが、それとは別に全く知らない反応が2つ尾いて来ているのです。 知らない反応2つが少し離れて後ろに尾いて来ていて、そこから更に間を開けていつもの反応が2つ尾いて来ている状況です。)


それってつまり2組の尾行者が居るって事?

なんで?

1つはいつもの領主様の所の監視だからまぁいいとして、もう1つの方は一体誰?どこの関係の監視?

そもそもそれって本当に監視なのか?

ただの通行人とは考えられない?

他の領地から来た冒険者だったりとかは?

その辺りの可能性をくーちゃんに尋ねると思いもよらぬ返事が返って来た。


(わたくしたちの後ろに尾いている知らない尾行者2人ですが、彼奴らは気配遮断や忍び足と言った隠密系のスキル保持者のようです。しかも嫌な空気を隠しもしておりません、どこかで仕掛けて来るやも知れませぬ。)


(えっ? ホントに?)


(はい、ですのでわたくしたちが一旦後ろに下がってお守り致します。)


するすると後ろに下がって私たちとその新手の尾行者との間に入って守ってくれる事になった。

そのまま暫く街道沿いに進んで行く。

途中の分かれ道で1人また1人と離れて行き今は私たちだけが街道を歩いている。

動くとすればそろそろよね。

さてさて、どうするのやら。

そう思っているとまたくーちゃんから念話が入る。


(主様、2組の尾行者が接触した模様です。)


そうなの?

するとやっぱり2組の尾行者たちは仲間だったって事?

ただ私の探知の範囲外に居る為私には今の状況がどうなっているか分からない。

こっそり後ろを振り向くと遠くに小さい小さい動く人影らしき物が見えたような気がした。


(どうやら移動するようです。念の為後を追って確認して参ります。)

(参ります。)


あっ。

私が何か言う前に風のように駆けて行ってしまった。

仕方ない、私たちはここで一旦休憩にしよっか。


「あれ? くーちゃんさんたちが走って行っちゃいましたよ?」


「なんか、気になる物があったから見て来るって。」


メロディの問いにそう答える。

まぁ気になるってのは本当だから嘘ではないよね、正確でもないけれど。

別に尾行がどうとか言って変に怖がらせる必要もないし。


「ふーん。」


「そんな訳だから戻って来るまでここでお茶でもして待ってよっか。」




(くーちゃん・さくちゃん、ちょっとでも危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ。)


二人に念話を飛ばしておく。





◆◇◆◇◆◇◆◇



時間は少し遡ってオルカたちが門を出て街道を進んでいる頃。

オルカたちとは一定の距離を空けて尾行しているのを気取られないように慎重に歩いている二人組の男たち。

見た目はどこにでもいる普通の冒険者風、けれど纏っている雰囲気は剣呑で冒険者にしては少々鋭い眼つきをしている。

身のこなしは流れるように滑らかで明らかに『気配遮断』や『忍び足』と言った隠密系スキルを使っている。

そうしてオルカの『探知』スキルの範囲外の所をキープしながら前を行くオルカたちの後を尾けている。

その男たちの更に後ろには夫婦か恋人に装った1組の男女が付かず離れず尾行していたが前をゆく男たちは気付いていなかった。

この時点で二人組の男たちより後ろの男女の方が格上と言えるだろう。

しかしそれらを更に上回るのが葛の葉である。

彼女の探知能力は人間のそれを軽々と凌駕しおよそ考えられない程の距離でも正確にその存在を把握していた。

今も葛の葉探知能力により常に捕捉され続けている。


「なぁ、前の二人組の男あれ絶対そうだよな?」

「ですね、あれはどこからどう見てもカタギではないですね。しかもしっかりスキル使ってますし。」

「けどまだまだ甘いな、気配を消しきれてない。三流だな。」


そう話しているこの男女も葛の葉にはしっかりとその存在を捉えられている事には気付いていない。

葛の葉に言わせると彼らですらも二流なのだが。


「まだ動く気配がないな、暫く後を尾けて様子をみるか。」

「はい。」


前を行く二人組の男たちは刺すような鋭い眼つきでジッとオルカたちを見ている。

なにも喋らずただひたすらにジッと見つめるその目はどんな小さな動きも見逃すまいとしているようだ。

オルカ一行、二人組の男たち、1組の男女、それぞれが等間隔に並んで歩いている。


「なぁイルゼ、アイツ等の目的はなんだと思う?」

「分かりません。」

「いや、ちったぁ考えろよ。」

「今の所ただ監視しているだけのようですが……」

「まぁ、それだけじゃないだろうな。」

「でしょうね、恐らく敵対貴族の手の者だとは思いますがどうします? 取り合えず消しますか?」

「待て待て、いきなり消すとか言うな。まずはどうにかして捕縛する事を考えろ!上手く生きて捕まえられたら何かしら情報を掴めるかもしれん。」


この男女の名前は男の方がマイキー、女の方がイルゼと言う。

二人ともアンナの同僚の諜報部員であり、今回の任務はオルカの監視と警護だ。

立場的にはマイキーの方が上司でイルゼが部下なのだが過激なイルゼを上司のマイキーが止めると言うのがこの二人の通常だ。

これが平常運転とも言う。

前の二人の男たちに気取られないようにジリジリと距離を詰めていくマイキーとイルゼの二人。

見た目には仲の良さそうな夫婦か恋人同士の冒険者にしか見えない。

楽しそうに会話しているがその目は笑っておらずジッと前の二人を監視していた。

二人は態と隠密系スキルを使わずあくまで普通の人の様に装ってザッザッと音を立てながら歩いて近づいてゆく。

当然前の二人はすぐに気付く事になるがスキルを使ってない二人を一般人だと勘違いして油断してしまっていた。

楽しそうに談笑しながら近寄って来る男女を振り返ってチラリと確認する男たち。

男たちとマイキーたちの距離が数メートルまでに近づいた所でマイキーがにこやかに笑いながら話しかける。


さて、どうやって捕まえてやろうか。

笑顔の下で素早く考えを巡らせるマイキーだった。





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