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第126話 えっちなオルカも嫌いじゃないよ

みなの着せ替え人形と化して玩具にされた私。

玩具にされた……玩具に……大人の……いえ、何でもない、聞かなかった事にして。

私を除くみんなが楽しんでくれたからそれで充分よ。

  

ドレスを纏い、ヘアスタイルをキメて、次は長手袋かストールかで悩む所なんだけど。

それはロジーヌさんがスパッと答えを出してくれた。

長手袋はどうしても夜会のイメージが強いから今回のような非公式の夕食会ではヤメておいた方が無難との事。

ただストールを羽織るっていうのはこっちの世界では馴染みがないようでちょっと驚かれたけど、お洒落だと思えばそれもアリだと言ってくれた。

ストールの羽織り方はドロシー先生にお願いした。


「ドロシーお願いしていい?」


「しょーがないなぁ。」


と言いつつ嬉しそうに笑うドロシー。

カワユス。

さっきは機嫌悪くなりかけたけどどうやら今ので直ったようだ。

ストールを手に持ちドロシーがストールの巻き方をレクチャーしてくれる。


ストールの巻き方はこうだ。

まずストールの表になる側を背中につけるようにして肘でかかえる。

ストールの表が出るように肩にかける。

最後に後ろに垂れた部分をくるくると巻けば出来上がり。


「これで良しっと。 どう?分かった?」


いえ、全然。

私はふるふると首を横に振る。

やっぱり私には無理だから今後はドロシーを私専属のスタイリストに任命しよう。


少し離れた所で見ていたロジーヌさんが「いいわね」と。

そのまま右へ回ったり左へ回ったり、近づいたり離れたり。

色々な角度から眺めて感心している。

そしてドロシーを盛んに褒めている。

ドロシーが褒められると私も嬉しい。

ふふん。

どうだ、私のドロシーはすごいのよ。

胸を張ると双丘がぶるんと上下に揺れる。

しかもボディラインが良く分かるニットドレスなもんだから弾むような揺れが余計に良く分かる。


「「いやいやいや、すごいのはドロシーであってオルカじゃないでしょ!」」


すかさずリズたちのツッコミが飛んで来る。

実に的確なツッコミありがとう。

でもドロシーは実質私のものみたいなもんじゃない。

だからいいのよ。


「さて、次は紅を差すわよ。」


ロジーヌさんが助手のミアさんに道具箱を出すように指示している。

テキパキと準備をするミアさん、これから何をするか良く分かっている動きだね。

道具箱の中にはお化粧道具がぎっしりと入っている。

私には何だかよく分からないけれど、興味があるであろうリズたちやドロシーの様子を見るにやはりプロの道具は違うと言う事なんだろうね。

ロジーヌさんはその中から細い筆と何種類もの口紅を取り出す。

肌の色と瞳の色などを見て私に合う口紅の色を選んでくれると言う。

こうゆうのは流石に専門家じゃないと似合う似合わないが分からないからね、とっても助かる。

ロジーヌさんの言うには、私みたいに雪のように白い肌、茶色い瞳、それからフェミニン系の顔立ちの場合はハッキリとした色が似合うんだって。

へー、そうなんだ。

私には何の事やらさっぱり。

結局ロジーヌさんが選んでくれた色はビビッドピンクもしくは真紅がいいんだって。

私的にはどっちでも良かったんだけどドロシーが「ビビッドピンクがいい」って言ってそれに決まった。

そして今まさに目の前にロジーヌさんが居て私に口紅を差している所だ。

細い筆を使って器用に塗り塗りしている。

一点をジッと見つめる真剣な眼差しに流石はプロと思わせる迫力がある。

何かさ、唇をジーっと見つめられるってアレだね。

ちょっと恥ずかしいって言うか照れるって言うか心が落ち着かないもんだね。

口紅を差し終わって満足気に「ふう」と息を吐きニコリと笑うロジーヌさん。

ほら、みんな見てあげてと言わんばかりに身体をスッと横にずらして場所を開ける。


「「うわー、オルカ綺麗。」」

「うん、やっぱりこっちの色のが似合ってる。」


リズたちやドロシーが褒めてくれる。

そう?

