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091 - スリカータ星観光 その2

「そうしましたら、お昼に致しましょう。大したおもてなしは出来ませんが、種族コードに合ったお昼を準備させていただきます。お昼の間、我々は退席させていただきますので、皆様でごゆるりとお過ごしください。午後は専用機での観光を、ご期待下さいませ」


 そう言うと、クルンさんはヴァイパーを押すように部屋から出て行ってしまった。

 交代するように先ほどから案内してくれている栗縞亜猫族の方々が現れる。

 全員が、両手で頭の上にお盆を掲げて歩く。

 その様子はなかなかコミカルだ。


 そして陸上組のテーブルの上に置かれたのは、例のグルンフィルステーションのファミレスで食べたようなお昼……

 正直、食指が動かない。


 まぁせっかくなので頂きますか……

 私が覚悟を決めたのを察した他のメンバーも食べることを決めた様だ。


 シンリーとボルグに何も出されないのが可哀相なので、いつもの食事をしてもらおうか……

 幸い、大きめの部屋で天井も高い。

 食事用の大型海水球は転送で持ってこられるだろう。


「エンジュ、シンリーとボルグの食事を出してあげて頂戴」


「畏まりました 」

 そしてその直後に現れる水球。もちろん中には魚が泳いでいる。


「わっ!」「なんですか?」「これは?」

 観光案内の栗縞亜猫族の人達が小さく飛び跳ね、驚いている。

 先に言ってあげればよかったかしらね。


「あぁ、驚かせてしまったらすまないわね。これは彼らのお昼よ」


「大量の水だ……」「浮いているぞ」「中に居るのはなんだ?」

 魚を見たことがないのかな……

 そして浮いている水球と中の魚を見てあれこれと言っている。


「中に居るのは魚という生き物よ。見たことがなかったかしら?」


「初めて見た!」「キラキラしてる!」「早い!」

 ガイドの役目を忘れて興奮しているのがよくわかる。みんなの首が魚の泳ぎに合わせて一緒に動くのが面白い。


『た、食べちゃっていいのかしら?』

『おもちゃを横取りするみたいで気が引けるね……』

 水球に入ったシンリーとボルグが食べるのを迷っているので、助け舟を出そう。


「食べた分を補充するから大丈夫よ。食べ過ぎないように注意してね。って感じでエンジュよろしく」


『『りょーかい』』「畏まりました 」


 シンリーとボルグの食事風景は栗縞亜猫族に大いに受け、盛り上がった。

 その様子(栗縞亜猫族)を見た私たちも眼福だった。


 これも観光と呼んでいいのかしら……ね?




 お昼を食べた後は、観光専用機での惑星観光だ。

 自分の船でもよかったのだが、是非に、と言われては断るのも悪い。


 飛行機に似た青い機体に乗り込んで席に着く。

 だいぶ顔が分かってきたガイド役の方々と、第3惑星の行政長官のクルンさんもいる。ヴァイパーは外してきたようだ。

 席の下側は透明な材質で地上がよく見えるようになっている。流石は専用機だ。


 庁舎の屋上から轟音を立てて上昇してく。

 地上の移動の時も思ったが化学燃料がメインなのだろうか?


 眼下には広大な農場に緑色の葉が風になびいて絨毯の様に波打っている。

 まだ高度は低いが、地平線のかなたまで緑色一色だ。

 綺麗だとも思うが、空恐ろしくもある。


「どうですか、この光景は! 成長の緑です。綺麗でしょう?」

 短い両手を空に向け、誇らしげに胸を反らすクルンさん。


「そ、そうですね」 

 対応するミルアさんも引き気味だ。


 専用機はグングンと高度を上げ、目に映る地平線が丸みを帯びてくる。

 しかし、それでも見える色は緑色だけ、山も川も森もない……のだろう。


「すげーな……一色だ……」

「動物とか居ないんですかね……」


「ここは第一穀倉ベルトですからね、惑星一周この光景ですよ。元からいた生物は全て第4惑星に移住してもらいました」


「全てですか……生態系とかは……?」


「ありませんよ。ひたすら穀物が育ち、実り、収穫するのです」

 そんなことをして、持つのだろうか?


