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第135話 オルカ争奪戦のち勝者アシュリー

なんか私の意見など全く聞かれないままに小金貨500枚の家購入計画がスタートしていた。

なんでやねん。

どうしてこうなったの?

しかし領主様始め皆さんそれはいい案だとでも言う様に納得顔している。

いや、納得しないでよ。

うーん、マジですか。

そんな豪邸貰っても素直に「ハイそうですか、ありがとう」って訳にはいかない。

いかないけど貰わない訳にもいかない。

これはもう領主命令として貰うのが当然で拒否は出来ないとなると、貰った後の事を心配しないと。

真っ先に浮かぶのは維持管理よね。

これから家を探すと言う話だけど、絶対に小さい家って事はないと思うのよ。

貴族の感覚の小ぢんまりだから正直平民にはその感覚が理解出来ないし、きっと使用人が必要になるような館とかになるんじゃないかと思う。

成人もしてない一介の冒険者が使用人が必要な程の家に住む?

そんな子供に雇われる使用人が不憫でならないわ。

これどうしていいのか皆目見当がつかない。

誰に相談すれば良いのやら。

やっぱり困った時の院長先生かしら。

そんな事を考えていると不意に纏わりつくような不快感を覚えた。




……っ!



なにっ?

このザラリとした逆撫でするようなイヤな感じ。

これってもしかして誰か私を鑑定した?

本人の許可なしに?


(主様!)

(ご主人様!)


(貴女たちも?!)


(はい、これは間違いなく鑑定されたものと思われます。)


やっぱり。

そうだよね、このイヤな感じはマルクさんの時に感じたあれと全く同じだもんね。

しかしどうして今ここでこんなこっそりとするかな。

なんで許可取ろうとしないんだろう。

それとも分からないだろうとでも思ってるのかな?


警戒されてる?

まぁ普通に考えたらどこの馬の骨とも分からない冒険者をお屋敷に招待するんだから警戒ぐらいされるか。

私だったらバチバチに警戒する。

何だったら出来るなら所持品検査くらいはする。

あからさまにそうされないだけまだ歓迎されていると見ていいのかもしれない。


(主様どうなさいますか? ちょっと暴れましょうか?)

(暴れます?)


(ダメよ、ほんとヤメてね。こんなとこで問題起こしたら私捕まっちゃうじゃない。)


(勿論冗談で御座いますよ。)

(冗談ですー。)


冗談に聞こえない。

この子たち本当にやりそうだから怖いわ。

それに鑑定されたって私の鑑定LVは8だからそれ以上のLVじゃないと見られないし、仮に私以上の鑑定LVだったとしても私の隠蔽スキルを超えないといけないから実質私のステータスを見るのは不可能なのよね。

