一言で決まる一枚の…
能力は使い方次第で強さが変わる。
実際の戦場ならば、確実に相手の命を奪う覚悟が必要になるだろう。
生きた者が勝ち、敗者は死、またはそれに準ずる物が確定する。
俺がこれから身を投じなければならないのは、そんな世界だった。
「模擬戦とはいえ、俺のさっきの負けは納得いかないんだけどな。」
俺はどうしても納得いかなかった。さっきのは俺の勝ちだろう。
実際の戦いならば俺はあの時点でとどめを刺せる。
その、はずだ。
「まあまあ、私がご飯奢るからそれでチャラにしよ?」
というあやめの提案でその場は流れ、次はつららが模擬戦をすることになった。
「じゃあ、勝ち残りであやめちゃんと戦おっかな?」
悪い顔をしながら指名するつらら。
「え、そういう流れなんですか…?」
また露骨に嫌そうな顔をするあやめ。
渋々、といった様子で構えをとった。
「んじゃ、お願いしまーす」
やる気のないあやめの声で始まる。
それと同時にあやめは近場のテーブルから小ナフキンを取り、耳に詰め始めた。
「能力はわかってるんだからねー!聞きませんよーだ!」
高らかに宣言しながらつららの動きに対処できるよう構え直す。
やれやれ、といった風に肩を落とすジェスチャーをしながらつららは一歩ずつゆっくり近づいていく。
その手に何も持っていないことをアピールしながら、一歩ずつ。
あと3歩程で密着するか、という距離であやめが動いた。
俺の時のように低く体勢を落として死角に潜り込む動き。
それと同時に短刀が投げられる。向かう先は首元。
「おい…!」
と声が思わず出てしまう。模擬戦の範囲を超えた攻撃ではないかと。
しかし、禍福さんに制止される。『あのくらいなら問題ありません』と。
「今日こそは、私が勝つんだ…っ!」
短刀とは真逆の方向から足払いをかける。
明らかに俺との戦いとは動きが違った。
「せっかく武器持たないで来たのに、ダメだよー?」
そう言ってあやめの方に振り返るつららの手元にはあやめが投げた短刀が握られている。
「はい、返すね〜」
足払いをひょいと避けながら短刀を床に突き刺す。
その短刀は、あやめのスカートを床に縫い付けていた。
「こんな小手先で!」
破れるのも気にせずそのままミドル、ハイと蹴りを繰り出すあやめ。 その蹴りは片足ずつ受け止められ、宙吊りの形で持ち上げられた。
「はい、夜上くんは見ないであげてね」
禍福さんにそっと耳栓を入れられ、手で目隠しをされる。
数分経って目隠しと耳栓を取られた時には、あやめが半泣きで悔しがっていた。
悔しがるのはいいけどフロアを叩きすぎて両手が真っ赤になっている。
そしてそのまま絞り出すように声を出した
「毎度思うんだけどさ…つららの能力って尊厳破壊だよね!?」
「そんなことないよ?ほら、可愛く撮れてるじゃん。ね?氷河?」
そう言って見せてくる紙には、バッチリ決めポーズをとったあやめが写されていた。
「……なんだこれ。」
「つららの能力。声聞かされると従わないといけなくなる。耳元で囁かれるともう無理。氷ちゃんも、聞いたでしょ?」
つまり、あの後自分を写すよう言われたと、そういうことらしい。
満面の笑みとバッチリ決めたポーズはとても嫌々やったようには見えなかった。
「私が素手で向かってるのに武器渡しちゃうのが悪いんだよ? まだまだだなぁ、あやめちゃんは。」
でもポージングの才能はバッチリだよね、と続ける。
可愛く写ってるのに何で嫌なのかなぁ、と言いながらそっと保管している姿にこれまでの勝敗記録がなんとなく想像できた。
「じゃあ、あやめちゃんが奢ってくれるみたいだしご飯食べ行こっか!」
「あ、そこ忘れてないんですね」
これまで見る中で一番元気のないあやめを尻目に、俺たちは3人で街に繰り出す。
「ところであやめちゃん。着替えなくていいの?」
下を指差しながらつららが指摘する。
「気づいてたんなら言ってください!氷ちゃんは何か見たとしても忘れること!しばらくこっち見んな!!」
顔を真っ赤にしながらあやめは店の更衣室を借りに走っていった。
何も見てなくてよかった。後で散々言われそうだから…主にこっちを見る圧が強いつららに。
1週間空くとか空かないとか…そういうレベルで焦りたくないなと思ってるけどどうにも投稿ペースを上げられません。ロベルトです。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
夜上君が見れなかった部分はご想像にお任せしておきます。そして猫宮、すまなかった。
この場を借りて謝罪を置いておきつつ、後書きと致します。
次回はまた新しい人が出る…はず!