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第100話 かしまし唐揚げ祭り開催だよ

テーブルの上には超こんもりと山盛りに盛られた唐揚げの小山が鎮座している。

中身はコカトリスとグリーンバイパーそれぞれに2種類の味。

熱々の4つの小山になった唐揚げがものすごい熱を発してる。

熱気がすごい!

いきなり齧り付いたら口の中火傷は必至だ。

だから本当の唐揚げの事を知らないリズたち二人に注意を促そうと口を開く。


「熱いから気を付けて! いきなりガブッといったら口の中火傷してベロベロになっちゃうよ。」


って私が言うか言わないかの内に


「「アチアチアチ!! 口の中火傷したーっ!!」」


熱々の唐揚げに齧り付いたリズたちが大声をあげる。

唖然である。


「ほら、見たことか。」


「「何で教えてくんないのよー。」」


「いや、教えるも何も私が言う前にもう食べちゃってたじゃないの。」


「「だってぇ。」」


「だってじゃありません。 人の話を最後までちゃんと聞かないからそうゆう事になるんだよ。」


「ぶー。 オルカのイケズ。」

「目の前にお肉があったらそりゃ食べたくもなるよー。」


まるで子供のような抗議をする二人。

思わず苦笑いしちゃったよ。


「ほら、ドロシーを見てみなよ。ちゃんとしてるよ?」


ドロシーは「ふーふー」と冷ましながら前歯でちょっとづつ齧るように食べている。

はふはふはふ。

貴女は小動物か何かですか?

何ですか、その可愛い食べ方は。


「んはーっ。 おーいしい!」


二人はじっとりとした目でドロシーを見て、眉尻を下げてちょっとだけ情けない顔をしている。

口の中がヒリヒリと痛むのか頻りに冷たいお茶を飲む二人。

ホントにもう、世話が焼けるなぁ。

まぁ、リズとメロディにお世話焼くのは嫌いじゃないから別にいいけどね。


「しょーがないなぁ。 はい、治癒。(ヒール)

「誰にでも治癒魔法掛ける訳じゃないんだよ、リズとメロディだから特別に掛けるんだからね!」


ちょっぴりツンデレ風味を醸し出しつつ二人に治癒魔法(ヒール)を掛けて口の中の火傷を治してあげた。

ちょっと照れぎみに満面の笑みを浮かべる二人。

全く、成人してんだからちゃんとしてよねー、ホント。


「ちょっと、二人とも何笑ってんの。」


「いや~、いつも済まないねぇ。」

「ホントホント。オルカ様様じゃ。」


「なんでお婆ちゃんになってんのよ。 ねー、ホントに分かってる? しっかりしてよね、もう。」


「ぷ。 オルカお姉さん。」


あはは、ドロシーは私の元世界での年齢知ってるもんね。

実は精神年齢は私が一番上だからねー。


「所でさ、オルカってヒール使えるんだ、知らなかった。 それってすっごくない?」


「あれ? ドロシー知らなかったっけ?」

「ほら、アルマさんの……ごにょごにょ。」


アルマさんの彼氏さんであるアイザックさんが蟲に襲われて怪我したのは聞いて知ってる筈だけど、ギルマスによる箝口令が出てたもんだから私が治癒魔法で治したってのまでは知らなかったみたいだね。


「ドロシーにだけ内緒でこっそり教えるけど、誰にも言っちゃダメだよ? 絶対だからね! 」

「こら、メロディ。 それは箝口令出てるでしょ。オルカに迷惑掛かったらどうすんの。」

「ええー、でもドロシーも友達だよ? 知っておいた方が良くない? 友達に秘密や隠し事はあんまりしたくないなーって。」

「そりゃそうだけど……。 でも、それ決めるのはメロディじゃなくてオルカだよ? 人の秘密の事なんだからアンタが勝手に決めていい事じゃないからね!」


まぁまぁまぁ落ち着いて落ち着いて。

そんなピリピリしないでさ。

って、何でみんな私を見てるかな?

えっ? 別にドロシーにだったら教えてもいいよ?

それの何が問題なのかな?

私の疑問が顔に出ていたようで勝ち誇ったように


「ほらぁ」


メロディがドヤ顔して言う。


「だからぁ、オルカがね……って、メロディには何を言ってもダメか。 ゴメンね。」


そう言って私の方を向いて「ゴメンね。」と謝るメロディの保護者役のリズ。

いつも損な役回りばっかだね。


「あー、うん。 リズも大変だね。」


そう言いながらポンポンとリズの肩を軽くたたく。

二人で顔を見合わせながら苦笑する。


「ホント大変なのよぉ。」


しみじみと言ってる。

うわー、メッチャ実感籠ってるし。


「ですよねー、なんたってメロディさんですからねー。」


ドロシーもか!

