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第103話 あーっ!もう! ムラムラするーっ!

リズ&メロディ VS エミリー&ドンナ勃発。

うむ、もう収集がつかぬ。

成す術なし!


私とハイディさんとドロシーはただそれを眺めるだけ。

半ば、いや、ほぼ呆れた状態である。

やれやれな気分だ。

久しぶりに私の男の部分が顔を覗かせる。

こうゆう時は暫く放置に限る。


「なんだかゴメンねー。あの子たちさー、前々から一回オルカさんと仕事してみたいって言ってたんだよねー。 それが今日いきなり叶ったもんだから舞い上がっちゃって……。」


申し訳無さそうにハイディさんが謝ってくる。

「いや、実は私もね、一回一緒に仕事してみたかったんだよ」って照れながら言ってる姿が可愛らしい。

うん、この人は常識人枠だ。

良かった。

3人とも枠外だとホントに収集つかなくなるからね。


「なんだか楽しそうな方たちですよねー。」


「そうだね。あの子たちも悪い子じゃないんだけどさ、けどさー、ちょーっと癖が強くてねー。結構大変なんだよ。」


そう言って苦笑いするハイディさん。


「苦労されてるんですね。」


確かに、事あるごとにあの調子でやられたら大変だろう。

気苦労はお察しって所か。


「まぁね、もう慣れたけど。」


そう言って笑うハイディさんがやけに男前に見えた。


「ま、兎に角。明日は宜しくお願いね。あの二人にもよーく言い含めておくから。」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。」


「「それじゃ、また明日の朝!」」


「ほら、エミリー、ドンナ。帰るよ!」


「リズ、メロディもう帰ろう? 私防具屋行きたいから付き合ってよ。」


お互いがお互いのメンバーに声をかける。

もうホントこれ以上は流石に周りに迷惑だよ。

さっ、行くよ。

リズ、メロディ、いつまでも威嚇してないで!


「オルカさぁん、また明日ねー!」

「リズたちに飽きたらウチに来るといい。」


エミリーさんとドンナさんがにこやかに笑いながら手を振ってる。

そんな煽んないでよ。

これ以上やったら、


「ウガーッ!!」

「がるるるるる!!」


ほら。

はあぁぁぁ、疲れる。

その後ハイディさんは二人の腕をむんずと掴んで引っ張って行った。

あれは、ハイディさんも大変だろうなぁ。




怒り冷めやらぬといった風情の二人。

そりゃあもう見たらすぐ分かる、「うえー、今メッチャ不機嫌だ」って顔してる。


「もーっ! 何なのよアレ!」

「ホントあったま来ちゃう!」


プンプン。

ぷんすか。

激おこ。

怒り心頭とは正にこの事か。


「私たちのオルカに粉かけるなんて100年早いのよ!」

「そうだそうだー! オルカは誰にも渡さないぞー!」


二人ともイライラしてるなー。

リズもメロディもヒートアップし過ぎ。

もうそのくらいにしたら?

周りの目もあるから。 ね。


「あーっ!もう! ムラムラするーっ!」


はぁ? 何言ってんの!


「「ムラムラするなーっ!」」


思わず私とドロシーが同時にツッコむ。

なんでそこで「ムラムラ」なのよ。


「イライラしなさいよ!」


「「さっきからずっとイライラしてるってばっ!!」」


今度はリズとメロディに返された。

意外と冷静じゃないの。

だったらもういい加減落ち着きなよ。


「防具屋行くから付き合って。ほーら、行くよ。」


ギルド前で辻馬車捕まえて防具屋へ向かう。


「オジさん、これお金ね。」


「毎度ありぃ。」


私たち4人は馬車に乗り、くーちゃん達は歩きで馬車の後をついて来てる。


「ね、オルカ。明日は仕事だから仕方ないけど、アイツ等に誑かされたり誘われたりしてもホイホイとついて行っちゃダメだからね!」


リズったらまーだ言ってるよ。

正式なパーティ組むんならやっぱリズたちだなって思ってるけど、そろそろ宣言した方がいいのかな?

私は「はいはい」って言いながらちょっと思案していたら考えを中断するようにオジさんが声を掛けて来る。


「着いたぜ。」


辻馬車が防具屋の前に停車する。


「オジさん、ありがとう。」


私たちは辻馬車を降りて防具屋の中へ入る。

あ、居た居た。

あの女性の店員さんだ。

私は以前来た時に注文した店員さんに近づいていく。


「注文しておいた防具の受け取りに来たんですけど。」


声を掛けるとこちらを見て「ああ」って顔をして


「はい、出来てますよー。取って来ますので少々お待ちください。」


キビキビとした動きで店員さんが奥へと引っ込んでいく。

メッチャ楽しみだなー。

一応女の子らしい可愛らしいデザインでお願いしたんだけど、どんなのに仕上がってるんだろう。

ワクワクしながら待っていると店員さんが出来たてほやほやの真新しい防具を両手で大事そうに持って来た。


「どうぞ、お待たせしました。」


わ わ。


「うわー♪ かっわいい~♪」


思わず声が出る。

デザインはビスチェタイプの皮鎧。

厚手の布製の胴部分、胸当て部分が革製のカップ型で胸を覆うような形になっている。

胴部分は黒く染められていて赤いステッチで縁取られていて、赤と黒のコントラストが女性らしさを演出してる。

胸当ての左側にだけ金属製のプレートが取り付けられていて、胸の形に添うように丸く柔らかく膨らませた金属製のプレートには繊細なデザインの百合の花の彫金が施されている。

