ソロモンの鍵~メフィストの弟の転生しました。
「うん?!・・・なんだこれ?ここは何処だよ?」
確か、昨日、中3の期末テストが終わって仲間とカラオケに行って少しばかりアルコールが入ったソフトドリンクを飲んで騒いで、家に帰ってそのまま寝たんだよな!?
「おやおや、お目覚めですか?大丈夫ですよ。ここは安心・安全・安定の空間ですからねえ」
声がする方を見ると、アニメで出て来るような執事が着る上品なスーツの紳士がこちらを見てる。
「すみません。ここは?」
「ここ?ああ、そうですね。これは失礼しました。自己紹介とあなた様が置かれている状況をご説明致します。あなたは様は昨日、急性アルコール中毒でお亡くなりになりました。そして、私はあなた方が言う悪魔です」
「・・・はあ?!悪魔・・・おじさん、何言っているのかな?」
突然、馬鹿げた事を言う紳士?いや、俺を拉致した頭の可笑しい奴か。
「まあ、そう思うのも仕方がありません。でも、ご自身の体をご覧ください。透明で姿が透けていますよ。更に物や私に触れようとも触れられない・・・だって、今のあなた様は魂ですものね」
ふっ、何言ってんだか・・・あれ?・・・触れられない・・・それどころか体が透けている。え~~~~、まさか本当に・・・。
「理解頂けて、ありがとうございます」
「・・・おまえが悪魔だとして俺の魂をどうするんだ?」
「あなたの魂?どうするか??・・・そうですねえ・・・あなたの好きな異世界に行って頂きましょうか?」
「はあ?!・・・異世界?悪魔なら俺の願いを3つ叶えて俺が死んでから魂を得るじゃないのか?」
確か、悪魔って言うのは3つの願い事を聞き、それと交換に魂を自分の手にするんだよな。ラノベを愛読している人間なら皆、知っているぜ、ふっ。
「ほう?随分と古典的な手法を知っていますね。それでは、聞きますがそれで手に入る魂は幾つですか?」
「・・・幾つって・・・俺の魂だから一つだろ」
「その通り。人間のくだらない欲望を三つも叶えて魂が一つ・・・あなたが悪魔だとして割に合わないと思いませんか?」
「ふーん。確かに三つの願いを聞いて魂が一つか・・・そう考えると苦労のわりに合わねえなって、俺は悪魔じゃねえ!」
「分かって頂けましたか?そこで、私は考えたんですよ。あなた様を異世界に送り出し、多くの魂を手にする事を」
「はあ?何ってんの??意味分からねえし」
「・・・これは説明不足の様でした。異世界に行ったあなた様は、どうしますか?」
「異世界かあ・・・それは、魔物を倒しレベルアップやお金を稼ぎ好きな事をする事かな。チートなスキルも欲しいよな」
「そうでしょうとも。だから、私があなた様の異世界への旅に対してお手伝いするとしたら?」
「ははあ、分かった。俺を異世界に送って、直ぐに魔物に殺させて魂を取るつもりだろう?そうすれば、残りの二つの願い事を聞く必要がないものね。後は、勇者などのチートを沢山与えるが、病弱で寝たっきりの人生で失望して俺が自殺する。よく考えたな」
「あなた様は、多少皮肉れていますね。そんな勿体ない事をしませんよ。あなた様には異世界に行って、魔物や盗賊と言った者達を殺して頂きたいだけですよ」
「魔物や盗賊を殺す?おいおい、悪魔が神や女神みたいな事を言うってどういう事だ??明らかに可笑しいだろ???」
「あなたが、異世界で殺した者の魂は全て私の物となります。ここであなたのちっぽけな魂一つを取ってもゴミ屑にしかなりません、悪しからず・・・ご理解頂けましたでしょうか?お互いにウインウインの関係なんですよ。しかも、今ならあなたが先程、申していたチートスキルも差し上げます」
「・・・(しかし、良く考えたものだ。確かに、異世界ものだとチート俺強い魔物死ね、だものなあ。盗賊とか敵対する人間まで殺して、俺が正義だとほざくからな・・・)一つ聞くが、嫌だと言ったら?」
「そうですね。貴方の様な薄汚れた魂は私は不要です。生前の善行も無いようですから地獄行きですね」
「ちょっと待った。俺は今まで、確かに善行という事をして来なかったが、特に悪い事もした事がない。それなのに何故?地獄行きなんだ??」
