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第119話 仕立て屋へGO

院長先生のテーブルマナー講座が終わった後、メロディとの約束通りお肉を提供してお昼ごはんにする事に。

今日のお肉はストレージの中に入っているお肉で端っことか半端に残ったお肉を集めて使おうと思う。

半端に残ったお肉と言っても別に悪くなってるとか美味しくないとかそんなのではなくて、単純に部位的に少量になった部分を使い切る為に放出するだけ。


「院長先生、厨房をお借りしても?」


「え、ええ、構いませんが…まさか使徒様御自らお料理をなさるおつもりで?」


はい、そのつもりですが。

今までもそうだったし、普段からお料理してますし。


「オルカ料理してくれるの? やった!お肉だ!」


メロディがぴょんぴょんと可愛らしく飛びながら喜びを露わにしている。

リズも「オルカの作るごはんすっごく美味しいもんね」と喜んでいる。


「この間のあのちょっと有り得ないくらい美味しかったポトフとか、信じられないくらい美味しかったポテサラとか、もはや伝説級に美味し過ぎて奪い合いにまで発展したカリャーゲとか全部オルカが作って、子供たちに食べさせてあげてって持たせてくれた物ですしね。」


ドロシーの説明に


「そうそう、そうだったわね。あんなに美味しいお料理初めて食べたわ。私の人生で一番美味しかったかも。」


院長先生が思い出しては「ほう。」と溜息をついている。

そして、「今度も期待してもいいのかしら?」って可愛らしく聞いて来る。

可愛いお婆ちゃんって反則ですよ、院長先生。

まぁ、自分で作るって言った手前美味しくない物作る気は更々ありませんけどね。


「今日は余ったお肉で作るお野菜たっぷりの濃厚ポトフを作りたいと思います。」


はい、拍手ー!

パチパチパチ。


「「よっ! オルカ料理長、サイコー!」」


リズとメロディの合いの手が入る。

全く調子いいなぁもう。


特大の寸胴を使いたいから、まずは特大の魔道コンロを取り出す。

そこにラーメン屋で良く見るようなあの特大の寸胴をドン!ドン!と2つ乗せる。

寸胴には色々な魔獣の骨などを入れて出汁を取る。

これはドロシーにお願いした。

適当でいいのでグツグツと軽く煮立てたらOKだよって言っておいた。

臭み取りに葱などの香味野菜を入れる。

リズとメロディにはお野菜を切って貰って、ジャガイモは煮崩れ防止の為に下茹でをして貰う。

具材は余ってる半端に残ったお肉たちとゴロゴロお野菜、それに大振りなソーセージ。

数種類のお肉が入る事で色々な味わいを楽しめる。

お肉やソーセージから染み出る脂が最高の旨味をプラスする。

味付けは塩胡椒とハーブ、それとトマト。

このトマトの酸味がさっぱりして美味しいのよ。

子供たちにはそのままで、大人が食べる分には唐辛子を少し入れてピリ辛仕上げに。

勿論子供たちに大好評だった。


「色んなお肉の味わいが楽しいわ。色んなお肉の旨味が織りなすハーモニー。どっしりとした肉の旨味、野菜の優しい甘み、脂の旨味、それらが渾然一体となって口中に幸せが広がる。ややもすると重くなりがちな所をハーブの香りとトマトの酸味が後口をさっぱりとさせてくれるのね。 すーっごく美味しいなー。」


美味しい物を食べると饒舌になるリズは今日もすこぶる調子よく饒舌だった。

院長先生はじめサラさんパメラさんにも「とっても美味しい」って言って貰えた。

余った分は今夜また食べればいいと思う。


「いつも有難う御座います。」


院長先生に深々と頭を下げられた。

いえ、そんな。

どうか頭を上げて下さい。


「私が勝手にやってる事なのでどうかお気になさらず。」


目上の人にそんな風にされると恐縮しちゃうから。

それに今度のアルマさんとアイザックさんのお披露目の時もお節介するつもりですし。

なので本当に気にしないで下さい。


「所でさ、オルカは明日どうするの?」


明後日が夕食会でしょ?

