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第114話 オルカの休日 ②

さてと、まずはテーブルと椅子を取り出して配置する。

それから簡易魔動コンロ、ティーポット、カップを出してお茶の準備っと。

リンゴを取り出し皮を剥き剥き。

私が要るのはリンゴの皮だけ。

残った身の方はさくちゃんへ進呈。


「さくちゃん、リンゴあげるよ。はい、どうぞ。」


さくちゃんは私からリンゴを受け取るとシュワシュワと軽い音を立てながら消化していく。

いつ見ても面白い光景だねぇ。

私はアップルティー。

リンゴの爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。

私はリンゴの食感が好きじゃない。

あの食感を思い出しただけでサブイボが出ちゃう程には好きではない。 

けれど味そのものや香りは嫌いではないのよね。

なので紅茶で楽しむとか加熱して柔らかくしたりするのはOK。

なのでこうして紅茶でリンゴの香りを楽しみとかは平気なの。

っと、話がそれちゃった。

お茶の準備も出来たし設計図を作るとしますか。


私の新たな武器を作るべくまずは設計図を作成する事にする。

と言っても私が作る訳じゃないけどね。

作ってくれるのは偉大な偉大な『創造魔法』さん。

ベレッタに関しては石礫弾仕様の時の設計図があるのでそれをベースにすればいいのでまだ気は楽。

それだけだけでも多少の短縮と魔力の節約にはなるだろう。

魔法はイメージが大事。

イメージが明確なら明確なほど魔法は威力だとか消費魔力量が効率化される。

けれども私は銃の構造だとか仕組みは分からないからそこは『創造魔法』さんに丸投げになる。

私が最も注意しなければならないのは魔力枯渇による体調不良だけだ。

今魔力は満タン、体調も悪くない。

これならかなり頑張れるかも。

『創造魔法』を発動させ取り合えずまずは1枚。

出来上がった設計図を見てみる。


うん、全然分かりません。

私は文系なの、理系はさっぱりなのよ。


なので次は『分析』さんにお願いする。

そしてまた『創造魔法』さんにお願い。

これを繰り返す事数回。

たぶん設計図出来てるんじゃないかなぁ。

私の素の能力は信用ならないけどスキルである『分析』さんや『創造魔法』さんは信用出来るからね。

今までもこれで上手く出来てたしね。


ベレッタ改2を作るのは一旦後回しにして、次はウィンチェスター改の設計図に取り掛かる。

私が想像するウィンチェスターライフルは機関部が真鍮製の「イエローボーイ」の愛称で知られるあの銃だ。

そう、私が欲しいのはあの形なのよね。

風魔法で弾を飛ばす関係上、機関部が真鍮って言うのは強度的にどうなのか?と言う疑問はある。

あるけれども、当たり前だけど私がライフルの機構だとかを知っている訳がないからいつものように『創造魔法』さんにお願いする。

そう言ったアバウトな事も『創造魔法』さんは上手く処理してくれる。

流石は魔法である。

まずは、1枚。

っと、ここでヤツが来た。


ぐにゃあ。

ぐるぐるぐる。

あ、気持ち悪い。

頭がガンガンしてきた。

へろへろへにょん。


これはアレだ、魔力切れだ。

私の魔力もかなり増えたからまだ大丈夫かと思ってたけど、やっぱり『創造魔法』って魔力消費が激しいみたい。

一旦休憩。

身体が重だるいのでそのままテーブルに突っ伏しても良かったんだけど、アレがやってみたかったのでくーちゃんに聞いてみる。


(ね、くーちゃん。魔力切れでちょっと身体だるいからくーちゃんに寄り掛かってもイイ?)


