第14話 私は武器が欲しいのよ
異世界で転性して6日目の朝。
明かり取りに開けた穴から朝陽が差し込んでくる。
屋根があるおかげで毛布や髪の毛が濡れてないってのは楽でいいな。
お年頃の女子的には非常に助かる。
目覚めすっきり爽やか。
昨日の晩はついに念願の「焼き魚定食」を食べた。
「イワナモドキ」と「アユーモ」にちょっと強めに塩を振って、ヒレには化粧塩をする。
竈で炙って焼き色こんがり、脂がじゅわじゅわパチパチ。
3合炊きメスティンでお米を炊く。
1合は昨日の晩ごはんに、残りの2合は今日の朝とお昼のおにぎりにした。
魚から串を抜いて木皿に乗せて
「いただきます。」
骨から身を外してふわふわの身をお箸で持ち上げ口に運ぶ。
少し強めの塩加減と皮ぎしの脂が口の中で絶妙なハーモニーを奏でる。
と同時に炊き立てごはんを頬張る。
「んまぁ~♪」
はぁ~ しあわせ♪
これだよこれ。
日本人はやっぱりごはんだよね。
昨日の晩ごはんはこっちに来て忘れられないごはんになった。
よし、このお魚も確保しとこう。
今朝のごはんは昨日の晩炊いたごはんで作ったおにぎりだ。
中身は焼き魚の身をほぐしたものが入っている。
「おいし♪」
やっぱ白ごはんて美味しいよな。
お米は毎日食べたい!
お米の確保の為、今後は少しづつお米を出してストックして置く事にしよう。
それから数日間は森の中をひたすら歩きに歩き廻って探索しまくった。
探索しまくってる時に木の枝に触れたりして小さな擦り傷をあちこち作ったりした。
それを魔法で治そうと頑張ってたら『鎮痛』と『治癒』を覚えた。
探索の目的は色々ある、作りたい物が沢山あるのよ。
まず、家が欲しい。
今は女神様から貰ったテントで寝泊まりしてる。
最初、テントだと襲われた場合逃げ遅れる可能性があるからテントで寝るのは避けてたんだけど、あの何に使うか分からない魔石が実は『結界石』だと分かってからはテントで寝るようにしてる。
それで少しは安心して寝られるようにはなった。
『結界石』は魔力を込めて起動するとテントを中心に誰も入れない結界空間を作ってくれる。
効果はおよそ一晩持つ。 十分だ。
魔力はそれなりに必要にはなるが、安全に野宿する為だから必要経費として割り切る事にした。
安全第一だから。 だって私女の子だもん。
テントがあると着替えが楽なのよ。
誰にも覗かれる心配もなしに着替えが出来るってすっごい重要よ。
だったら家要らないんじゃ?って思われるかもしれないけど、重要なのは着替えだけじゃないから。
お花摘むのだって大変なのよ? 分かる?
すんごい気になるの!
だから自分の家で、ゆっくりおト〇レがしたいのよ。
そう言う訳でマイハウスが欲しいの。
お分かり?
家を作る建材で必要だと思われるものは沢山ある。
その中で一番大量に要るもの、それは骨格になる木材ね。
ここは森の中、木材なら周りにいくらでもある。 ぶっちゃけ伐採し放題。
一応マイハウスをどんな風にしたいかくらいは考えていて、ログハウスがいいかなと思っている。
前世ではネット動画でログハウスを建てる動画を良く見ていて、ああ言うのに憧れてた。
自分だったらこうゆうのがいいなとかの思いはあるので、それを実現出来たらいいなと。
こちらは魔法のある世界なのだから決して不可能な話ではないのだから。
鉄はある、砂利や砂、粘土もある、ケイ石はたまたま見つけてストレージに収納してある。
断熱材やパッキンなんかは『創造魔法』でゴリ押しするつもり。
接合金物なんかも『創造魔法』で何とかなる、と言うか何とかする!
『創造魔法』って何もない所から創り出すと魔力をバカ喰いするけど、材料があれば消費魔力は抑えられると言うのは前に話した通り。
他にはイメージが明確ならば明確な程ちゃんとした物が出来るとかね。
何を言いたいのかって?