変じゃない?

似合ってる?


「えへへ、嬉しいな。」


褒められると嬉しくなって自然と笑っちゃうよね。


「オルカさんとっても綺麗。でも綺麗なだけじゃなくて少女らしい可愛らしさもあってすごく素敵。」


えー、カミラさんそれ褒め過ぎですよー。


「ロジーヌさんのおかげですから。」


「私は特に何もしてないわよ、ちょっとだけ綺麗になるお手伝いをしただけよ。」


ロジーヌさんはそう言うけどそんな事言われると元の素材としての私が綺麗だったって勘違いしちゃいそう。

そりゃあ多少の自覚はあるにはあるけど、それ言ったらリズもメロディもドロシーも元世界だったらアイドルにだってなれそうなくらいの美少女だよ?

別に私だけが特別って事はないと思うな。


「貴女も、貴女のお友達もみんな綺麗だと思うわよ?」


ロジーヌさんにそう言われて吃驚するやら嬉しいやら。

私たちは照れ笑いをして誤魔化した。


「んー、でも心配。」


リズが突然変な事を言いだした。

一体何が心配なの?


「だって、これで領主様の所に行くんだよね? 行って領主様の家族とごはんするんだよね?」


「そうだね、そう聞いてるけど。それが?」


「いや、領主様のとこって男の子供だって居るんでしょ? オルカくらい綺麗だったら息子さんに言い寄られたりするんじゃないかと、そうしたら断り難くなったりしないかなって。」


「えー、ないないない。それは無いって。誰も言い寄って来ないよー。」


「そう思ってるのはオルカだけだよ。」

「そうですよー、冒険者の間でもオルカの事好きって言ってるバカ男ども結構居るんだよ?」


「えっ、そうなの?」


全然知らなかった。

だって私そもそも殿方に興味なんてないし。

可愛らしい女の子や綺麗なお姉さんや色っぽい熟女さんとか好きだしぃ。


「そんなんだから心配なのよ。オルカって自分に向いてる好意には鈍感なんだもん。」


えー、何それ。

私ってそこまで朴念仁じゃないよ?


「はぁ、これだもん。」

「だよね、言い寄られてるのにすら気付かずにOKとかしそうで怖いわ。」


いや、流石にそれはない と 思う よ?


「……。」


ドロシーがジト目で無言の圧力を掛けて来る。

そんな目で見ないでくれる? 癖になっちゃいそうだから。


「いい? 何でもハイハイ言うんじゃありませんよ!」

「分かった?」

「分かったらお返事は?」


「……はい。」


私は子供かってーの。

3人に詰め寄られてしぶしぶ返事をさせられた。

私ってそんなにお馬鹿な子に見えるのかしら?

心外だわ。


それはそうと時間も押してるから私はパパっとネックレスとイヤリングを着ける。

イヤリングはオープンハートで防衛用の魔法陣付き、イヤリングは魔力を込めた一粒石の虹色魔石。

うむ、我ながら良い出来だと思う。


「じゃあ、ハイヒール履いてハンドバッグ持ってそこに立ってみて。」


ロジーヌさんに言われてハイヒールを履こうとしたけどどうにもぎこちなくて上手く履けない。

元男なもんだからこうゆう靴って履いた事ないんだもん仕方ないよね。

ドレスがピタピタでちょっと動くだけで色々とたゆんたゆんと揺れるしあちこちがムッチムチになっちゃう。

リズもメロディも男みたいなイヤラシイ目で「むふふ」とか言いながらこっち見てるし、カミラさんやミアさんは頬を赤らめながら「目の保養だわ」とか「すごくえっち」とか言ってる。

そんなに見られると余計に履きづらいんですけど?

