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第120話 いつもの日常はいつものイチャイチャから

仕立て屋を出てまた辻馬車を拾って帰路につく。

一番遠いドロシーが最後に降りるからそれに合わせて4人分の料金を前払いで支払う。

私が一番最初で次がリズたち、最後がドロシーの順。

馬車は高級住宅街を抜けていつもの見慣れた平民街へと入って行く。

先ず最初に私が降りる番が来た。


「じゃ、また明日の朝ギルドでねー。」


「「「「バイバーイ。」」」」


私たちはお互いに手を振りあって別れた。

ふう。

今日は大変だったけど、それでも明後日の夕食会のお呼ばれも何とかなりそうな目途はついたね。

テーブルマナーも院長先生のおかげで何とかなったし、お土産も持って行かなくても特に不敬と言う事もないって分かったし、ドレスじゃなくても大丈夫ってのとお化粧してくれる人も手配出来た。

まぁドレスやアクセサリーに関しては自分で何とかしてみようかとも思ったり思わなかったり。

取り合えずは宿に戻ってちょっと一服だよね。



宿に戻って部屋に入ってベッドの端にちょこんと腰かけて「ふうー」っと息を吐く。

腕をぐるぐると回し「んんんー」と大きく伸びをしてパタンとベッドに仰向けに倒れて一休み。


あっ。


院長先生に貴族の挨拶の仕方を教わるのを忘れてた。

あっちゃー、私ってどうしてこう抜けてるのかなぁ。

元世界のカーテシーとこっちの世界のカーテシーとでは違いがあるのかどうか確認しようと思ってたのに。

いくら私が平民だからと言って何も出来なくていい理由にはならないものね。

出来ないよりちゃんと出来た方がいいに決まってるし。

うん、明日ギルドに顔出したあともう一度孤児院に寄ってみよう。

もしかしたらドロシーに会えるかもしれないし。

ん?

決してドロシーの顔が見たいから言ってる訳ではないからね!

ホントよ。

疑い深い殿方は嫌われるわよ!



翌朝。


「ふあぁぁぁ。 よく寝た。」


眠い目を擦りながらベッドから這い出る。

寝間着のワンピースの裾が捲れてえらい破廉恥な恰好になっちゃってる。

あら、ヤダ。 

アンヨが丸見え。

下着も丸見えじゃない。

淑女にあるまじき失態ね。

ササっとワンピースの裾を直して毎朝の確認事項、ステータスチェックを行う。



名前  オルカ・ジョーノ(城之内 薫)

種族  半神 界渡り人

職業  冒険者 テイマー 巨乳 美少女

称号  風使いの魔女 黒髪の戦姫 魔物たらし 女たらし 

年齢  13歳

HP   119/119

MP   22,082/22,082

ユニークスキル

 言語理解

 創造魔法

 スキル獲得優遇

 魔法の才能

 芳香異体

 ストレージ /時間経過無効1つ・容量制限有(地球一個分)・時間経過有1つ

スキル

 魔法 火  LV7

 魔法 水  LV7

 魔法 風  LV10

 魔法 土  LV7

 魔法 木  LV7

 マッピング LV7

 鑑定    LV8

 分析    LV8

 魅了    LV10

 誘惑    LV8

 房中術   LV2

 気配遮断  LV8

 忍び足   LV7

 隠蔽    LV6

 探知    LV7

 探索    LV7

 索敵    LV7

 警戒    LV7

 木材加工  LV7

 金属加工  LV7

 食肉加工  LV6

 魔道具作成 LV5

 魔法付与  LV5

 採取    LV7

 採掘    LV5

 並列処理  LV7

 解体    LV7

 料理    LV7

 服飾    LV3

 魔力操作  LV8

 狙撃    LV7

 身体強化  LV8

 格闘術   LV2

 調合    LV1

 豪運    LV777

従魔

 葛の葉(妖狐) クイーン・スライム


女神の祝福

 HP/MP 自動回復(小)

 毒・麻痺・呪い・魅了・混乱等の状態異常耐性(小)



はぁぁぁぁ。

この「風使いの魔女」って称号が消えてない。

って言うかさ、称号って増えてくもんなの?

普通は1つ新たに増えたら前のは消えるんじゃないの?

