088 - スリカータ星上陸
朝のミーティングも終わり、いよいよスリカータ星の観光開始だ。
みんなでクィーンバタフライ号(アンスリューム号)に転移し、艦橋から星を見る。
小型船だが贅沢仕様の船ということで窮屈さは無い。
通信の主導権をミルアさんに任せて高みの見物といこう。
「それじゃ、行きますよ」ミルアさんの確認に対し頷く。
「こちらはクィーンバタフライ号、スリカータ星系航宙管制応答願います」
『こちらはスリカータ星系航宙管制。クィーンバタフライ号へ。感度良好』
「観光の為の惑星降下を申請します」
『惑星降下を許可します。降下地点は、首都郊外の宇宙船駐機場。座標はこの後送信します』
「指示を了解しました。オーバー」
通信を切り、ミルアさんが振り返る。
「ふぅ、こんな感じでいいですか? ユメ艦長」
「上出来よ。それじゃラング、指定の座標へお願いね」
「アイマム。クィーンバタフライ号、惑星降下シーケンスに入ります。降下制御オンライン。重力制御問題なし。減速開始」
「熱圏シールド展開、降下軌道に障害物、ありません」
惑星降下は初めてのはずだがラングもタマミちゃんもスムーズな操艦で船を惑星に下ろしていく。
たぶんエンジュがあらかじめ練習させていたのだろう。
「ミルア船長、管制から通信です 」
「何かしら、繋いでください」「はい、こちらクィーンバタフライ号」
『こちら航宙管制。クィーンバタフライ号、降下角度が異常だ。計器を再確認しろ! 地表に激突するぞ!』
「大丈夫ですよね?」とミルアさんが振り返り、エンジュが頷く。
少し遅れてラングとタマミちゃんも頷く。大丈夫そうだ。
「こちらクィーンバタフライ号、問題ありません。惑星降下シーケンスに異常はありません」
『そ、そうなのか? これまで見たことのない軌道だ。エネルギーの無駄遣いではないのか?』
ミルアさんがハッとした顔で口に手を当てる。
「エネルギーの節約とかって考えてますか?」と3人に問いかけるが、全員が首を振る。
それを見てミルアさんが手で額を抑える。
今回は私ではないが、やってしまったようだ……
「こちらクィーンバタフライ号、心配なら軌道を変更しますが、必要ありますか?」
『いいえ、問題ありません。こちらも取り乱して失礼しました。そのままお進みください』
「了解。オーバー」「色々、擦り合わせないとすぐボロが出そうですね……」
価値観の擦り合わせとか、常識のズレは簡単に気づかないからこそ厄介なのよね……
「ま、その時は、その時よ! はい、準備、準備!」
みんなの苦笑いを拍手で吹き飛ばし、外に出るための装備の確認に入る。
装備はグルンフィルステーションの時と同じで、文明国の有人エリアの想定の物だ。今回は観光なのでフェイスガードは透明の設定にしてもらった。
彩海豚族用は新しくエンジュに用意してもらっている。外でも常時水球として浮いている特別製だ。
ミルアさんがまた額を抑えていたが、歩いてもらうわけにもいかないので仕方がない。
特別な御一行だとゴリ押そう……
次までには何か考えておかないといけないかしらね……ドゥーボーン氏の2足歩行義体みたいなのもいいかもしれない。
みんなの装備を一通り確認し、艦橋に戻る。
艦橋から見える光景も青い空と、白い雲、緑色の畑。
風が吹くと畑にできる光の帯がとても綺麗だ。
そしてクィーンバタフライ号の向かう先には灰色の平地が続き、遠くには都市部らしきものが見える。
「着陸地点確認。着陸速度に減速。着陸脚下ろします」
「着陸地点付近に送迎と思われるキャリアを確認。ラング、絶対にぶつけちゃだめよ!」
「キャリア位置確認。任せろ! 目的地点直上に到達。最終下降開始。……タッチダウン。着陸完了!」
「着陸脚に異常なし。機関部、地上アイドルに移行します」
船は浮かせて置いて、転送で地表に降り立つという選択肢もあったが、連邦の標準に合わせようということで、物理的な着陸をしてみた。
「お見事。それじゃ、エンジュはステルスモードで同行兼、船のお留守番をお願いね」
「はい、艦長。 行ってらっしゃいませ 」
さぁ、この後はタラップを降りて、お迎えの異星人とファーストコンタクトだ!
スリカータ星人……どんな種族かしらね?
「じゃあみんなスリカータ星に上陸するわよ!」
【はーい】
明日も投稿します。
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