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第113話 オルカの休日 ①

蟲事件のあったその日の夕方、私たち4人はギルドからの帰路にあった。

そこでパーティーを組む事の確認をして、4人で一緒に住む家の話までした。

一応意思の確認は出来たのでリズたちが不動産屋に行って探してくれる事になった。


「オルカは明日はどうすんの?」


「今日は色々あったから明日・明後日と休むつもり。別にそこまで疲れてる訳じゃないけど一応ね。ただギルマスには毎日ギルドに顔出すように言われてるから一応朝と夕方に顔は出すよ。リズたちはどうするの?」


「私たちはいつも通り朝ギルドに行って何かいい仕事ないか探して、夕方にまた戻って来るって感じかな。」

「私は孤児院で溜まってる仕事の片付け。それと孤児院出るんだったら仕事の引継ぎもしないといけないし。」


そっか、じゃあ明日と明後日はそれぞれ別々に仕事だね。

ここんとこ一緒だったからちょっと寂しいね。


「じゃ、またね。多分明日朝ギルドで会うと思うけど。」


リズたちと別れたあと、私とドロシーは孤児院へと向かう。

ドロシーを孤児院へと送り届けて、寸胴とかを回収する。

ついでに子供たち用に果物を置いてきた。

院長先生がしきりに恐縮してらしたけど、私が勝手にやってる事だからそんなの気にしなくてもいいのにって言ったけどダメだった。


「本日も神々しいお姿を拝見出来ました事恐悦に存じます。」


とか言いながらお祈りされた。

ちょっと待って。

私本当にそんなんじゃないですから!


「院長先生、あの、どうぞお顔を上げて下さい。」


「わたくしのような者にまでお気遣い下さる使徒様はホントにお優しい限りで御座います。」


とととと とんでもございません!

こちらこそ恐縮です。

えー、あの。

ひーっ、ドロシー助けてよー。


「院長先生、オルカも困ってますからそれくらいにしてあげて下さい。」


ドロシーのその言葉でやっと普通にしてくれた。

助かった。

その後少しだけサラさんやパメラも交えて世間話をしてお暇した。

前回と同じく律義にもドロシーが私を見送りに孤児院の出入り口まで付いてきた。


「もー、見送りなんていいのに。」


「いいからいいから。友達なんだし見送りくらい普通だよ。」


「そっか、そだね。 うん、バイバイ。」


「そだよ、バイバイ。またね。」


またね。

また明日ね。

この異世界に来てそんな台詞を言い合える友達が出来るなんてね。

何だか幸せな気分。

こっちの世界に来た直後からは想像も出来ないよ。

私は本当に人との出会いに恵まれてる。

ここは素直に女神様に感謝だね。

ありがとう御座います。


(どう致しまして。)


あれ? 何か聞こえたような気がしたけど?

きっと気のせいだよね。

うん、そうに違いない。

けど何か知らないけれどヤル気だけは出てきたよー!


「さっ、くーちゃん・さくちゃん宿に戻ろうか。」


私たちは意気揚々と宿屋まで歩いてゆく。

長く伸びる影。

最初は私だけ1本だけの影だった。

そこに途中からくーちゃんの影が横に並ぶようになり、それからすぐにくーちゃんの上にさくちゃんの小さな影が乗っかるようになる。

そしてこれからは後3本の影が追加されるだろう。

それが私たち。

新しく作る予定のパーティーのメンバーたちだ。

1つ何かが、流れが変わったように感じた。




「ただいま戻りました。 先に厩舎の方に行って来ますね。」


カミラさんにそう告げて私はくーちゃんたちを厩舎の方へ連れていく。

さてと、まずは綺麗にしないとね。


(くーちゃん・さくちゃん今日はご苦労様、それといつもありがとう。今から綺麗にするからね。)


(勿体ないお言葉。)

(こちらこそ有難うなのです。)


(どう致しまして。)


思わずニッコリ。

この子たち本当に可愛い。

魔法でサッと綺麗にしたらごはんだからね。

今日は疲れたでしょ?

だから沢山食べてね。

さて晩ごはん何がいいかしらね。

くーちゃんはキングボアが好きだから、キングボア多めは確定だね。

さくちゃんは……

あれ? そう言えばさくちゃんの好きな物って何だったっけ?

私さくちゃんの好み知らない?

ガーン!

それは拙い。

ちゃんと知らなきゃ。


(ねぇ、さくちゃんの好きな食べ物ってなに?)