「フッ・・・人間とは相変わらず愚かな生き物です・・・これは失礼。あなた様の事を特に言った訳ではありません。神から見れば、善行を行って当たり前なんですよ。幾つもの善行を行ってやっと秤に掛けられる。それ以外の人間は地獄行きです。悪しからず」
「ふざけんな!そんな事、聞いた事がねえし、誰も知らねえ。ふざけんなよ!!」
「それは、あなた方が信じる神に言ってください。神が決めた事で私には関係のない事です」
どうなってんだ?・・・悪魔の言う事を信じるのか??そうだ、こいつは悪魔だ嘘に違いない。
「今、あなたは私が悪魔だから嘘を吐いていると思いましたね。悪魔はね。確かに嘘を吐きます。人だって嘘を吐きますでしょう?人は良くて、悪魔は駄目だなんて言うのは傲慢というものです。それに悪魔は契約者に対しては嘘を吐く事は決してありません。最も信じる信じないはあなた様次第です。さてと、長くなりました。どう致しますか?」
「・・・どうしますかって言われても、地獄か異世界に行くしかないんだろう?ああ、そうだ。異世界に行っても普通に村人として生きていってもいいんだろう?」
「私としては、異世界に行って頂くだけで結構です。他には何も望みません。ああ、そうそう。言い忘れていました。あなたが仰っているチートスキルもお付けしましょう。但し、奴隷スタートでしたら五つ、平民でしたら三つ、貴族で一つ、王族は無しです」
「異世界に行ってチートスキルまで貰えるのかよ。奴隷が五つで王族が無しか。チートでは無い、ただのスキルと言うのは訓練すれば手に入るのか?訓練してから五十年などの年月が掛かるのは無しだぜ」
「・・・なるほど。チートスキルとは才能であり、後からは手に入れる事は出来ません。また、スキルはチートスキルつまり才能が無ければ努力しても取得する事が出来ません」
「チートスキルが才能?」
「そうです。魂に刻まれし呪い。人はそれを才能と呼びますね」
意味が分からないな。チートスキルつまり才能が魂に刻まれし呪いとはなあ。呪いだからろくでもないもの?いやいや、チートスキルが呪いなんて可笑しいだろう。
「才能がなぜ?呪いなんだ??才能が有ればその才能を利用して自分に取って大きな利益を齎す事も可能なのに・・・」
「ほう?お気づきでない。神が自分に都合の良い才能を人の魂に刻む事でその人間の生き方を固定するのですよ。誰しも自分に才能が有ればそれを生かし、その才能で成功しようとします。違いますか?」
「うっ!?・・・それは物事の取りようだな。だが、多くの人に取って才能と言うものは重要であり、より多くの才能を求めるだろう。自分が他人と比較して有利になれるのだから当たり前だろう」
「つまり、神によって自由な生き方を出来ないように才能と言う首輪を嵌められて生きて行く事が幸せだと?あなた様はそう考えるのですね」
「まあ、そうなるな」
「それでどうします?地獄か異世界か??」
「どうしますかって?異世界しかないじゃん」
「分かりました。それでは転生する種族とクラスを次の中から選んでください」
「種族は?はあ、魔物って魔物も選べるのかよ??クラスは魔王って・・・。頭が痛くなって来た。俺は普通でいいよ。種族は人族で、平民だ」
「平民?これは平凡ですねえ。私としては王族でこの世の享楽を得て、民をゴミの様に殺しまくるのも良し、奴隷から虐げられた怒りを関係のない人々にぶつけて皆殺しするような人生もお勧めですが・・・」
「ラノベでもあるだろう?そんな人なんて憎まれて最後は殺される運命なんだよ。俺はね。どうせ異世界に行くなら平凡な人生を送りたいだけ」
「・・・畏まりました。それではチートスキルを次の中からお選びください」
うわー、ガチャとか異世界ストアかとあるわあ。俺はこの中から三つかあ・・・ああ、そうだ。言葉とか文字とかどうなのかな?」
「そうですね。奴隷は種族によりその種族語しか話せない種族があり、勿論、文字も書けません。平民は文字が書けません。文字が書けるのは貴族以上です」
やはり、厳しいな。とすると、そうだ!
