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今、動き始める。

夜上氷河。彼の国はもう誰も思い出せない。認識できない。

存在そのものが、無くなってしまった。

聞くところによれば、俺は生かされるべくして国に、家族に、生かされたのだという。

なぜ俺なのかも分からない。なぜ無くなってしまったのかも分からない。

分からないことだけが山積みのこの世界を、解き明かさなければならない。


逢魔堂を訪れてから数日が経過し、氷河はこれ以上世話になり続けるのもどうかと思い始めていた。


「マスターは良い人だ。めっちゃでっかいだけで。でも、その優しさに甘え続けるわけにはいかない。」


普段より二時間早く起床。布団を畳み、荷物を持ち、置き手紙を置いて逢魔堂を後にする。

…のだが、玄関で背後に気配を感じた。


「うわぁっ!?」


背後には無言で立つマスターの姿があった。

あまりの大きさに、壁のようにすら見える。


「もう、行くんですね。」


「ああ。やっぱり、こうして直接礼を言わなきゃだめだよな。」


すっ、と向き直って綺麗なお辞儀をする。


「この数日間、大変世話になった。恩を返せるほどの物を持ち合わせていないが、いつか必ず貴方の力になると誓おう。」


やはり顔も名前も思い出せないが、教わったものは思い出せる。

作法だけで何も返せないが、マスターは快く送り出してくれた。


「ああ、お待ちを。まだ名乗ってませんでしたね。私禍福(かふく)ツナシゲと申します。」


高い高い背丈を下ろしながら、そっと名刺を渡される。

『逢魔堂 マスター 禍福ツナシゲ』

あまりにもそのまんまな名刺だった。


「よろしければお持ち下さい。特に何の役にも立ちませんが、私のことは忘れずにいられると思われますので。」


やけに固い名刺をもらい、あの人混みへと戻っていく。

どこを見ても人。だが、向かうべきははっきりしていた。

賑やかな声がする方に向かうだけなのだから、今回は迷う要素もない。


「おー、これはこっちの方でね…」

「えー!?あっちで何かあったの!?」

「またまた、お世辞いうのはもっと他の子にしときなよ~」


あっちこっち行きながら人に合わせた顔で皆に笑顔で接している女。

そこに居たのは、俺を案内してくれた猫宮あやめだった。


「あれ?氷ちゃんじゃん!どうだった?あの店!」


「ん?あやめちゃん知り合いかい?いい男見つけてたんだねぇ」


近くに居る男性から茶化されるが、


「やだなあ、ただの知り合いですよ!あたしが一回道案内しただけ!」


とのことだ。そんなに即答で否定しなくていいんじゃなかろうか。

何かを期待したわけでは無いが。


「それで、氷ちゃんはどうしたの?理由もなくあたしの居る方向に歩くほどあたしに惚れちゃった?」


ついさっき知り合い止まりだと認定しておいてそれを言うか。


「いや、単純に知っている人間がお前だけだったんだ。」


そう答えると、少し不服そうなオーラが見えた。

返答を、間違えただろうか。


「お前、なんて他人行儀な呼び方をする仲じゃあないと思ってたのになぁ」


何を今さら、というのは簡単だがここで協力の可能性から切り捨てるのはよくないだろう。


「…………あやめに、頼みがあって来た。」


「この短いスパンであたしに頼み事とは仕方ないなぁ。ほれ、言ってみ?」


名前で呼んだ瞬間にちょっと嬉しそうにしていたのは見逃さなかったがそれはそれとして。


「第一に、泊まる場所がない。第二に、人の認知を書き換える能力について知りたい。協力してもらえないだろうか。」


二つ目の頼みを言った時、露骨に嫌そうな顔をしたがあやめは引き受けてくれた。

泊まる場所は後で探しても間に合うから、まずは二つ目の頼みについてから調べていこう、という話だった。

いつもの挨拶になりますがここまで読んで下さりありがとうございます。

夜上君やっと動こうとしてくれました。

あやめちゃんと一緒にここからどう動いてくれるのか。

っていうか進行が主人公よりあやめちゃんだよりになってないか?

危うい感じもしますが主人公は夜上君です。頑張れ夜上、負けるな夜上。


そして、今回出演してくださったのはマスターの

禍福ツナシゲ(@kafukutunashige) さんです!ありがとう!

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