私のお願いを聞いたくーちゃんはバッと顔を上げてばっさばっさと尻尾を振る。


(勿論でございます! どうぞお好きなだけお使い下さいませ。)


うん、とても嬉しそうだ。

こうゆうとこが可愛いよね。

なので私は遠慮なくくーちゃんに寄り掛かる事にした。

くーちゃんが伏せの体勢になっている横にまずは布を引いて、その布の上に座ってゆっくりと身体をくーちゃんの方へ傾ける。

そしてくーちゃんの身体へそっと頭を乗せる。

あー、これこれこれ。

1回これをやってみたかったのよ。

前にも言ったと思うけど、私は前世では小型犬を飼っていた。

大型犬ならそれが出来るけど小型犬じゃそれが出来ない。

それがとても残念だった。

けれどこっちに来て漸くそれが叶う時が来た。

くーちゃんのモフモフに頭を乗せる、ふわふわ極上の枕だわ。


「あぁぁぁ、最っ高♪」


(お褒めに預かり恐悦至極に御座います。)


もー。相変わらずくーちゃんは固いなぁ。

もっとこう軽く「ありがとう」でイイと思うんだけどなー。

まぁ、そうゆう所がくーちゃんらしいんだけど。

さくちゃんを呼び寄せてギュッと抱きしめる。

頭と胸の所がモフモフぽよんとしてて幸せ至極だわ。

どんなに高級な枕よりも、どんなに高級なクッションよりも二人の方が上ね。

私の家族は最高よ。

それからちょっとの間目を閉じたり空を眺めたりして魔力の回復を待つ。

頭の痛いのが和らいできた。

胸焼けみたいに気持ち悪かったのも治まったので私は起き上がるとくーちゃんはちょっぴり寂しそうな顔をした。


(くーちゃんて過保護なお母さんみたい。)


って、言ったら


(あ あの、出来ればお姉さんぐらいでお願いしたいのですが。)


と控えめなお願いが返ってきた。

くーちゃんも冗談が言えるのね。

思わず笑ってしまった。


(さくちゃんは私の妹だね。)


ギュッと抱きしめながらそう言うとさくちゃんは私の腕の中でみよんみよんして喜びを表す。

ふふ、二人とも私の大切な家族だからね!

私はこの優しい時間が好き。

二人と過ごす時間が好き。


ね、お腹空かない?

ごはんにしよっか。

私は立ち上がって少し早いお昼にする事にする。

くーちゃんたちにはお肉をどっさり、私は宿が用意してくれたソーセージとザワークラウトがぎゅうぎゅうに詰められたパンを食べる。

そして食後のデザートとティータイム。

今日は久しぶりに『女神の贈り物』でも食べようかな。

あれすっごく美味しいのよね。

まな板と包丁、お皿を取り出しいそいそと準備する。

パパっと切り分けてひと口。


んーーーーーーーっ♪

っはぁぁぁ♪


やっぱ美味しい。

清廉な息吹が身体の隅々まで染み渡るようだわ。

身体の中から浄化されて細胞の1つ1つが生まれ変わるみたい。

身体の中から力がふつふつと湧いて来る感じがする。

なんか心なしか魔力の回復が早くなったような?

まさかそんな追加効果もあったりして?