(んー、消化出来れば何でもいいです!食べる物がなければその辺の草とかでも全然大丈夫です。)


(いや、流石に草とか食べさせないよ。)


(特に好き嫌いは無いんだね? でも食べたい物とかあったら言ってね。)


「基本的には皆一緒のごはんの方がいいよね。あ、食材の骨の処分とかは頼むかもしれないけどそれは大丈夫?」


(勿論です!ゴミ処理はお任せ下さい。)


うーん、ゴミ処理って言い方はあんま好きくないんだけど実際そうだしねぇ。


(ん、分かった。それじゃあその時はお願いね。)


「ごはんここに置いておくよ。食器は明日の朝回収するから食べないでね。じゃね。」





明けて翌朝。


「ん。 んはーっ!」


はー、よく寝た。

昨日は晩ごはん食べてお風呂入ったらもう眠くて眠くてそのまますぐにバタンキューだった。

自分ではそこまで疲れてないと思ってたけど思ってた以上に精神的に削られてたのかもね。

今日と明日お休みにして正解だったかも。

さ、服着替えて朝ごはん食べに行かなきゃ。

今日は仕事じゃないから普段着のワンピースでいいかな?って一瞬思ったんだけど、いや待て待て、ギルドに行くし最悪緊急の仕事とか頼まれる可能性だって無きにしも非ずだからいつもの仕事着(冒険者の恰好)を着て行く事にした。

パパっと着替えて下に降りて食堂へ向かう。


「おはようございます。」


「おはー。」

「おはよう。」


いつもの面々といつもの朝の挨拶。

もうすっかり皆と顔見知りだ。

ここに泊ってるお姉さんたちは私に対して嫌な事を言ったりしたりしないし、皆好意的に接してくれるのですごく助かっている。

ただやけに視線が熱くて、ちょとだけエッチなだけでね。


いつも通り夕飯の残りのスープを温め直したのと、薄茶色の少し硬めのパン、それとソーセージ。

今日は目玉焼きも付いてる。

私は付け合わせにザワークラウトみたいな酸っぱい千切り野菜をたっぶりと取る。

この酸っぱい爽やかさが朝の目覚めにいいのよ。

スキッとシャキッとするの。

材料はキャベツと塩だけで作れるはずだから私も作り置きしとこうかな?

作り過ぎちゃってもストレージに入れておけばそのまま保存出来るし。


「ごちそうさま。いつも美味しい食事をありがとう。」


立ち上がって食堂を出る時に給仕の女の子にそう声を掛ける。

たったそれだけの事なんだけど給仕の女の子はパアッと明るい笑顔になる。

そうよね、挨拶は大事だものね。

挨拶をすればお互い気持ちいいし気分も良くなるし。

そうゆうのをキチンとしないのはダメだと思うから私は出来るだけちゃんとするように心掛けている。

厩舎に行ってくーちゃんたちに朝ごはんをあげてから冒険者ギルドへ向かう。


ギルドの扉を開けて中に入ると一斉に皆の視線が私に向けられる。

最初と違い今はかなり好意的だ。

同じ冒険者仲間として受け入れて貰えた感がある。


「おはよう!」


皆に順番に挨拶していく。

受付にメイジーさんの姿が見えたのでメイジーさんの所まで行って何か私に言伝とかないか聞いてみたけど特に何もなかったみたい。

そっか。

昨日の今日だからね、そんなすぐに何かある訳ないか。

指定依頼とか緊急の案件とかも特になさそうだったので私は行くね。


私には今日・明日とやりたい事がある。

それは私の武器、「ベレッタ92オルカ改」をアップグレードしたいの。

昨日の戦闘で分かった事だけど、蟲のように外殻の硬い魔物には今の石礫の弾じゃ相手にダメージが通らない。

他に恐らくだけど高ランクの魔物にも効かない可能性がある。

だからベレッタ自動魔動銃を改造して高性能化したい。

その為の材料は既に入手済み。

あとは新たに作るだけ。

なので一旦街を出て南の草原辺りに場所を移そうと思う。

あまり人目のない広々とした所でゆっくりと作りたいからね。

と、言う訳で南門へ向かおうとギルドを出た所でリズたちとバッタリ会った。

ラッキー。

今日はリズたちの顔見れないかと思ってたから顔見れてラッキーだよ。


「おはよう!」


「「おはよう。」」

「って、何でこんな朝から居るの?今日休みなんじゃなかったっけ?しかも仕事着まで着て。」


「だってほら、一応朝夕にギルドに顔出すって言ってたじゃない、だからよ。」


「だからって早くない?別にいつもの時間じゃなくても良かったんじゃ?」


「それはそうだけど。」


「それに、なんで仕事着? ギルドに顔出すだけなら普段着でも良かったと思うけど?」


「もしかしたら緊急の仕事とか入るかも知れないと思って……。」


「「はぁぁ……」」


私の言い分に大息をつく二人。


「真面目なのはオルカの美点だけど、昨日の今日で疲れてるだろうし休める時にはキチンと休まないとダメだよ?分かってる?」


「分かってる……。」


ズバッと指摘されて言葉に詰まる私。

だってぇ。


「でも、ちゃんと休むつもりでは居るんだよ。」


「「怪しいなぁ、もう。」」


いや、本当に休むつもりだったんだってば。

ただ、緊急出動があるかも?って思ったから仕事着着ただけで。

って、それがいけなかったのか。

リズは私の為を思って言ってくれたんだ。

これは有難い事なんだよね?