なんで増えてくのよ。

可笑しいでしょ。

あと不満なのはとうとう魅了がカンストした事。


マイガーッ!


恐れていた事が現実になってしまった。

魅了がカンスト、誘惑がLV8。

私は何処へ向かっているのか……。

けどまぁ、房中術のLVが上がってなかったのは良かった。

最近忙しくて夜のムフフ(お楽しみ)は致してなかったからかな。

セーフ!だね。

あと風魔法がLVカンストしてましたー。

なるほど、「風使いの魔女」の称号が付く訳だわ、納得はいかないけど。

あとね、最大MPが22、082ってヤバくないですか?

どんどん上がってくんだけど?

これいつ止まるの?

なんか際限なく上がってくから逆に不安になっちゃって。

ねぇ、女神様。

私だんだん人間から遠ざかってくような気がするんですけど?

本当に大丈夫ですか?



とは言うものの、いつまでもウジウジしてても仕方ないので気を取り直していつものお仕事服(冒険者の恰好)に着替えて階下へ行く。

カミラさんに朝の挨拶をして食堂に入る。

いつもの常連のお姉さんたちが朝食をとっている。

私は笑顔で


「おはようー。」


「「「おはよう。」」」


お姉さんたちも笑顔で挨拶を返してくれる。

空いている席に座ると給仕の女の子が朝食を持って来てくれる。


「ありがとう。」


お礼を言って受け取ると女の子はとても嬉しそうに笑い返してくれる。

んふー。

やっぱ女の子の笑顔はいいわねぇ。

女の子の笑顔は最高の味付けよ。

なので私も彼女に笑顔で返す。

朝食を食べ終わって食堂を出る時にさっきの女の子が「これはカミラさんからで、お昼に食べてねって言ってました。」とお弁当の包みを渡された。

いつもこうやってお弁当を持たせてくれる。

悪いなぁと思いつつも「ありがとう」と言って有難く頂いておく。


宿を出てまずはいつものように冒険者ギルドへ行く。

すると大体いつもと同じような時間にリズたちが歩いて来るのが見える。

あ、来た来た。

これもいつもの事。

二人はほんと時間に正確だよねー。

こうしていつもの日常が始まる。

この何気ない日常が大切なのよ。


「おはよう。」


「「おっはよー!」」


今日もリズたちは元気いいねー。

私はいつもリズたちから元気を貰っている。

今日も元気を貰えた。

うん、頑張ろう。

明日はお呼ばれの夕食会だけれどリズたちのおかげで元気が出てきたよ。

あとはドロシー成分を補給したら完璧ね。


「リズたちは今日の予定は? 何か依頼でも受けるの?」


「ううん、今日は不動産屋さんに行って来る。いくつか候補が上がって来る予定だからそれを聞いて来る。その後時間が余ったら常時依頼の軽いのでもこなそうかなって思ってるけど。」


そうなんだ。

そっかそっか。

私たちが住む家かぁ。

そこそこ広くて安い物件があるといいなぁ。


「いい物件あるといいね。」


「うん。 オルカは今日は何する予定?」


昨日聞き忘れてた事があったからもう1回院長先生に聞きに行こうかなって思ってるって言ったら、


「ドロシーに会いに行くんだー。」


ってニヒヒと笑われた。


「ち 違うから。 本当に院長先生に聞きたい事があるの。」


ちょっとムキになっちゃって思わずそう言ってしまった。

それなのに、


「よいよい、みなまで言うな。オルカがドロシーの事好きなのはよーく知ってるから。」


とリズがニヤニヤしながら言う。

むー。


「いや、だからね。違うの。」


「ほー、どう違うの? じゃあオルカはドロシーの事好きじゃないんだぁ?」


「なっ、誰もそんな事言ってないじゃない。 わ 私は別に……」


「別になんなのー?」


「リズ、揶揄いすぎ! オルカもムキにならないの。そんなんだから余計に揶揄われるんだよ?」


くっ、珍しくメロディが正論言ってる。

なんか悔しい。


「あはは、ゴメンゴメン。ちょっと揶揄いすぎたね。」


そう言ってペロッて舌を出してリズが謝る。

もー、次揶揄ったら許さないんだからね。

そう言って「メッ!」ってやったらリズは頬を緩ませて笑顔になる。


「もー、それ逆効果だって。そんなんされたら余計に揶揄いたくなっちゃうじゃないのー。 で、何しに孤児院に行くんだっけ?」


私の話聞いてた?