1人で脱ぎ着出来るように前留めタイプ、胴部分と胸当て部分は脱着式になっている。

可愛いらしさと女性らしさ、繊細であり優雅、防具としての能力は低いけど私が求めているのはそこじゃないからね。

これイイね。

思ってたよりもずっとイイよ。

うむ、これなら満足じゃ。


「いいですね。」


私の言葉に店員さんが「ホッ」と息を吐いて笑顔を見せる。


「「「可愛いーっ!」」」


「ええー、何これ。メッチャ可愛いんだけど!」

「これ私も欲しいなぁ。」

「ちょっとメイド風味?」


元世界の記憶を持つドロシーだけが私の個人的趣味を正確に理解して的確についてくる。

いや、そんなジト目で見ないで。

ほ ほら、こっちの防具って可愛いくないじゃない?

だからよ、だから。

やっぱ女の子なんだし可愛いの欲しいって思うじゃない。


「ね、ね、これいくら? 私も注文したら作って貰えるの?」

「リズ、ずるーい。だったら私も作る。」


「はい、代金さえ頂ければお作り致しますよ。」


ニコリと笑う店員さん。

そりゃそうか、私が注文した防具でベースは出来てるんだから後はそろぞれ各人の体形に合わせて各部を微調整するだけでいいもんね。

それを聞いてリズとメロディが顔を見合わせて二人してコクンと頷いて


「「お願いします!」」


あー、だったらドロシーは?

孤児院暮らしのドロシーにしたら、みんなが力を合わせて毎日一生懸命生きているのに自分だけ新品の防具買うなんて絶対しないよね。

駆け出し冒険者であるドロシーが新しい防具なんて贅沢品だ。

今だって先輩冒険者の女性から貰ったボロボロで擦り切れたサイズの合ってない防具を着けてるくらいだし。

私はたまたまくーちゃん達のおかげでお金持っててさ、ドロシーの分を出してあげる事は簡単だけど、きっとドロシーはそれを良しとしないだろうし受け取らないだろう。

ならどうする?

それなら仕方ないなって受け取って貰えるような妙案はないものか……。


うーむ。


…………。



「ねぇ、これ私たち4人でお揃いにしない? 私たちだけのお揃い。」


リズがそう言うと。


「それイイね! うん、そうしよう!」


メロディも乗り気になってる。

けど……


「私はちょっと……先立つ物が……。」


ドロシーは言いづらそうに消え入りそうな声で言った。

だよねぇ、はぁ。

リズもドロシーの言葉が気になったのかちょっと考えた末に自分の考えを言った。


「じゃあ、こうしない?」


どう言う事かと言うと、この際だからこの4人で正式にパーティを組む。

で、この防具をパーティの制服とする。

リーダーは私で、制服は一旦リーダーがパーティメンバー分を負担する。

これならドロシーに負担は掛からない。

パーティとして活動して得られたお金から一定割合でパーティ資金を徴収して残りを4人で均等割りする。

私が一旦立て替えた制服のお金はパーティ資金が溜まったら私に返金する。

これならドロシーも気兼ねなくパーティに加入出来るもんね。

リズってばやるじゃない。

意外と賢い?

それから、武器は各人が用意、やはり普段使ってる物の方がいいからね。


「あと、ローブか何かもお揃いであるともっといいかなー。」


確かに防具だけじゃあれだからローブもあった方がいいかもね。

けど気になる事が……


「なんで私がリーダーになる訳? 普通に考えたらリズなんじゃないの?」


だってそうでしょ?

私は冒険者になったばかりのFランクだよ?

それが新しく作るパーティのリーダーって可笑しくない?


「いやいや、そんな事ないよ。お金出した人が親分だよ。」


メロディが訳分かんない事言ってる。

どんな理屈なのよ。

冒険者として既に一定の経験積んでるリズが適任だと思うんだけどなぁ。

やっぱダメ?

どうしても私?


「リーダーになったからって別にオルカは偉ぶったりしないよね? だったらイイんじゃない? 私たち仲間なんだし。」


ええ、本当に?

いいのかなー。


「いいのいいの。決まり! 新しいパーティのリーダーはオルカに決定しましたー!」


「「ワー。パチパチパチ。」」


リズとメロディがそれはもうイイ笑顔で手を叩いている。

ドロシーが微妙な顔してこっち見てるけど、私にどうしろと?