「転生した場合の年齢は?」
「年齢ですか?0歳から始まります。因みに年齢を変更する場合はチートスキルを一つ消費する事になります」
これは嘘は吐かないが聞かないと、答えないパターンだな。
「異世界での成人の年齢と、それまでに生き残る確率を教えてくれ」
「あなた様が行かれる世界は十五歳が成人でございます。また、成人までの生存確率は奴隷の場合30%、平民で50%、貴族で80%、王族で90%でございます」
「・・・つまり、生き残るためにチートスキルが必要という事か。あぶねえな。浮かれて、好きなスキル選んでいたら、幼児の時点で死んでんじゃねえの・・・となると、平民で3つか」
「おすすめは、貴族です。チートスキルが一つですが、成人まで生き残る確率が非常に高い。平民は生き残る確率が50%ですが、飽くまでも生き残る確率であって、その時の後遺症で一生寝たきりもあります」
「はあ?だったら、『健康』って言うチートスキル取れば良いじゃん。後、二つは自由に選べるだろう??」
「ところが、一旦戦争でも起きれば平民はろくな装備も与えられず最前線で死ぬ事になります。例え、死ななくとも怪我が原因の後遺症というものは『健康』では防ぐ事が出来ません」
なるほどな。平民は最前線。貴族は良い装備を身に着け後ろから指示を出し、危なくなれば馬で退却するから死んだり敵に捕まったりする確率は低いよな。
悪魔の言う事も理解出来る。
「そうか分かった。では、貴族でチートスキルは『魔法の才能』で頼む。それとアイテムも欲しいな」
「・・・フフフフッ。あなたは様は私の思った通りの御方です。チートスキル『魔法の才能』ですか。これであなた様は無限に近い魔力を保有し、最強の魔法を行使する事が出来るでしょう。そして、アイテムですか?」
「そうだよ。だあってさあ。チートスキルが1つと言うのは条件だから仕方がないけど。おまけにアイテムの1つ位、付けても問題がないよね?だって、さっきの契約の話に入っていないもの」
「フフフフッ。流石は、私が選んだだけの人間です。良いですよ。但し、『ソロモンの指輪』だけは駄目です!」
「ああ、悪魔や天使を使役出来るソロモンの指輪か。そんな骨董品興味はない」
「ではどうぞ!」
「『ソロモンの鍵』を頼む」
「・・・ソロモンの鍵・・・なるほど。良いでしょう(だって、人間には使えませんからねえ)」
「そうだ。異世界に転生する前にあんたの名を教えてくれ」
「・・・私の名前ですか・・・人間にはメフィストと呼ばれる事もあります」
「そうか。メフィストでは行って来るよ」
「ソロモンの鍵はあなたが12才になり、アイテムボックスが使えるようになった時に見つかるようにしておきます。それでは自由な人生を・・・(さてと、私も異世界とやらを見学致しますか)」
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「おや?悪魔がこんな所で・・・!?・・・お前、メフィストじゃねえか??お前が何で異世界にいるんだよ!」
「そういうあなたは、死神ですね。あなたこそ地球を離れてどうしたのですか?」
「俺はさあ、上司の命令だ。最近、地球から異世界に転移や転生する奴が多くて、異世界の神から地球神に死神の応援要請が合ってな出向だ」
「それはそれは大変ですね。所でこれから何処へ行くのですか?」
「ああ、何でも異世界に貴族として転生した日本人のガキが、魔力を増やそうとして魔力を使い切り死ぬからそのお迎いだな」
「・・・その子供名は?」
「うん?・・・確か・・・マイヤー辺境伯の5男のガトー・・・」
「はあ!?全く、転生して直ぐじゃないですか!ガトー様、何をやってるんですか!!」
「おっと、知り合いかい?でも、仕事の邪魔は駄目だぜ」
「仕事の邪魔?私はあなた方に喜ばれる事が合っても邪魔をした事なんてありませんよ」
「まあ、なあ・・・まあいいや。俺もいきなり来て仕事はキツイ。お手並み拝見としましょうか?」
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これは、これは。屋敷に着いて見れば今にも死にそうじゃないですか?しっかりしている様でやはり、まだ子供ですねえ。
どうせ、読んだラノベの真似をして、魔力を使い切ったら増えるんだぜ、みたいな調子で死にかけているんでしょうか。
「・・・ウーム。不味い不味い。生命エネルギーが枯渇して魂が壊れかけている。ここまで来て何をやってくれているんですか?・・・仕方がない。私の生命エネルギーを与えて、壊れかけた魂の修復に私の魂の一部を使ってと・・・目覚めなさい!」