だったらすごいけどねー。


枯渇した魔力もだいぶ回復したのでまた作業を始める。

最初に作製したウィンチェスター改の設計図を『分析』さんに読み込ませ再度『創造魔法』さんで書き直す。

これを数度繰り返すと完成だ。

たぶん出来てるはず。

ま、見ても分からないからそのまま信じるけどね。

今までもそれで大丈夫だったし。

それからベースになる弾を1個作製する。

時間的にも魔力的にも今日の作業はこれでお終い。

ここまで出来れば後は魔力に物言わせ作製するだけだから。


出しっ放しのテーブル等をちゃちゃっと片づけて帰り支度は終了っと。

くーちゃんたちに「帰るよ。」って声を掛けて帰路につく。

今は午後の2の鐘の少し前くらいだろうか、元世界なら夕方の4時前って辺り。

季節は元世界で言う所の7月中旬、こちらの世界だと夏の季節の中の月。

つまり外はまだ明るい。

でも暑さはそれ程でもないかなぁ。

油断して夜に薄着してたら少し肌寒い。

勿論慣れはあるだろうけど、現代日本の灼熱地獄の夏を知っている身としては少々寒く感じなくもない。

そんな気候だから快適っちゃ快適。

逆に冬は寒そうなのが気にはなるけど。

私は寒いのが苦手、兎に角ぬくぬくしていたい派なのよ。


街へ戻り冒険者ギルドへ入る。

蟲騒動も収束し今日は普段の賑わいを見せている。

特に昨日の今日で冒険者たちはこぞって出掛けていて、夕方の今時分は依頼から戻ってきた冒険者たちでギルド内はごった返している。

朝見た時にはメイジーさんが居たんだけどと思いながら受付の方を見ると、果たしてやっぱりメイジーさんは忙しそうにそこに居た。

あ、お疲れ様です。

なんかメッチャ忙しそうにしてるのに話しかけるのは気が引けるんだけど、一応聞いておかないといけないので声を掛ける。


「あの~、私宛てに何か言伝とかなかったですか? ギルマスは何か言ってました?」


恐る恐る様子を窺いながらメイジーさんに聞いてみる。

すると、


「あっ、オルカさん。ギルマスから伝言です。領主様の使者の方が明日見えるのでお昼の1の鐘の頃にギルドまで来て欲しいそうです。」


そうなんだ。

あれだ、褒賞金の話だ。

なんか期待していいみたいな事言ってたあれだね。

一体どんな話を持って来るのやら。

あそこまで勿体着けられると嬉しいような怖いような微妙な気分だわ。

取り合えず明日になってみてだね。

幾らくらい貰えるのかな?

もしかして小金貨1枚とか?って流石にそれはないか。

金一封って事ならせいぜい大銀貨1枚くらいが妥当な所だろうね。

「分かりました。」メイジーさんにそう言ってギルドを出て宿に戻った。



明けて翌朝。

くーちゃんたちを連れて冒険者ギルドへ顔を出す。

あ、ギルマスが居る。

と思ったらこっちにやって来て


「おー姫さん、今日の1の鐘だぞ。昨日領主様の使いが来てな、褒賞金持って来るってよ。良かったな!」


ちょっとギルマス声が大きいって!

皆に聞かれてるじゃないの。

ワー!って言う歓声と「おめでとう。」や「良かったなー。」って言うお祝いの声が聞こえる。

やっかみとか否定的な言葉が聞かれなかったのは良かった。


「オルカさん、良かったね。」

「オルちゃん流石!」


「ありがとうございます。」


ベルさんとカーリーさんがお祝いに来てくれた。

何やかんや言ってもこの人たちはいい人たちだよね。

アルマさんの姿が見えないのはまたアイザックさんに付き添ってるのかな?

アイザックさんが蟲に襲われてから今日で6日目だからもうそろそろ回復してる頃だと思うんだけど。


「オルカさん!」


「あ、ハイディさん。有難い事に褒賞金頂けるみたいですね。」


「そうなのよねぇ。困ったわ。」


左手を頬に当てて首を傾げながら思案顔をするハイディさん。

別に困る事なんて何もないのに。

ちょっと生真面目過ぎなんじゃないかしら?

ハイディさんは「私たちは何もしてないのに」って言うけどそうゆう事じゃないのよ。

あの日あの時あの場所に居た事が重要なのであって私たちが居たから無事にアシュリー様を助ける事が出来た。

誰か1人でも欠けてたら多分助けられなかったと思う。

それにハイディさんは怪我した馬丁の人をポーションで治してたじゃない。

だから何も遠慮する事はない、胸を張って堂々としてればいいと思うよ。

私はそう思うな。

そう言うと


「そう? そうかしら?」


「はい、私はそう思いますよ。」


「でも、一番活躍したのはオルカさん、鎌鼬!ヤツ等……」


「痛っ!!!!!!」


ドンナさんがまた余計な事言ってハイディさんに頭叩かれてる。

ドンナさんも懲りない人だねー。

って言うか、学習能力ないのかな?