「それで、収穫は続けられるんですか? 連作障害とかは?」


「よくご存じですね。そちらは、品種改良と理想堆肥で克服済みですね」


「他にもこれだけの規模だと、土も水も、空気も同じではいられない気がするのですが……」


「さすがですね。その通り、そこが悩みのタネなのです。土は痩せ、水は惑星レベルで減り、空気からは二酸化炭素が無くなっていきます。今使っている化学燃料も二酸化炭素を補給する為ですからね」

 地球では抑えたかった二酸化炭素も、ここでは積極的にばら撒く必要が有るものとは……

 

「な、なるほど」


 話をしていると、結構な高度に上がってきた。もう宇宙と言ってもいいレベルの高さだ。

 緑色の大地は帯の様に前後の方向に延びている。その左右には小麦色の帯と、茶色の帯がある。


「左側の小麦色の部分は収穫前の畑ですね。近くで見るとまた綺麗ですよ」

 小麦色も深みがグラデーションになっていて美しい。

 角度によって見える黄色い煌きは、黄金の様でもある。


「黄色は稲穂の色だったのか~。秋だけじゃないんだな!」

「凄い面積ですね! どれだけの収穫ができるんでしょう……」

 ラングとタマミちゃんの驚く顔がすごくカワイイ。

 これを見られただけでも価値があるわ。


「右側の茶色の部分は収穫が終わった後の畑です。この後、天地返しを行って種まきに備えます」

 目を凝らすと小さい機械がたくさん動いている。

 小さいと言っても現物はかなり大きいかもしれない。


「最高の効率で穀物が育っているのがお分かりになりましたでしょうか? このようにして我々は連邦の皆様に食料をお届けしているのです」

 とても誇らしげに語っているが、中々素直には褒められない自分がいる。

 これは……そう、工場だ。


 人工の壁も床も空調もないが、まぎれもなく目的に沿って設計された環境だ。それは工場という表現が正しい気がする。

 そう考えると少し凄いと思える。その規模と根性(実行力)に対して。


 専用機が進路を少し北よりに変えると、眼下の帯がスルスルと移動していく。茶色、緑色、小麦色を順番に繰り返す光景に目がチカチカする。


「緯度に沿って育成状況が変わるので、縞模様になっているのがよくわかるでしょう。我々の中での誉め言葉として“スリカータの星縞(スターストライプス)”という言葉があるんですよ。先ほどから案内している彼女らは、今年の星縞(スターストライプス)6人娘という人気グループなのです」


「私達、【スターストライプスで~す!】」

 紹介された6人が名乗りを上げる。息もぴったりだ。


 へ~、アイドルみたいなものか。

 確かにみんな、いい毛並みで綺麗な縞模様をしている。


「おねーさん達アイドルなのか! サイン貰っていいっすか?」

「ラング! もうっ!」

 ラングがエンジュに色紙を頼んでいる。色紙でいいのかな……?

 タマミちゃんはもしかしてヤキモチか?


 キャッキャッと楽しんでいるラングと6人を横目に窓の外を見れば、専用機は海岸線を飛び越えて海の上を飛んでいる。

 見た目には、とても濃く青い海だ。


『海に生き物はいるのでしょうか?』


「小型の魚と甲殻類、あと海藻類が少しですね。大型生物は過去の大災害で絶滅してしまいました」


『そうですか、それは残念ですわ』

 シンリーの人見知りが発動したのか、言葉は少な目だ。

 しかしそれ以上に、陸上の様子を見て、海の中もあまり期待していなかったのかもしれない。


 その後は、極地方や首都の近くを飛んで、最初の首都に戻ってきた。

 観光専用機から降りて、クルンさんと室内に戻る。


「スリカータ観光はいかがでしたでしょうか? またいずれ、訪れていただけるのを楽しみにしております」


「スリカータ星の文化や技術を見れて楽しかったです。本日はご案内ありがとうございました」

 ミルアさんが挨拶をして、みんなで行政長官の部屋から退出する。


 ガイドの方がまた前を歩いてくれるので付いて行くと、少し小さめの部屋に案内される。


「何かしらね?」とミルアさんに聞くも「お土産でしょうか?」とのこと。ガイド役の方は部屋には入ってこない様だ。


「お待たせしました。わたくし財務大臣のノクター・レックスと申します。本日はスリカータ星観光にお越しいただき誠にありがとうございました。この後、観光費用の清算させていただきたいと思いますがよろしいでしょうか?」

 あ、清算か……あれ、大丈夫かな……? 結構色々やってもらったな……

 ま、とりあえずはミルアさんに任せてみよう。


 ノクターさんが、リストを元に費用を挙げていく。

 色々と、思いもよらない所に、高目の料金が設定されていたようだ。


 こ、これは、まずいかもしれぬ……

中性子星からのエネルギー回収の艦艇数を調整しました。それに伴いスリカータ星いる艦隊は完全構成の打撃艦隊に変わっています。(フォージニアス艦隊は421隻で欠けている船が無い状態になっています。)

またこの改変に当たり、過去にさかのぼって因果の修正を行っております。

表現的に大きく変わったのは、「084 - 掃除機回収大作戦」になります。

この改変の入口は「044 - ステーション訪問」からになります。



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