テーブルマナーの心配はしなくても良くなったけど、それ以外の心配が無くなった訳ではないのよねぇ。


「んー、どうしようかなぁ。領主様との夕食会が明後日だから明日と明後日はその準備かなぁ。リズは?」


「メロディと一緒に依頼でも受けに行こうかなーって思ってる。」


「そうなんだ。じゃ、ドロシーは明日どうするの?」


私の問いに


「私はまだ引継ぎが完了してないから、それの続きかな。だから暫くは冒険者ギルドへは行かないかも。ねぇ、オルカ、明後日の夕方って何時にお迎えが来るんだっけ?その時間はオルカのとこ顔出そうかなとは思ってるけど。」


領主様の使者のお迎えの時間は、確か2と半の鐘だったわね。

だとすると明後日の午後は着替えやら何やらで忙しくなりそうだからドロシーに応援頼もうかしら。


「確か2と半の鐘って言ってたと思う。それとねドロシーにお願いがあるんだけどいい? 明後日、着替えとか色々準備しないといけなくてバタバタしそうだから一緒に居て手伝って欲しいの。ダメ?」


「いいよ。何時に宿に行けばいいの?」


私のお願いにあっさりと了承してくれるドロシー。

良かった、ありがとう。

助かった。

1人だと不安だったのよね。

私が安堵した表情を見て笑顔を見せるドロシー。

そうしたらリズとメロディも


「私たちも行くよ。ドロシーにだけイイ所を取られてなるもんですか。」


「またそんな事言ってー。」


とは言うものの、それがリズたちの本心じゃない事くらい私は知っている。

要は私の事が心配なだけなんだと思う。

私一人で領主様の所に行かないといけないのを私が変に緊張したりしないように心配してくれてるだけなの。


「じゃあリズたちにも頼もうかな、いい?」


「「勿論!」」


ほんと有難いね。

何やかんや言っていつも助けられてるな。



私はこれから院長先生が仰ってた富裕層が集まる地区にあるその仕立て屋にちょっと寄ってみようかなって思ってる。

まだお昼過ぎだし時間もあるし、聞きたい事もあるから行ってみる。

リズたちはどうするの?

一緒に行く?

って言うか一緒に来て。

高級な仕立て屋とか見てみるのもイイかもよ? 勉強になるよ?


「だから一緒に行こうよ。まだ時間も早いしドロシーも一緒に行こ。」


すると院長先生がドロシーを見て


「ドロシー、折角だから行って来なさい。楽しんで来るといいわ。」


と、優しく言う。


「え、でも引継ぎもあるし、子供たちの世話もあるし……」


「大丈夫よ。サラもパメラも居るから、こちらは心配しないで。」


「「そうよ、たまには息抜きも必要よ?」」


ドロシー愛されてるねー。

そう言ってくれてるんだからここは甘えておいたら?

甘えられるのも今のうちだけだよ?