だから心配はしてないのよ。

心配はしてないけどあまり気分のいい物ではないわね。

まぁ別にいいけど。

それとなく周りの様子を窺うけれど特に不審な様子は見られない。

アシュリー様を始めとするお子様たちは……あの感じだとシロかな。

ならやっぱり大人、領主様の意向を汲んだグレイソンさんかメイナードさん辺りの指示なのだろう。

ただ、誰の仕業かは分からなかったけど。

あまり事を荒立てたくはないからこのまま黙っている事にする。


「オルカ殿、私たち大人はこれで失礼するよ、後は子供たちでゆっくりすると良い。」


そう言って領主様たち大人組は別の部屋へと移動して行った。

ふむ、一旦は引いたか。

特に私に対してどうこうというのは無さそうね。


残されたのはサイラス様・テオドール様・アシュリー様と私の4人とそれぞれのお付きの侍女たち。

さて、この後は……。


「「オルカ殿。」」


二人の声が揃う、そしてお互いを見合う二人。

微妙な沈黙。

お互いに動きをけん制しあう。

まず積極的に動いたのはテオドール様。

顔を赤くして少しまごつきながら「もし良かったら少しお話がしたいと……」と言った所でサイラス様の「ちょっと待ったー!」が入る。


「兄上、僕が先です。」

「いや、ここは年長者である私からだ。」

「そこは普通年長者が年下に譲る所では?」

「何を言うか、私はエスコートの手本を見せてやろうと思ってだな。」

「それには及びません。」

「煌びやかな王都での様子などの話を聞くのもまた楽しかろうと。」

「それでしたら僕でも出来ます。」

「なら、貴族のご令嬢が足繁く通う王都でも有名な菓子店はどうだ?知っているか?」

「勿論です。僕は美味しい紅茶を出す店も知っておりますよ。」

「く、生意気な。ならば宝石店はどうだ? 流石に宝石店はテオドールも行った事はあるまい。」

「そ それはそうですが。」

「ふふん。私の勝ちだな。テオドール諦めろ。」

「何を仰います兄上。だいたい兄上は常々女性は面倒くさいと仰っていたではありませんか。」

「いや、それは我が儘で傲慢な貴族の令嬢の事だ。それに比べて……」

「兄上、もう成人なのですからそろそろどこかのご令嬢と婚約なさらないと父上も母上も安心出来ませぬ。」

「お前までグレイソンみたいな事を言うな。そうゆうお前こそホラあの何とかと言う伯爵令嬢とは上手く行っておるのか?」

「なっ、それを今言うのは卑怯です!」

「なんだ、順調なのか。ならやはりここは私の出番であろうが。」

「それはそれ、これはこれです。それにまだ婚約はしておりません。」

「なら、早く婚約して父上と母上を安心させてやる事だ。」

「ぐっ、普段剣の鍛錬ばかりしているくせにこんな時だけ良く口の周る。」

「ふふん、そこは年の功と言え。テオドールよ。」

「ぼ 僕の方が先に……」

「さぁ、オルカ壌。私と少し話でも……」



「オルカお姉さま、これからは女の子同士の時間でございますわ。さぁさ、参りましょう。」


アシュリー様に手を引っ張られて立ち上がる私。

柔らかいアシュリー様の手が私の手に。

ほっそりとした白魚のような指が触れる。

輝くような笑顔を見せて私の手を引っ張るアシュリー様がとても可愛らしい。

フランス人形さんみたいって言うのはアシュリー様の事を言うのね。


「では、お二人ともご機嫌よう。」


「「あ……」」


茫然とするサイラス様とテオドール様。

そしてそれを優しい目で見守る侍女の二人。


「テオドール…お前が意地を張るから。」

「はぁ? 兄上が横槍を入れなければこんな事にはならかったのに。」


二人してしょぼんとしているのを遠目に見ながら談話室を後にした。

ちょっと可哀そうだったかな?

ねぇ、あれは大丈夫だったの?

そうアシュリー様に聞こうかと思ったら


「二人とも私のオルカお姉さまに色目を使うなんて百年早いですわ!」


また「私の」って言った。

どうやらすっかりアシュリー様の所有物と認定されたようだ。

後ろでジャスミンさんとアンナさんが笑いを噛み殺している。

そのまま私はアシュリー様の自室へ連れ込まれた。

ワーオ、異世界初の女の子の部屋、それも高貴なご令嬢の部屋でございますよ。

部屋の感じをひと言でいうとゴージャス!

素人の私が見ても高級品と分かる調度品に囲まれている。

それでいてテーブルやソファ、机といった家具類は女性らしい繊細な意匠が施されている。

テーブルの上に置いてある小物も可愛らしいものばかり。

この部屋の大きな窓は分厚い遮光カーテンが引かれているが、それも淡い色合いの物。

如何にも貴族のお嬢様って感じ。

ベッドが見当たらない所を見ると続きになっている別室が寝所になっているんだろうね。

流石にそこは他人が入る事は出来ないし、入ろうとも思わないけど。

ただ、貴族の寝台ってどんなのだろうって気にはなる。

純粋な興味ってやつね。

私のイメージする貴族の寝台って天蓋付きのベッド。

大きな大きなベッドに精緻な木製レリーフがついた柱が四隅に立っていて、そこにゴージャスなベッドカーテンが垂れ下がっている。

そんなイメージ。

この部屋はとても豪華で煌びやか、それでいて女の子らしい優しい感じに仕上がっているのは部屋全体が淡い色合いに統一されているからか。

目にする物全てが珍しくて興味をそそられる。

あまりジロジロ見るのは良くないと分かってはいるものの、ついつい周りを見てしまう。

そんな私の様子をニコニコと楽しそうに見ているアシュリー様。

アシュリー様に連れられて部屋に来たけれど、これから何をするのかしら?