メロディって普段はどんなんなの?


「なんでよー、私ってそんなにダメな子? 自分では結構まともだと思ってるんだけど?」


一応メロディが反論するも、


「「えっ?」」


「「だから、なんで二人ともそこで疑問形なのよ?」」


リズとドロシーの共感は得られなかった模様。

それが全てを物語っているね。


「そっか、やっぱメロディは残念な子だったんだ。そうじゃないかなぁと思ってたんだ。」


「オルカまでなによー! それに「やっぱ」はないでしょ「やっぱ」は!」


けど二人の意見は概ね一致してるみたいだよ、ほら?


「まぁ、メロディだからねー。」

「メロディさんですもんね。」


「ぐぬう、納得がいかぬ!」


本人は顔を顰めてるつもりだろうけど、頬っぺたをぷくっと膨らませてぷりぷりしても可愛いだけだよ。


「それよりも、何でもいいからご飯にしよっ! 温かいうちに食べようよ。」


話の流れを変えるべく私がそう言うと、


「何でも良くないよー。私残念な子じゃないもん!」


「「「まぁまぁまぁ。」」」


メロディは残念な子って決定したんだから仕方ないじゃない。

諦めて認めなさいよ。

認めちゃえば楽になるから。


「じゃあ、メロディはカリャーゲ要らないの? 要らないんだったらリズにあげちゃう……」


「要る!! 食べる。食べるよー!あったり前じゃない!」


「じゃあもう残念な子でいいじゃない。ほら、食べよ食べよ。」


「むうぅ。何か納得いかない。釈然としないわー。」


「ほらあ、カリャーゲ食べよ。お姉さんがフーフーしてあげるから。」


カリャーゲにフォークをぶっ刺して「フーフー」して冷ましながらメロディに差し出す。

ほれほれほれ。

頬っぺたが落っこちるほど美味しいよ?

食べないの?

食べないんだったらやっぱりリズに……


「食べる。 それに私の方がお姉さんだもん!」


そう言って口を大きく開けてパクっとカリャーゲに噛り付くメロディ。

そして瞠目し固まる。


「んんんーっ!!!!!」


メロディが声にならない声をあげる。

ふふん、どうだ。

オルカさん渾身の唐揚げだもん、不味い訳ないじゃない。

ニッコリ笑って、


「みんなも食べよ。」


早速リズとドロシーもカリャーゲに手を伸ばす。

リズはフォークをぶっ刺して、ドロシーはお箸で綺麗に摘んでいる。

それからおもむろに口に入れて、


「っっっ!!!!! ヤッバ! メッチャ美味しい!」


「嗚呼、やっぱ唐揚げは美味しいなぁ。まさか()()()で食べられるとは思ってなかった。」


ドロシーは元世界の唐揚げを知ってるから特別な驚きはないみたいだけど、それでも久しぶりに食べる日本の唐揚げには感無量のようでちょっとウルウルしてる。

リズはと言うと、カリャーゲの本当の本物の味を知って感動してるし。

「ん~~っ」とか「うはーっ」とか、「これ、マジでヤバいかも!」とか言いながらガツガツと食べている。


暫く固まってたメロディが何かに弾かれたように「ハッ!」と再起動する。


「何これ!何これ!何これ! ちょーっと、オルカこれ何よ! 何でこんなに美味しい訳? こんな美味しいの初めて食べたんだけど!?」


メロディ興奮しすぎ。


「美味しかったんだ、良かった。」


美味しいって言って貰えると作った甲斐があってこちらも嬉しくなる。

嬉しくなるから自然と笑顔にもなる。


「いやいやいや、そんなのほほんと笑ってないでさ! これ尋常じゃなく美味しいんだけど?」


ほほう、お肉大好きを自認するメロディさんがそこまで言うとは余程お気に召したご様子。

私はとっても満足じゃ。

うんうんと頷いているとリズが語り出した。

あー、そうだった。

すんごく美味しい物食べるとリズは饒舌になるんだった。

そして滔々と語り出すリズ。


「これ、外側はパリッとザクっとしてるのに中はジューシーで柔らかくて、それでいて噛みしめるとプツリと歯を押し返すような弾力が心地いいの。噛んだ時に口じゅうに広がる肉汁の海!さっぱりとした脂の甘味と濃厚な旨味!それらが混然一体となって口の中を幸せにしてくれるの! こんなの初めて♪」