つまりちゃんとした物を造りたいと思ったら設計図があればいいのではないか?と言う事なのよ。
詳細な設計図があれば消費魔力を抑えつつ複雑な仕様だったり造形だったりする物も作れると思うのね。
だったら自分で設計図を引けば?と言われたら「それは無理」、私にそんな設計図なんか書ける訳がないじゃない。
だからそこを魔力ゴリ押しで『創造魔法』さんのお力をお借りするの。
設計図に必要な紙やインクはどうするんだ?って問題は既にクリア済み。
紙の原料になる木はそこらじゅうに生えている。
ではインクはと言うと、探索しまくった時に「虫こぶ」を見つけたの。
これで没食子インクが作れる。
あとは設計図を創る時にしっかりとしたイメージを持っている事。
1回でダメなら何回も『創造魔法』で書き直せばいいだけ。
他には私専用の武器が欲しい。
武器と言っても別に剣や斧が欲しい訳じゃない。
あ、日本刀なら欲しいかなとは思うけど、今はまだいい。
だいたい私の身体能力のスペックって多分低いと思うのよね。
なんたって今日現在でHP100/100、初日からまったく増えていない。
この身体で獣や魔物と闘えと? ムリムリムリ、そんなの絶対ムリ。
剣を振り回すのにも最低限の筋力が要るってのに100/100では到底ムリ。
剣を振ったらその反動で身体がふらついてしまいそうだもの。
身体がふらつかず、攻撃力も高い武器が欲しい。
魔法があるからいいだろうと思う人も居るかもしれない。
魔法ってかなり万能感のつよい物だ。
何でも出来そうな感じがする、だからまぁ魔法と言うんでしょうけど。
しかしそうじゃないのよね、ロマンなのよ。
今は美少女だけれども元男の自分としては、こう手にしっくりとくる武器が欲しいの。
ずっしりと重く引き金を引くと弾が飛び出すアレよ。
すなわち 拳銃。
弾丸が火薬で飛んでいくのではなく魔力による風魔法で弾丸を飛ばす仕様で魔力銃とでも言うべき物。
そういうのが欲しいのよ。
しかも二丁拳銃、だからロマン武器。
仕様はこんな感じでどうだろうか?
ベレッタ92に似た姿でダブルカラムマガジン仕様の15+1発。
ライフリングは右回りの6条で、全長220mmの自動魔力銃。
弾は薬莢を必要としない為ミニエー弾を少し長くしたような形をしている。
土魔法+創造魔法のゴリ押しでベースとなる弾を生産。
ベースは石礫弾丸 9mm弾だ。
材料となる石や岩ならいくらでもあるし、家造りの材料とも被るので膨大な量の石や岩を回収してある。
他には大きなダメージを与えるホローポイント弾も同時作製した。
魔力銃のチャンバーからブリーチブロックにかけて風の魔方陣が刻まれていて、弾に込められた魔力を使って風魔法を発動し弾を射出する仕組みになっている。
この魔方陣には欠けが出来ていて引き金を引くとファイヤリングピンがせり出して欠けが埋まって魔方陣が完成し風魔法が発動する。
弾を射出する時の風魔法のパワーの一部はファイヤリングピンと引き金を元に戻す力に使われ、元に戻る事で次弾がチャンバーに装填される。
薬莢仕様ではないので基本的にスライドは動かないが、最後の1発を打つと次弾が自動装填されない為、その際には次のマガジンを装填してスライドを手動で操作して弾を装填してやる必要がある。
この銃のメリットはすでに弾に魔力を込めてある為発射の際に追加の魔力を必要としない事で、マガジンを交換すれば何発でも連続で打ち続ける事が出来る事。
デメリットとしては事前に弾に魔力を込めておかないといけない事くらいか。
ベレッタに似た形と言っても詳細に覚えている訳ではないのであくまでも私のイメージの産物だ。
ちなみにこの銃には髑髏もカトラスも刻印する予定はない。
やはり憧れは憧れでないといけないから。
けれど似せるのだけは許して欲しいと思う。
この銃を左右の手で持ち、二丁拳銃とする。 ね、ロマンでしょう。
アニメみたいでカッコいいじゃない。
私も今は女の子だし彼女みたいにバンバン撃ちまくって強い女になりたいのよ。
この数日間歩きに歩き材料を回収し、既に紙やインクも作ってある。
これから設計図を作るんだがまずは小さい方の銃用の設計図から作ってみた。
『創造魔法』で作っては直し作っては直しを繰り返す事を更に数日間続ける。
銃の設計図が出来あがる頃には私がこの世界にやって来て13日目になっていた。
そしてついに私渾身の作「ベレッタ92オルカ改」が出来上がった。
冷たく硬い金属の質感とずっしりと重い重量感が私に安心感を齎してくれる。
よし、明日は試し撃ちだっ!