立ったままでは履けないし、かと言ってしゃがむと見えちゃイケナイとこが見えちゃいそうで駄目だしどうすればいいの?って困ってたらドロシーが履かせてくれると言う。


「もう、仕方ないなぁ。履かせてあげるからそこ座って。」


私はベッドの端にとすんと座る。

藁入りのベッドだからちょっとガサガサして柔らかくはないけど固くもない。

こっちの世界ではこれが普通だけどきっと富豪とか貴族なんかだと綿入りのベッドとかあるんだろうね。

脚を投げ出すように柔らかくないベッドに腰掛ける。

するとドロシーが私の足もとにしゃがんでそっと脚に触れる。


ひゃぁ。


ドドド ドロシーが私の脚に触れている~。

んんんん。

ヤッバ、触れられただけで心臓がドキドキする。

ふくらはぎを優しく撫でるようにさわさわと触る。


もももも もうそれ以上は……


と、さぁこれから!って所でふくらはぎから手が離れてハイヒールの方へ向かっていく。


あれっ?

ドロシー? もう終わり?

ちぇっ。

残念。

もう少し触って欲しかったのに。

ヤダッ、私ったらはしたない!

こんなえっちな事考えてるってバレたら恥ずかしいじゃない。


「聞こえてるよ。」


真っ赤な顔をしてドロシーがぽつりと呟いた。


「えっ?」


「全部漏れてた……。」


「どこら辺から?」


「ドドド ドロシーが私の脚に~ 辺りから。」


オーノー!

それって全部じゃないのー!

超恥ずかしいんですけどー。

漏れてるなら漏れてるって何で言ってくれないのよー!


「いや、面白いなーと思って。」


リズぅ、面白がってないでそこは止める所よー。

カミラさんやロジーヌさん、ミアさんはニヨニヨと意地悪い顔で笑っている。

くっ。

何気にイラっと来るけど今回は全て私の自爆だから何も言い返せないのが悔しい。

ドロシーはまだ真っ赤な顔をして「えっちなオルカも嫌いじゃないよ」と聞こえるか聞こえないぐらいの小さい声で呟く。

思わずドロシーを見てしまう。

多分私以外誰も気付いてないみたい。

そっか私えっちでもいいんだ。

それ聞いて安心したわ。


「ほら、ジッとしてて。」


いや、私はさっきからジッとしてるよ。

けどそんな野暮は言わない。

だってデレてるドロシー可愛いんだもの。

顔を赤くしてデレなドロシーがハイヒールを履かせてくれる。

まずは左足から。

足首にストラップをかけて留金を留める。

左足が終わったら右足。


「ん、よし。」


ドロシーが満足気に立ち上がる。

そしてドロシーに手を引かれて私もベッドから立ち上がる。


どう?

どこか可笑しいとこない?

その場でクルリと回る。


「いいわね、すごくいいわ。」

「オルカさんとっても素敵ですよぉ。」


そ そうですか?

けど、ロジーヌさんもカミラさんも褒め過ぎですよ。


「さ、ハンドバッグも持ってみて。」


ロジーヌさんに手渡されたハンドバッグを受け取って身体の前で両手を揃えるようにして持つ。


「うん、バッチリね。これならどこの貴族のお屋敷に呼ばれても大丈夫ね。」

「実は本当は貴族とか?」

「はあぁぁ、なんて綺麗なの。女の私でも見蕩れちゃう。」


そんな口々に褒められると照れちゃう。

ポッと頬を赤らめる私を見て更に盛り上がるロジーヌさん・ミアさん・カミラさんの3人。


「オルカすっごい綺麗。まるで本当に貴族みたい。」

「うんうん、お姫さまみたい。どこかの貴族のご令嬢だって言われても誰も疑わないよ。」


リズもメロディもそれは言い過ぎだって。

そう言ってくれるのは嬉しいけど私は貴族になりたいとは思わないし、何よりみんなと一緒に冒険者やってる方が楽しいもの。


「オルカのえっち。」


えっ?!