お話?

お茶?


はっ。


まさかイケナイお遊びとか?


……。


まぁ、ないよね、それは。

私の暴走でした。


「オルカお姉さま、一緒にお風呂に入りますわよ!」


弾けんばかりの笑顔で私の手を取ってそう言うアシュリー様。


えっ?!

お お風呂?

私がアシュリー様と一緒に?


「それって不敬なのでは?」


「何故ですの? 私たちはお友達ですよね? でしたら何の問題もございませんわ!」


いや、普通貴族のご令嬢って沢山のメイドさんたちに傅かれて磨かれてそれこそ着せ替え人形のように入浴したり着替えをしたりするんじゃないの?

庶民ならいざ知らず高貴な方が友達と一緒にお風呂って有り得るの?


「さぁ、オルカお姉さま、こちらへ。ジャジーお風呂の用意は出来ていて?」


「はい、いつでも入浴出来ます。」


ジャスミンさんがそう答える。

ああ、そっか。

ジャジーってジャスミンさんの愛称なのか。

可愛らしい響き。

ジャスミンさんの答えに満足そうに頷くアシュリー様。

私の手を握って「早く早く」と急かすように引っ張る。


「ねぇ、アンナさん。あの……」


「どうぞ、お寛ぎ下さいませ。」


ニコリと返された。


「あのように楽しそうなお嬢様が見られるなんて。」


ジャスミンさんがウルウルした目でそれはもう嬉しそうに笑っている。

それヤメて、すっごく断りにくいんですけど?

これって断っちゃダメなやつですよね?

ジャスミンさんとアンナさんの方をちらりと見ると大変良い笑顔で私たちを見ている。

うん、これは断れないやつだ。

まぁ女の子同士だから別に問題はないんだけど、初対面に等しい貴族のご令嬢と一緒にお風呂に入るとは思ってなかったから流石に吃驚だよ。


(くーちゃんたちはここで待っててくれる? 何かあったら念話飛ばすから私たちが戻るまでゆっくりしてて。)


(御意)

(分かりましたー。)


「私の従魔にはここで待ってるようにお願いしておきました。」


そう言ってアシュリー様と手を繋いだまま横並びで部屋を出て廊下を歩く。

廊下には等間隔で灯りの魔道具が淡い光を放っていてほのかに明るい。

元世界なら薄暗いって感じる明るさなんだろうけど、こっちの世界ではこれでも十分過ぎる程の明るさだ。

貴族のお屋敷でこの明るさだから庶民の家ならもっと暗い蝋燭の灯りか、そもそも灯りはつけずにそのまま寝てしまうかのどちらかが普通。

宿でも灯りと言えば基本的に蝋燭だったものね。

そう思うと廊下だけこれだけの灯りの魔道具だからお屋敷全体だと一体どれだけの灯りの魔道具があるんだろう。

貴族の、それも高位の貴族の財力ってのは半端ないんだなっていうのを改めて実感する。

今隣で手を繋いで歩いている女の子はその高貴な家のご令嬢。

本来なら私みたいな平民と並んで歩くなんて有り得ないんだけど何故か気に入られちゃったのよね。

うーん、良く分からない。


「着きました。ここがお風呂場ですわ。」


既に先触れが出ていたようで扉の前でメイドさんが待っていて、私たちが到着するのに合わせてお辞儀をしてサッと扉を開けてくれる。

流石貴族に雇われているメイドさんだけあってその全ての所作が無駄なく洗練されていて美しい。

扉の前に居たメイドさんたちと一緒に中へ入る。

中はそこそこに広さがあるけれど私とアシュリー様、ジャスミンさんとアンナさん、それとメイドさんが6人、総勢10名も居ると少し狭く感じる。

お風呂に入るんだから当然これから服を脱ぐんだけど、ドレスってちょっと脱ぎにくいのよね。

それにアクセサリーや綺麗に整えた髪の毛の事とか考えたら誰かに手伝って貰えたらなって。

そう思っていたらメイドさんが人が側にやって来て「お手伝いさせて頂きます。」と。

あっと言う間にアクセサリーを外されセットされていた髪の毛もすいすいと解かれていく。

その手際の良さに感心してしまう。

アシュリー様を見ると普段からそうゆう生活をしているので、されるがままお世話される事に慣れているのが良く分かる。


ん?