院長先生に質問があるってさっき言ったじゃない。

もー、ちゃんと聞いてよ。


「リズは貴族の挨拶の仕方って知ってる?」


「ううん。」


「メロディは?」


「私も知らない。」


「ね、だからよ。私も良く知らないから院長先生に聞きに行こうと思って。」


「「なぁんだぁ、そうだったんだ。 だったら最初っからそう言えばいいのにー。」」


「いや、私言ったよね? だよね?」


リズたちはにゃははーと笑って誤魔化してるし。

全くもう。

リズとメロディは「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ。」って言いながら私の腕を取ってギュッと抱きかかえる様にしがみついて来る。


えへっ。


腕に当たる柔らかい感触が心地いい。

これよこれ。

このぽよんとしたのが堪らんのですよ。

あー、幸せ。

私女の子で良かった♪


「「オルカ……全部漏れてるよ。」」


だってー、ねぇ。


「おーい、姫さんよぉ。相も変わらずイチャイチャしてるなー。天下の往来だからあんま激しいのはヤメとけよー。」


ちょーっと、ギルマス、私たちイチャイチャなんてしてませんよ?

見て分かりませんか?

至っていつもと一緒です。

これが私たちの日常ですけど?


「気づいてないのか? それがイチャイチャって言うんだぞ。」


あら、そうなの?

それは知らなかったわ。

常識って移ろいやすいものなのね。


「いや、移ろっちゃいけない常識もあるって知ってるか?」


なんでそんな疲れたような顔するのかしら?

不思議だわ。

私には理解出来ないわ。


「理解出来ねーのはこっちなんだが? それよりリズたちは仕事しなくていいのか? 早く行かないといい仕事なくなっちまうぞ。」


ギルマスが手の平をちょいちょいと動かして早く行けとうながす。


「ちょーっと、ギルマス扱いが雑ですよー。」


不満顔のメロディさん。

まぁ確かにちょっと雑ではあったわね。

でも何故かイヤな感じにはならないのが不思議。

ギルマスって何気に正義感が強くて曲がった事が嫌いで見かけとは大違いなの。

だからなのか人望はあるのよね。


「それと、明日だぞ。明日は美味いもん出るだろうから楽しんで来いよ。」


全然楽しみじゃないですよ。

そのせいで心配で心配で昨日から大変なんですからねー。


「カカカ、諦めろ。割り切って楽しんでくればいいじゃねーか。」


「そんな物ですか。」


「おお、そんなもんよ。」


はぁ、ハイハイ。分かりましたよ。

コウナッタラ覚悟決めて行って来ますよ。

なんかどよーんとした気分だわ。

リズたちとはここで別れて私は孤児院へ向かった。



孤児院に着いた。

ゆっくりと歩いたつもりだったけど思ったよりも早く着いてしまった。

着いたのはいいけれど、もしかしたらこの時間帯って子供たちの食事時間だったりする?

だとしたら今行ったら迷惑だよね?

どうしよっかと迷ってる内に子供たちが中庭に出て来始めた。

ワーッと来てわらわらわらーっと走り回っている。


「年長さんは小さい子の面倒をちゃんと見るのよー。 それから今日の当番の女の子はこっち来て手伝ってー!」


孤児院担当のサラさんが声を張り上げている。

ちょうど良かった、サラさんに聞いてみよう。


「おはようございます。」


「あら、使徒様。おはようございます。今日はどのようなご用件で?」


「実は昨日聞き忘れた事があって、院長先生に教えて欲しくて」


院長先生はいらっしゃいますか?

サラさんとそんな会話をしていると下の方から上目づかいで女の子がジーっと私を見ている。


「お姉ちゃんだぁれ?」


するとサラさんが女の子の前でしゃがんでとんでもない事を言いだす。


「このお姉ちゃんは使徒様よ。アリア様の次に偉い人よ。」


「アリア様ってれーはいどーのアリア様?」


「そうよー、礼拝堂のアリア様のお友達のお姉ちゃんよ。」


は?

なに言ってるの?

子供って純真無垢だからそんな事言ったら信じちゃうじゃない。


「そうなんだー、すごいお姉ちゃんなんだ。じゃあこの国で一番えらい人?」


「そうよー、この国で一番偉い人よ。使徒様の言葉はアリア様の言葉に等しいの。」


なななな 何言ってんの!