何でドロシーだけ罵倒なの?

しかもジト目?

なんでなんで?

さっきは「えっちなオルカも嫌いじゃないよ」って言ってたじゃない。

あれは嘘なの?

何でなのよー、訳分かんないよー。


「ドロシーさん? どうしてお怒りなのでしょうか?」


恐る恐る聞くも


「知らない、馬鹿!」


とドロシーに怒られた。


「あんなえっちな服着てー! えっちになるのは私だけにして。」


「え、なに?よく聞こえなかったんだけど。」


「イーっだ。」


頬を朱に染めながらイーってやるドロシー。

なにその可愛いの。

ドロシーが可愛い過ぎてつらい。


「あーはいはい、イチャイチャすんのはそれくらいにしなよー。」

「ですよー、みんな呆れてますからね。」


えっ? どうして今のがイチャイチャしてるように見えるの?

リズたちどうかしてるんじゃない?


「「どうかしてるのはオルカ!」」


可笑しいなぁ。

どうも私とみんなとでは認識に齟齬があるようだね。


「はいはい、イチャイチャするのは後にしてね。」


ロジーヌさんとも一度サシでじっくりと話し合わないといけないね。

ロジーヌさんに適当にあしらわれ、そこに立ってちょっとポーズを取ってみてと言われる。

ポーズ?

どんなの?

ええっと、綺麗な立ち方ってどんなだったっけ?

確か……足をV字に開いて前方の足の踵が後方の足の土踏まずにくっつけるようにして立つんだよね?

こんな感じ?

ハンドバッグを持ってるから肘は曲げられないからこのまま下ろしてても大丈夫よね?


「いいわね、いいわね。立ち方もサマになっているわ。」

「ホントに、いいとこのお嬢さんて感じね。」


「すっごい綺麗。女の私から見ても惚れ惚れしちゃうくらいだよ。」

「なんか綺麗過ぎて高貴な方?みたいな感じだねー。」


「そんなに頑張らなくても良かったのに。」


なんかさっきからドロシーだけちょっと否定的よね。

でもそれって好きの裏返しだよね?

そうだよね?

そう思うと嬉しくはあるわね。


「でもさー、こんだけ上品で綺麗になったんだから今日の夕食会はバッチリなんじゃない?」

「そうそう、後は余計な犠牲者を出さなきゃ完璧。」


余計な犠牲者ってなによ、人聞きの悪い。

私は犯罪者予備軍か何かですか!

寧ろ私の方が犠牲者だよ?マジで。

行きたくもないのに夕食会に呼ばれたこっちの身にもなってよ。

ほんとこの数日大変だったんだから。

私がそう言うと


「まぁまぁまぁ、美味しい物がタダで食べられるんだくらいに思って割り切って行ったら?」


リズは苦笑いしながらそう言うけど、中々そう簡単に割り切れるもんじゃないよ。

私だって子供じゃないんだから貴族から呼ばれたらそりゃ行くよ? 行くけどさ。

だけどねぇ。

やはりあまり気は進まないな。

私とリズのやり取りを聞いていたみんなも苦笑している。


「功労者なんだから仕方ないじゃない。貴族としては功を上げた者に対して褒章なしって訳にはいかないのよ。」

「そうよー、行かなきゃ行かなかったで不敬になるんだから諦めるしかないわね。」


ロジーヌさんやカミラさんの言う事も分かる、尤もだと思う。

だから私も行く事にしたんだけどさ。

まぁいいか。

ここでウダウダ言っても何も変わらない。

取り合えずみなの協力もあってお呼ばれの準備は整った訳だし。

自分1人の力じゃここまで準備万端整ったかどうか分からないんだから。


もうそろそろいい時間かな。

領主様の使いの人が来る頃か。


はぁ、やっぱり気が重いよ。






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