とっても疑問だわ。


「オルカさん、昨日から重ね重ねドンナがゴメンね!ホント申し訳ない!」


ハイディさんがとっても申し訳なさそうに謝ってくる。

なんかドンナさんのお守りも大変だね。


「あー、いえ。ドンナさんはこうゆう方だって分かってしまえばどうって事ないですから。」


あははーって笑いながらそう答える。

ただ、やっぱりドンナさんとは合わないなーとは思うけど、それは言わないでおいた。


「今日の1の鐘だったよね? またその時にね。」


ハイディさんはそう言ってドンナさんの首根っこを引っ掴んでスタスタと行ってしまった。

きっとこれからドンナさんはこってりと絞られるんだろうな、そんな未来が見えた気がした。



ギルドを出た私たちは昨日と同じ場所へやって来た。

今日はこれから昨日の続きをする。

まずはより多く魔力を消費しそうなベレッタ改2から作る事にする。

材料は全てストレージに入ってるのでいちいち取り出す必要もない。

頭の中で「あーする」、「こーする」と考えるだけでOK。

とってもチートなストレージさん、おかげでかなり助かってる。

ベレッタ改の時は私専用の武器だったけど、今回のベレッタ改2は私たちパーティー全員分作る予定。

リズ、メロディ、ドロシーにそれぞれ1丁づつ、私が2丁拳銃、プラス予備に1丁で〆て6丁。

基本は全部同じ仕様で、違うのはグリップの所のウッド部分の色。

リズ、メロディ、ドロシー、私とそれぞれの髪の毛の色に合わせたウッドグリップにする。

それぞれのハンドグリップの所に各々の名前の刻印も入れる。

どう? カッコイイと思わない?

あと、魔石を組み込んでそれぞれの魔力を登録する事で、持ち主以外は使用出来ないようにする。

そしてそれを新しく作る私たちのパーティーの制式武器にするの。


新しいパーティーにお揃いのハンドガンと胸当てとローブ、麗しい少女4人がお揃いの出で立ちで並ぶ姿を想像するとグッと来る物があるよね。

一目で私たちのパーティーだって分かるし。

あ、そうそう、革製のホルスターも作らなきゃ。

ホルスターには色々なタイプがあるんだけど、冒険者は基本パンツ姿で腰にベルトを通すからヒップホルスターの方が使いやすいかな、ふんわりとしたスカートだったらサイホルスターってのも有りなんだけどね。

あ、サイホルスターってのは太ももに取り付けるタイプのヤツね。

色っぽいお姉さんが着けてるイメージって言うと分かりやすいかな、バッとスカートを捲って太ももに着けたホルスターから銃を抜く。

危険な香りのする悪女みたいでちょっとカッコイイよね。

っと、妄想が走り過ぎちゃった。

イケナイイケナイ。


さて、楽しい妄想タイムは一旦中止してベレッタ改2を作らないと。

設計図は出来てるんだから後は『創造魔法』さんにお任せと言う名の丸投げでいいのが楽ちんで助かるわ。

なんて思ってる間にベレッタ改2が6丁出来上がった。

流石『創造魔法』さん仕事が早い。

サクサク行くよ、次はウィンチェスター改だ。

これも材料はストレージにたっぷりあるから大丈夫。

けどこれは全員分は作らず自分の分だけにする予定。

予備も含めて2丁だけ作る。

別にみんなの分も作ってもいいんだけど、あげても持ち運びしにくいとか保管が大変とかあるしね。

ハンドガンなら腰に着けるだけだしそんなに負担にはならないけどライフルは流石に邪魔になるんじゃないかなと思って。

まぁ、欲しいって言われれば勿論作ってあげるよ。

それは吝かでないし。


さ、今日はあんまり時間ないからすぐに作らないと。

『創造魔法』さんにお仕事頑張って貰って、ちょっと銃身短めの機関部が真鍮色したウィンチェスター風ライフルが出来上がった。

ほほー、これは良い。

思わずオッサンっぽく唸ってしまう。

いや、中身はまごう事なきオッサンなんだけど。

横に弾を込める穴が開いている所とか雰囲気あるよねー。

じっくりと眺めてニマニマ。

ベレッタ改2を眺めてはニヤニヤ。

またウィンチェスター改を眺めてはため息をつく。

矯めつ眇めつベレッタ改2とウィンチェスター改を交互に見やる。

そしてニヤける。


気がつくとくーちゃんとさくちゃんが残念な子を見るかのような目でジーっと私を見ていた。


私は何食わぬ顔をして「さっ、時間だから街へ戻ろうか。」、そう言って立ち上がった。






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