そんなの誰かに聞かれでもしたら大変よ。

不敬だ!って処罰の対象になっちゃうじゃないの!

しー!よ、しー!


「すごーい!」


キラキラした目で女の子が私を見ている。

ううー、何でこうなるの?

すると他にも女の子たちがやって来てキャッキャしながら「すごい、すごい」を連呼している。


あのー、これどうやって収拾つけるんです?

私知りませんよ?

女の子たちは私の手を握ったり、腰の辺りに引っ付いたりしてとっても嬉しそうにしている。

ねー、この子たち信じてますよ?

ほんとにどうするの?


「みんな、でもこれはここだけの秘密ですよ。」


人差し指を口に当てて「しー。」とサラさん。

続けて


「誰かに喋ったりしたら使徒様はもうここへは来なくなりますからね。そうしたら美味しいごはんも食べられなくなります、そんなのはみんなイヤでしょ?」


「「「イヤー!」」」


「じゃあ、秘密にしましょうね。約束よ。」


「「「分かったー!」」」



丸く収まった のかな?

そんな適当な説明で大丈夫なのかしら。

何かとっても不安なのだけれど。

私の不安をよそにサラさんは続ける。


「お姉ちゃんはこれから院長先生と大事なお話があるの。エラ、お姉ちゃんを院長先生のお部屋まで案内してあげて。」


エラと呼ばれた女の子は最初に私に話しかけて来た女の子だ。


「うん! お姉ちゃんこっち!」


とエラは私の手を握って元気よく歩き出す。

ま まぁいっか。

ニコニコ顔のエラちゃんの顔見てたら何も言えないよ。

「お姉ちゃんいい匂いがするー。」って言いながら院長先生の所へ案内してくれるエラちゃん。

子供って一生懸命で可愛らしいな。

院長先生の執務室までたどり着くとエラちゃんは大きな声で呼びかける。


「いんちょーせんせー!」


中に向かって元気よく声を掛ける。

その微笑ましい姿にほっこりする。

ドアがスッと開き中から院長先生が顔を覗かせてエラちゃんと私の顔を見てニコリと優しく笑う。


「あら、エラどうしたの?」


「サラせんせーに言われてお姉ちゃんつれてきた。」


「そう、ありがとう。もう戻っていいわよ。」


そう言って優しくエラちゃんの頭を撫でてから帰した。


「どうぞ、中へお入りになって。」


「失礼します。」一声かけて院長先生の執務室に入る。

院長先生が手ずからお茶の用意をして「どうぞ」と出してくれた。


「何か分からない事でも?」


「はい、実は昨日貴族の挨拶の仕方を聞くのを忘れてしまって。それで今日また伺ったのですが。」


貴族の屋敷に呼ばれているのにその挨拶の仕方を教わってないなんて私とした事がうっかりにも程がある。

院長先生ならご存じであろうから急遽こうしてやって来た訳だけれども。


「あら、ホント。昨日お教えするのを忘れていたわ。ゴメンなさいね。」


「私が悪かったわね」と院長先生が謝るけれども教えて貰う私の方がしっかりしてれば済んだ話だからね、どちらかと言うと悪いのは私の方だと思う。

何にしても私は覚えないといけないのだから謝罪合戦も程々にして早速教えを請うた。


「それでは、始めましょうか。」


院長先生が立ち上がりまずはお手本を見せてくれる。

動作的には元世界のカーテシーと非常に似ている、いえ、同じと言っても差し支えないと思える。

片足を斜め後ろの内側に引いて、もう片方の膝を軽く曲げる。

その時に背筋は伸ばしたまま挨拶する。

その際にロングスカートなどで裾が地面に着いて汚れるのを防ぐ意味合いでスカートを摘まんで持ち上げる場合もあるとか。

成る程あの動作にはそうゆう意味があったのね。

知らずにやったら恥をかく所だったわ。

やはり聞いて正解だったわね。


その後院長先生から挨拶の仕方をみっちりと教わる。

これ、結構大変ね。

綺麗な姿勢で挨拶するのって思った以上に脚が疲れる。


明日大丈夫かなぁ。

色々と心配事がありすぎだよ。





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