独り立ちしたら全部自己責任だからね。


「じゃあお言葉に甘えて! 院長先生、サラさんパメラさん有り難うございます。」


ペコリとお辞儀をするドロシー。

決まりね。

じゃ、早速行くとしますか。

私は皆さんに暇の挨拶をしてリズたちと一緒に孤児院を後にした。


孤児院を出た所でちょうど流しの辻馬車が居るのが見えた。

ラッキー、探す手間が省けた。

手を挙げてブンブンと大きく振る。

あ、気付いてこっちに来てくれた。

辻馬車ゲット。


「オジさん、4人だけど乗れる? それから高級住宅街の仕立て屋のとこまでなんだけど行ける?」


「おう、任せな。なんて名前の仕立て屋だ?」


私は院長先生から教えて貰った仕立て屋さんの名前を伝えると辻馬車はゆっくりと動き出した。

私は4人分の料金を払う。

リズたちは遠慮してたけど、これは私の都合でみんなに付いて来て貰うんだから私が払うのが当たり前だよーって言って押し切った。

普段ならあまり来る事はない高級住宅街の中を馬車は進む。

やっぱり普通の冒険者には場違い感があって少しばかり気後れしちゃうね。

場違い感を生む原因は何と言っても街が綺麗、その一言に尽きる。

とにかく建っている建物全てが綺麗なの。

あと、道が綺麗。

平民街はわりとゴミが落ちてたりするけれどこちらはゴミなんか1個も落ちてない。

それと道行く人の恰好、それが全然違う。

みな上等な服を着ているのが一目見て分かる程に平民街の人々とは違いがある。

ちなみにこれを格差とも言う。

これが上流階級の人々なのか、そう思わせるには十分だわ。

リズたちが少し緊張しているようにも見える。

まぁそれも仕方ないよね、私も緊張してるし。

だってこんな所普段来ないんだもん、誰だって緊張くらいするよねーって話よ。

私たちの緊張をよそに辻馬車は目的の場所に到着する。


「嬢ちゃんたち、着いたぞ。あの店がそうだ。」


お店の少し手前で降ろされる。

これは意地悪されている訳でも何でもなくて、店の真ん前に馬車を横付けするのを許されているのは貴族だけだから。

私たちのように辻馬車に乗るような普通の平民は店の手前でってのが暗黙のルール。

格差社会。

こっちの世界もそうだったかと思ったけど、よくよく考えたらこっちの世界の方が元世界よりずっと酷い格差社会のような気がする。

まっ、それはどうでもいい。

お金は欲しいとは思うけど、別に上流階級と言われる人たちの仲間入りをしたい訳じゃない。

私は小金持ちの平民のままがいいのよ。


お店の前まで来た。

うっわー、めっちゃ綺麗な店構え。

もう扉からして全然違う。

こっちの世界だとガラスってお高いんだけど、そのガラスをふんだんに使っている。

扉にも窓にも、大き目のガラスが嵌っている。

これは入るのちょっと躊躇っちゃうレベルだね。

流石のメロディも気後れしてるのが手に取るように分かるよ。

入ろうか入るまいか迷う所ではあるけれど、今日ここに来た目的からすると入らないって訳にはいかないからね。

私は扉の窓から中をそっと覗いてみる。

店内は綺麗にされているように見える。

商品はあまり置いてない印象かな。

まぁ、物取りとか怖いから高額商品はあまり表には出さないんだろうね。

中を窺っていると中に居る綺麗な服を着た綺麗なお姉さんとバッチリと目が合った。


あ。


ヤバッ、目が合っちゃった。

どうしよう。

お姉さんが「あら?」って感じでこっちに歩いて来る。

わわわわわ。

こっち来ちゃうー。

どうしよう?ってあわあわしてる間にスッと扉が開いた。

怒られるぅって思って思わず首を竦めてしまう。

綺麗なお姉さんが出て来てニコリと笑って


「可愛らしいお嬢さんたちね、どうしたのかしら?」


優しい口調で話しかけてくれる。

それで私もみんなも怒られてる訳じゃないと分かってホッとする。


「ええっと、中見せて頂いてもいいですか?」


「ええ、いいわよ。ゆっくりして行ってね。」


そう言って扉を大きく開けて私たちを中へ招き入れてくれる。

私たちのような子供にも丁寧な対応をしてくれるのは流石は高級店ね。

とても好ましいわ。

無理だろうとは思ったけれど一応念の為くーちゃんたち従魔は中に入っても大丈夫か聞いてみるとやはりそれは駄目だった。

従魔は外で待たせなくてはならないとの事。

仕方ないね、ここにはここのルールがあるからね。


「くーちゃんとさくちゃんは中には入れないって言うからここで待っててね(変な人とか来たらすぐに念話で私を呼ぶのよ)。」


そう言うと少しだけ寂しそうに「キューン」とひと鳴きした。

私たちが中に入って行くのをくーちゃんたちはジッと見ていた。


「くーちゃんさんたちってホント賢いですよねー。あれは絶対人間の言葉が分かってるよね。」


くーちゃんたちを見たあとメロディが感心したようにそう言う。

そうよー私のくーちゃん・さくちゃんは賢いんだから!


「エッヘン。」


私は豊かな双丘をぶるんと震わせて胸を張る。


「なんでそこでオルカが威張るのよ、偉いのはくーちゃんたちじゃないの。」


「ドロシーそれは違うよ。くーちゃんたちが偉い、それは全て主である私が偉いからよ!」



「「「…………。」」」



なんで黙ってんのよ。

ねぇ、何か言ってよ。

視線が痛いからそのジト目はヤメてくれる?