「ありゃー、リズが語ってるねー。 これは相当気に入ったみたいだねー。」


「リズさん今回もノリノリで語ってますねぇ。」


メロディもドロシーも「やっぱそうなっちゃうかぁ」みたいな顔で笑ってるよ。


「どっちのお肉もすっごく美味しい! オーク肉も美味しいと思ったけどこっちのお肉もそれに勝るとも劣らない美味しさだ。 ね、どっちがどのお肉なの?」


メロディがドロシーの方を向きながらお肉を指さして聞いている。


「こっちがコカトリスで、こっちがグリーンバイパーのお肉。」


「ふむふむ。」


ドロシーの説明を聞いて顎に手を当てて「なるほど」みたいな顔をしている。


「それで、メロディ感想は?」


「お肉マイスターの私が断言する。このお肉は素晴らしい!」


「「「うん、それは分かってるよ。 他には?」」」


「ちぇっ、ノリが悪いなぁ。そうですねぇ、こっちのコカトリスのお肉は味が濃厚で適度な歯応えと脂の甘みが持ち味で、噛めば噛むほど肉汁と旨味が出て来る感じ。 んでグリーンバイパーのお肉は鶏肉に近い感じでさっぱりとしてて柔らかい。けど鶏肉よりも肉汁と言うか旨味は豊かだね。 この2つのお肉に比べるとオーク肉の脂は少々しつこいね。食べ過ぎると胃もたれするけど、こっちのお肉はいくらでも食べられそう。」


「メロディも語るねぇ。」


肘でメロディの身体をつつくようにしてリズが茶化している。

いつもは茶化される側だからここぞとばかりに茶化して悪ノリしてるし。

もうそれぐらいでヤメて置いたら?

あんまりしつこいと仕返しが怖いよ?

え?

どうせいつも弄られるんだからせめて今日くらいは弄り返してやるって?

うん、まぁ リズがそう言うんなら止めないけど程々にしときなよ。


「お肉ばっかり食べてないでポテトサラダも食べてよ。 メッチャ美味しいから。」


木で出来た鍋スプーンで大鍋からポテトサラダを掬って、やはり木で出来たサラダボールによそう。

ほい ほい ほい。

3人前あがりっ!

さぁさ食いねぇ食いねぇ。


小ぶりなスプーンでポテサラをちょこんと掬って口に運ぶ3人。

ドロシーは元世界で食べた事あって味に予想がつくから特に躊躇せず普通に食べている。

もぐもぐもぐ。

口の端を上げて声もなく笑う。

そして「美味しい。」

だよね、ポテサラ美味しいよね。

ドロシーもポテサラ好きだもんね。

遠慮しないでどんどんお食べ。

無くなったらまた作ってあげるから。

気に入って貰えたようで何より。


さて、リズとメロディは…


カっと目を見開いて「……っ!」と動きを止めている。


「「うっまぁ!」」


最初の一言がそれでその後がすごかった。


「ねーねーねー、これ本当にジャガイモで出来てんの? メッチャ美味しいんだけど? ええ? 信じらんない。 ホントに? 嘘じゃなくて? 冗談でもなくて? そうなんだ、これはもう未知の食べ物だわー。」

「ホントにそう。これヤバ過ぎですよー。 これってあの「メイヨーソース」使ってるんだよね?」


二人ともまくし立てるように聞いてくる。

メイヨーソース? ああ、マヨネーズね。

どうゆう訳かこっちの世界では「メイヨーソース」って名前で伝わってるけど、日本人的にはやっぱ「マヨネーズ」の方がしっくり来るなぁ。


「そだよー。潰したジャガイモを滑らかにするのにドッパドッパ大量にメイヨーソース入れてるよ。」


「すごい! 門外不出を言われているあのソースを惜しげもなく使ってるなんて想像も出来ないわ。」


「ほんとマジすごい美味しいなー。 滑らかな口触りとジャガイモの粒々感。それに色取り取りの具材。それらが絶妙に混ざり合って、そこに刻みピクルスが得も言われぬアクセントになってる。 これはサラダ革命だよ。」


あー、リズがまたしても饒舌に語ってるぅ。

滔々と語りながらも2杯目を御代わりしてる。


「サラダ革命。 言い得て妙なり。」


メロディがぼそりと呟く。

そしてまた食べ始める。

ガツガツと、ガツガツと、ガツガツと……ってどんだけ食べてんのよ。

貴女は欠食児童ですか!ってなもんだ。

ドロシーの方を見ると彼女もシレッと御代わりをして食べてた。


そっかそっか。

そこまで好評だと嬉しいな。

ごはんてさ、食べてくれる人が居るから作り甲斐があるんだよ。

誰も食べてくれないんだったら手間暇かけてごはんなんか作んないもんね。

そう言う意味では私は恵まれている。

こんなにも美味しい美味しいって言って食べてくれる人達が居るんだもん。

幸せだね。






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