ここは素直に謝ろう。


「ゴメン、それから有難う。」


「「んふー、分かってくれたならそれでいいの。でもホント無理しちゃダメだからね!」」


はい、肝に銘じます。


「リズたちはどうするの? 何か依頼でも受けるの?」


「ううん、私たちは不動産屋行って物件探し依頼してくる。そんで幾つか候補出して貰う。」


仕事が早いねー、流石リズだ。

こうゆう行動力のある所は見習わなきゃ。


「いい物件見つかるとイイね。」


「だね。」


「「「じゃ、また夕方ね!」」」


リズたちと別れて私は南門から出て草原を目指した。

くーちゃんに何処か適当な場所を探して貰う。

と、思ったら既に見つけてあるらしくすぐに案内してくれた。


(私のくーちゃん超優秀。)


(ありがたき幸せ。)

(葛の葉姉さますごいのです。)


ちょっと小高くなっていて平らで見晴らしが良くて木陰もある。

うん、いい場所ね。


(くーちゃん有難う。所でくーちゃん今日は狩りには行かないの?)


(はい、昨日十分に暴れましたので今は満足出来ております。)


(そっか、満足出来たんだ。それは良かった。)


(ですので、今日は主様の側でお守り致します。)


そう言ってくーちゃんはペタンと伏せの恰好になってゆったりと寛ぎだした。

くーちゃんもたまにはゆっくりするとイイよ。


「さてと、それじゃあ私は始めるとしますか!」


私が今から作るのは「ベレッタ92オルカ改」の改良版、の設計図。

いくら『創造魔法』が優れたぶっ壊れ魔法でも何もない所から作るのは大変なの。

材料があるだけじゃダメ。

創る本人が何を創りたいのか、どうゆう構造なのかをよぉーく理解してないといけない。

足りない物があっても『創造魔法』さんが補ってくれるけどその為にはゴッソリと魔力を持っていかれる。

だからまずは設計図を作るってわけ。

ただし私も銃の構造なんて知ってる訳ないからやっぱり『創造魔法』の力に頼っちゃうんだけど、それでも先に設計図を作っておけば実際にいざ作ろうってなった時は思いの外少ない魔力で作れるから。


基本的に今までの銃と同じだけど、違いは薬莢仕様にする事、薬莢は真鍮製。

それに伴い薬莢を排出出来るようにスライドがちゃんと動くようにする。

弾は今までは石礫弾を使用してたけどそれはヤメて、鉛弾に変更してさらにバレットアントの外殻をコーティングした弾、前世で言う所のフルメタルジャケットのような弾にする。

使用頻度は少ないかもしれないけどホローポイント弾も作っておく。

今回は薬莢仕様を採用するのでその薬莢に風の魔法陣が刻まれていて薬莢に込められた魔力を使って弾を射出する。

薬莢に刻まれた魔法陣には欠けが出来ていて引き金を引くとファイヤリングピンがせり出して欠けが埋まって魔方陣が完成し風魔法が発動する仕組みにする。

弾を射出する時の風魔法のパワーの一部はファイヤリングピンと引き金とスライドを元に戻す力に使われ、元に戻る事で次弾がチャンバーに装填される。

弾倉はダブルカラムマガジン仕様の15+1発。

これで前世の銃にかなり近づいたのではないだろうか。


あともう1つの懸念事項。

ハンドガンは近距離の対人用途にはいいけれど少し距離がある場合には適しているとは言えない。

なので距離が稼げてもう少しストッピングパワーがある銃があればいいなと。

これは完全に私の好みなんだけどレバーアクションのウィンチェスターってとってもいいと思うの。

ウィンチェスターM66に雰囲気が似た魔力銃があったらカッコいいと思わない?

思うよね? ね?

なので、作りましょう!

仕様はレバー操作で装填→引き金を引いて発射。

装填数は10発、しかもちゃんと横から弾を入れる仕様。

弾はベレッタと同じ物を使うけど薬莢に込める魔力量はこちらの方が多い。

これはより遠くより速く撃ち出す必要があるから。

あと銃身は実際の物より少し短くするつもり。

これは今の私が女の子で体格が小さいから取り回しを重視してのもの。

決してスピンコックがしたい訳じゃないから。

クルンて回して次弾を装填する、カッコいいよねー。

バイクを運転しながら後ろを振り向いてクルンてしてバン!。

痺れるわ~。

って、コホン。

ちょっと浮かれ過ぎね、失礼。


そゆ事なので早速設計図を作るとしましょうか。







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