「貴女たち仲がいいのね。」


その様子を見ていた店員のお姉さんがクスクスと笑いながら言う。


「色違いのお揃いのワンピースを着てるけれどみんな良く似合っててとっても可愛らしいわ。」


綺麗なお姉さんに褒められてちょっと照れてしまってモジモジしてしまう。

リズもメロディも「エヘヘー」って笑ってるし、ドロシーは顔を赤くして俯いてる。

照れてるドロシーも可愛いけれど、私以外の女には照れないで欲しいなってちょっと思っちゃった。

私って我儘? 独占欲強い?

でもいいの、ドロシーは誰にも渡さないから。


「所で貴女たち冒険者よね?」


「はい、そうですけど。」


なんだろう、何か粗相でもしてしまったのかと思ったらどうやら違うみたい。


「従魔を連れているから冒険者だろうとは思ったんだけどね、それにしてはお行儀がいいと言うかちゃんとしてたから、最初どこかの商家のご令嬢なのかと思ったの。」


ああ、そうゆう事ですか。

だってついさっきまで院長先生のテーブルマナー講座してたからかも。

やれ背筋を伸ばしなさいとか、急に動いたりせずに動くときはゆったりと動きなさいとか色々。

それのおかげもあるんだろうね。


「いいえ、みんな冒険者で私たちパーティーを組んでるんです。」


「そうなのね、その冒険者の女の子がどうして此処に? あ、いえ、変な意味でなくてね、私の興味本位だからもし差し支えなかった教えてくれないかしら?」


私たちがここに居やすいように、質問しにくいだろうと考えて水を向けてくれてるんだと分かった。

この人は優しい人なんだなぁと思った。

なので厚意は有難く受け取っておく事にする。


「実は……」


私は明後日の領主様との夕食会にお呼ばれしている事、たぶん着ていく事はないとは思うけど一応ドレスも見ておきたかった事、お化粧をしたいけど分からない事などをお姉さんに話した。

私が話してる間も「うんうん。」とか「そうねぇ。」とか相槌を打ちながら最後までちゃんと聞いてくれた。

うん、このお姉さんはとてもいい人だと思う。


「そうねぇ、ドレスは流石に一から作るのは無理ね。吊るしのドレスならあるにはあるけれど数も少ないし……」


お姉さんは私の胸を見てから


「その豊かなお胸では吊るしのドレスに収まりきらないわね。」


と仰いましたとさ。

ですよね、私もそんな気がしてたもの。

メロディやドロシーは「ああ。」って感じで納得顔してたけど、リズは私の胸を見たあと自身の胸を見て「むむ。」と口をへの字にしてるのが可笑しかった。


「でも、貴女なら普通のワンピースでもそれなりのお嬢様くらいには見えるし問題ないと思わよ。」


とも言ってくれたのでドレス問題は一旦横に置いておいて、明日またゆっくり考えようと思う。

そうなると最後の懸念点はお化粧をどうするかなのだけれど。


「あの、明後日の夕方、私の居る宿まで出張してお化粧とかして頂く事って出来ますか? 私お化粧とかした事ないし道具も持ってなくて。」


「ええ、出来るわよ。ただ料金はしっかり頂くけれどね。それでもいい? それでいいなら明後日伺うわよ。」


「ホントですか? ありがとう御座います!」


私は今いるカミラさんの宿の名前と場所を告げて予約を入れた。

良かったー。

お化粧なんて生まれてこの方一度もした事ないんだもん、もうどうしようかと思ってたのよね。

それがあっさりと解決してほんと良かった。

ついでと言っては何だけど、アクセサリーは付けた方がいいのか付けなくてもいいのか聞いてみた所、アクセサリーに関しては特に決まりはないとの事。

そうゆう貴金属を扱ってお店を紹介する事も出来るけど、たった1回の夕食会の為に新調するのは勿体ないって事でアクセサリー買わない事にした。

貴金属って安くない、豪商の奥方やご令嬢、貴族のご婦人方が買うような宝石なんてとても庶民には手の出せる値段ではないからとお薦めされなかった。

まっ、そうだよね。

それに私なら作っちゃえば済む話だからね。

欲しいなって思ったら作っちゃえばいいだけだから。

でもこれで心配してた事はほぼ全て解決かな。





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