こっちをジッと見ているアシュリー様と目が合う。

えっと、何でしょうか?


「オルカお姉さまのお召しになっているドレスとても素敵なのだけれど、その、何と言いますか…… せ  煽情的……こほん、随分とえっちですのね。」


顔を赤くして恥ずかしそうにしながら、今わりとすごい事言ったね。

えっちなドレス。

確かにそれは私も思わなくもない。

元男の私としては目の保養になるからと思って作ったけど、よく考えてみたらこれ着るのは私だから私が男どもの目の保養にされちゃうって事なんだよね。

それにドロシーにも「えっち」って褒められた?し。


「オ オルカお姉さま。 そのドレスは些か刺激が強すぎると申しますか……いえ、似合ってはおりますけれど……けどその、お胸がバインバインのブルンブルンでむっちむちのイヤラシイ身体つきは私の兄弟たちには毒にしかならないのではないかと。実際兄弟たちはオルカお姉さまに心奪われておりましたし。」


ね、ちょっと言い方が……。

バインバインのブルンブルンでむっちむちのイヤラシイ身体って。

それ褒めてないよね?

ディスってる?


「少々刺激的と言いますか、目のやり場に困ると言いましょうか。いえ、私はえっちなオルカお姉さまでも全然問題ございません、むしろ望むところですわ!」


いや、そんなの力いっぱい望まないで。

それよかジャスミンさんや周りに居るメイドさんがアシュリー様を見る目が優しいと言うか生温いと言うか。

「ああ、また変な事言ってる」みたいな、子供が我儘を言って困らせてるのを見守るお母さんみたいな目と言うかね。

ね、みんなも黙って見てないでアシュリー様を止めてあげて。


「オルカお姉さま。」


顔全体を真っ赤にして上目づかいでそう言うアシュリー様の破壊力がすごい!

この子は小悪魔かっ!

どこでそんな高等テクニックを覚えたの!

高貴で麗しいお嬢様にそんな潤んだ瞳で見つめられると平常心で居られなくなっちゃうよ。

強敵だ、ドロシーの次に強敵だわ。

これは今日は鉄の心を総動員しないとリズたちの二の舞になっちゃいそう。


「さぁさ、お嬢様もお戯れはそれくらいになさいませ、オルカ様がお困りでございますよ。」


まるでいつもそうであるように適当にジャスミンさんにあしらわれているアシュリー様が頬をぷくっと膨らませて口を尖らせている顔もまた可愛らしい。


「ジャジー、私の扱いがぞんざいではなくて?」


「滅相も御座いません。いつも通りで御座います。」


すまし顔でシレッとそう言うジャスミンさん。

主従のその様子を見てクスクスと笑うメイドさんたち。

ああ、この二人はいつもこうゆうやり取りをしているんだな。

なんか主従関係と言うより仲の良い姉妹と言った感じか。

勿論ジャスミンさんがお姉さんでアシュリー様が妹だけど。

けど周りでクスクスとメイドさんたちが笑っていても不敬だなんだと怒ったりしないあたりアシュリー様は使用人にも優しいんだなと言うのが良く分かる。


「さ、お嬢様もオルカ様もお召し物を脱ぎましょうか。」


にっこり笑ってジャスミンさんがそう言って私たちを脱がしにかかる。

わらわらわら~っとメイドさんが周りにやって来たかと思ったらあっとゆう間にドレスを脱がされた。

なんと言う早業、熟練の手さばき。

アシュリー様はやっぱりされるがまま言われるがまま手を挙げたり下げたりしながらお人形さん宜しくドレスを脱がされてゆく。

そして二人とも下着だけにされた所でみんなの視線が一斉に私に集まる。

見られてる。

ジーっと見られてる。

とっても真剣にそれこそ穴が開く程見られてる。



あの、そんなに見つめないで下さる?





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