「うっ!?ここは?安心・安全・安定の空間か・・・あっ!俺ってまた死んだのかよ」
「死ぬ所でしたが、私が助けました。良いですか?あなた様は生まれたばかりで色々なキャパシティーが足りていません。また、この世界の常識もね。だから、これから成長に合わせて体や魔力を鍛え、知識を増やさなければなりません。自分の目で見て自分で確認し、確かなものなら実践していく。この事を忘れないで下さい」
「分かったよ。これからは自分の目で見て確かめてから実践する」
「そろそろ、あなた様のご両親も心配していますから。私はこれで失礼致します」
「おっ!ガトーが目を覚ました」
「ガトーちゃん、大丈夫?」
「キャア、キャア(大丈夫、大丈夫)」
この後、両親に泣かれて大変だった。
そして、あっという間に12年が経ち俺は12才となったが、今日まで病気どころか怪我一つした事がなかった。この国と言うかこの世界では12才になるまで武器の取り扱いや魔法の使用を禁じていて、12才の誕生日に教会へ行き己のユニークスキルに従い、その適正を伸ばしていく。
俺は早速、両親と共に教会にやって来た。ついにメフィストとの契約に基づいた俺のチートスキルのお披露目の日だ。
俺は辺境伯の5男だ。と言っても上の二人の兄は出産時と流行り病で死んでしまって、実質3男である。
間違いがないと思うが魔法の才能があれば、将来両親から騎士爵か男爵を拝命し夢の田舎暮らしが出来る。魔法を使った村の開拓なんてやってみたいぜ。
おっと、ぼーとしていたら、司祭がこっちだという目でこちらを痛いほど見ている。
「それでは、辺境伯5男マイヤー・ガトー主の前で跪きなさい」
「(ハイハイ)」
「はい、それでは才能の儀は、これで終了です。主のお恵みが有らん事を・・・」
はあ?!もう終わり?普通さあ、創造神や女神が出て来てさあ。それではあなたには、この才能を与えましょう、とかあるんじゃねえの??
しょうがないな。ステータスだったよな。大声で出すと恥ずかしい奴。
「(ステータス)」
名前:マイヤー・ガトー
年齢:12才
所属:辺境伯マイヤー家5男
種族:人ではない悪魔的な・・・。
才能:魔法の才能
スキル:悪魔の持つ全てのスキルが使用可能です。
称号:異世界人、原初の悪魔メフィストの弟、ソロモンの鍵の所有者
なんだこれ?俺は人間だ。悪魔じゃない!何でこんな事に・・・あっ!そう言えばこっちに転生して、自分の無茶で直ぐに死にかけたよな。俺は夢うつつだったが、メフィストの奴、確か・・・自分の生命エネルギーと魂を補修に使ったとか・・・それだ・・・。
「(メフィスト!大変だ!!今すぐに来てくれ!!!)」
「(これはこれは、教会にお呼びとは恐れ入ります)」
「(今はそれどころじゃねえ。俺のステータスが大変なんだよ!まず、見てくれ!!)」
「はっ!?・・・(すみません。つい大きな声を出してしまって。しかし、これは・・・あっ!あの時の・・・なるほど、フーム。普通では有り得ない事が起きてしまった。これは珍しい。人間が私と同じ種族になるとは・・・非常に興味深い。結果から言うとどうしようもありません。このまま生きて行くしかないでしょう)」
「お前!(あっ!?声が出ちゃった。俺は人間として生きて行きたいんだよ、人間として。メフィストならどうにかなるだろう?)」
「(なりません。あなた様とは既に契約を済ませています。追加の契約や契約の変更は出来ません。その代わり、悪魔の能力が使えるようですからステータスを偽装すればいいのです。悪魔なら身長や性別、外観など好きに変えられるはずです。それでは私は忙しいので、失礼させて頂きます)」
「・・・」
悪魔ならってな!悪魔決定じゃないか!!うっ!?そんな事より何故か近くの司祭の視線が痛い。早速、ステータス偽装だ。
名前:マイヤー・ガトー
年齢:12才
所属:辺境伯マイヤー家5男
種族:人族
才能:魔法の才能
スキル:火魔法、水魔法
称号:なし
これでよし!じゃない!!道理で病気や怪我をしない訳だ。意外と教会とか平気なんだなとかでもない!落ち着け俺、見た目も知識も人間じゃないか。良く考えたら、今まで通りで問題ない。
そう、人間として普通に生きて行けばいいんだ。
「ふー、困りましたね。私に弟が出来るなんて。原初となれば悪魔の寿命は無い様な物。今は人間として暮らし、精々人間の愚かしさに絶望して貰いましょう。悪魔としての教育はいつでも出来るのですから・・・それはそうと、大事な事を忘れているような・・・はて?・・・まあいいでしょう。さてと、行きますか」
メフィストよ、良いのかそれで?
ソロモンの鍵の行方は・・・・・・・・。