私には苦笑いする事しか出来ないよ。

ドロシーが小声で私に聞いて来る。


「ねぇ、本当にいいの?」


仕方ないんじゃない? 何か決まっちゃったみたいだし。

ま、私の意思は関係なかったけど。

パーティリーダーもお金の事もドロシーは心配しないで!


「なるようになるさ!」


「ケセラセラね。」


「そ。」


「「ケセラセラ。」」


そう言って笑い合う私とドロシー。

こうゆうとこが元同郷のいいとこだよね。


「はいはい、イチャイチャはそれくらいにして、新しいリーダーさんパーティー名はどうすんの?」


え?

パーティー名?


「私が決めるの?」


「当然! リーダーだもん。」


メロディったら何言ってるの。

みんなで決めるんじゃなくて私が決めるの?


「いいんじゃない?」


リズも何言ってんのよ。


「名前決まったら教えて! ギルドに申請するから。」


ええー。

それマジで言ってんの?

責任重大じゃないの。


「名前なんてよそのパーティと区別出来ればいいのよ。 ま、でも、出来たら可愛いくて女性らしくて華やかな名前だったら最高だけどね。期待してるよリーダー!」


ちょっ! プレッシャー掛け過ぎ!

そんなにハードル上げないでよーっ!

ちょーっと、みんなも笑ってないで一緒に考えてよー!

私が焦ってわたわたしてると店員さんがおずおずと声を掛けて来た。


「あのぉ、ローブはどういったのになさいますか?」


ああ、ホントだね。 ローブも決めなきゃ。

何色がいいかな?

頭の中でイメージしてみる。

防具に合わせて黒?

それとも白?

黒だと防具と同じように赤いステッチを入れたいよねー。

え? 黒はダメ? なんで?


「黒は何か見た目が悪い! 如何にも悪人っぽい印象になる!」


なるほど、メロディの言う通り。

では白は?

黒とは真逆の白なら清潔感もあるしスッキリと美しいよ?

え? 白もダメ?


「白は汚れが目立つからダメだよー。それに一回汚れちゃうと中々落ちないしねー。」


さいですか。

今度はリズさんからダメだしを食らう。

うぬぬぬ。

そ それじゃあ青。 青ならどう?

それだったらいいんじゃない?


「んー、まーいっか。」


オイオイ、そんな適当でいいのか?


「じゃ、私たちは防具の採寸してくるからローブのデザインとか決めといてねー。」


そう言って3人はお店の奥へと消えて行った。

ウキウキとした顔で歩いて行ったリズとメロディとは対照的にドロシーは申し訳なさそうにこっちを見てたよ。

リズたちを見送って店員さんとローブの詳細を詰める。

私の希望はフード付きのローブで、如何にも魔法使いっぽいデザインのが好みだなー。

ええ、そうですとも。

異世界転生物では定番のあのスタイルのローブですねぇ。

あれにはチビッと憧れてたのよ。

首元で止める留金は丸い楕円形の金属製で、胸当ての金属プレートと同じ意匠の百合の花の彫金を入れて貰う事にした。

色は濃い目の覚めるような青色にする。

所謂瑠璃紺って言われている色。

ラピスラズリの色って言った方が分かりやすいかな。

それに防具に合わせて赤いステッチも入れる。

これを4人分オーダーする。

3人分の防具と4人分のローブの代金を追加で支払う。

パートナーが席を外してる間に支払いは済ませる。

これがスマートなやり方。

出来る女は違うのよ。

受取は4人分のが揃ってから一括で受け取りにした。

私だけ新しい防具着けてても仕方ないしね。


「採寸終わったよー。」


「お疲れさま、じゃ帰ろっか。」


「受け取りは7日後になります。」


「分かりました。」


私たちが店を出ると店員さん総出でお見送りしてくれて、


「有り難うございました。」


深々と頭を下げられる。

周りの人たちに注目されてちょっと恥ずかしい。


あ、そうそう。

何か今日は色々あって忘れる所だった、ドロシーに石鹸とヘアブラシあげるんだった。


「はい、これ。ドロシーの分。」


「え、貰っちゃっていいの?」


いいのいいの。

リズたちにはもうあげてるから。

だから遠慮は無用だよ。


「あー、その石鹸イイ匂いするんだよねー。」

「そうそう、これ使うとお貴族様になったような気分になれるから好きだなー。」


「そうなんだ。 これって……ブラシよね?」


そう、前世でルカが使ってたのをヒントに作ってみたの。

自分で言うのも何だけど、わりとイイ出来だと思うよ。


「それ!それが優れものでさあ、髪の毛濡れてても引っ掛からずに髪梳けるんだよ。」

「今まで手櫛だったんだけど、これ使うようになったらこれ無しとか考えられないよー。」


「ん、ありがと。」


ドロシーはヘアブラシをしげしげと見つめてからニッコリと笑った。

受け取って貰えて良かった。

これでミッション1つ完遂だわ。

「知識チートか」って無言の言葉が聞こえたような気がしたけどきっと気のせいだと思いたい。








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