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008 - 時空侵略

 ……相転移炉隔壁解放 炉心密閉フィールド異常なし。 』


ッピ 『 相転移砲発射準備完了。 』


「発射!」


 自分の口から出た言葉のはずだが現実味がない……目の前の空間が一瞬で白く塗りつぶされ、手にはわずかな振動が伝わってくる。これは相転移砲発射直後なのか……?


ギィン 『 ベクトル推進機関に異常発生! 』

ギィン 『 時空円環ゲートに異常発生! 』


 大きな音は無いが、振動がわずかに伝わってくる。ベクトル推進機関が破壊された振動だろうか……

 時空侵略兵器も使用不能か……


ビィー 『 トラクタービーム型ミサイルの接近を感知しました。迎撃します。 』


[まって!]

 言おうとしたが声が出ない。代わりに、

「やって!」 という声が出る。


ギィン 『 トラクタービーム型ミサイルを撃破。警告、トラクタービームによって軸線を変えられました。 』


 未来演算はいい仕事をしたらしい。

「問題は?」


ビィー 『 ターゲット空間の左9.2度に相転移を確認。隕石が相転移空間にすべて入りません。 』

ビィー 『 軸線変化にともない相転移場密閉フィールドが過負荷です。あと10秒で消失します。 』


 まずい。それが消えたら()()惑星上の人に甚大な影響が出てしまう。

「なんとしても、維持して!」

 体の主導権をとれるようになったらしい……体の元の意識とはほぼ融合しているのを感じる。


ギィン 『 炉心密閉フィールドに異常発生。相転移場密閉フィールド、強化実行します。 』


 なんてことだ……予想より悪い方向に向かっている……炉心が解放されたら絶対にろくでもないことになるに決まってる……

 隕石の方は、軸線上に浮かぶ白い柱から半分くらいはみ出しているが、あっちはいずれ何とかなるだろう。


ギィン 『 相転移炉隔壁に亀裂。30秒以内に相転移炉が暴走します。艦首脱出シーケンスを開始します。 』

 それはだめだ。そんなことになれば、全滅の可能性まである。

「艦首脱出シーケンス中止!」

ポーン 『 艦首脱出シーケンスを中止します。相転移炉暴走まであと15秒。 』


 何か! 

 何かないか……!

 ぎゅっと握った手が杖を感じる。手には青い紋章が……! 

 魔法! なんでもいいからこの事態を止める魔法……!

【 強化:船体強化 】 頭に使える魔法が浮かぶ。

「船体強化!」


 手の紋章が青く輝き、杖に流れていくのを感じる。焼けるように熱く感じるが、左手を添えてみても熱さは感じない。

ポーン 『 相転移炉暴走まであと8秒。船体強化は行っていますがこれ以上は…… 』

ポーン 『 船体強化フィールドが強化されました。亀裂の進行が停止しました。 』

ッピ  『 相転移砲シーケンス完了。 』

ギィン 『 炉心密閉フィールドからエネルギーの逆流が発生。相転移炉を緊急停止します。 』 

ギィン 『 主機関の8割に異常発生。過半数が暴走しVoid空間(亜空間)パージ(廃棄)しました。 』


 色々停止したようだが、相転移炉が暴走するよりはだいぶましだ。魔法による強化を止めても大丈夫だろうか……残量が少なくなってきているのを感じる。

「炉心は? もつ?」


ッピ  『 船体強化フィールドと炉心密閉フィールド安定。主機関がこれ以上停止しなければ修復可能です。 』


 魔法強化を中止することを考えると、紋章の輝きが暗くなり、手から杖に流れる何かが止まる。

 外に目を向ければ、隕石の半分が白い光に包まれつつ、内部からも何かが吹き上がっている。


ビィー 『 相転移空間の過剰相転移を確認。相転移密閉フィールドが拡大します。 』


「それは大丈夫よ。エネルギーは足りる?」


ビィー 『 稼働中の主機関の数が足りません。残存主機関の出力をミリタリーレベルに変更します。 』

ビィー 『 存在確率ジャンプを検知。侵入者2名。 』


「それも大丈夫。隔離しておいて、丁寧にね」


「艦長、何を……知っているんですか……? 」

 エンジュが恐る恐るといった感じで聞いてくる。


「未来を……すこしね」


 白く見える柱は徐々に太くなっていく……このままいけば大丈夫だろう……


「ちょうど、隕石が全部含まれるかしら……?」


 白い柱が、隕石を全部飲み込んだ。

 このままいけば完璧だ……


ッピ 『 艦長、質問をしてもよろしいでしょうか? 』


「えぇ、いいわよ。なに?」


ッピ 『 状況から考えて、時空侵略兵器を使った可能性があります。違いますか? 』


「正解よ。一回目の私たちは相転移砲の諸元値をミスして惑星を破壊した。だから時空侵略兵器を使用した。私には記憶が残ったみたいだけど、艦としての "一回目の時間" はなかったことにされたみたいね」


「そんなことが…… そしてこのボロボロの状態と…… 」


「ぅ。仕方がなかったじゃない。誰も死んでないのだからあとは、直せばいいのよ!」


 ちょうど、窓の外では相転移砲の残滓が消え穏やかな宇宙が戻りつつあった。


ポーン 『 艦長、発信元不明の通信です。本艦を指向しています。 』


 惑星からにしては早すぎる……嫌な予感が……


「受信だけって、できる?」


ポーン 『 音声・映像回線受信だけで開きます。 』


「っく!」

 思わず吹きそうになった。スクリーンには、相手の艦橋らしき場所と、艦長らしき人物が写っているのだがその人物がヤバい。

 イワトビペンギンだ! もちろん知的生命として進化した雰囲気は十分にある。服も帽子も身に着けている。貫禄(?)も感じるが、なんというか、ラブリーと言ったら大変失礼だろうか?


≪こちらは、連邦宇宙艦スペニスキダエ 艦長エンガード・バーガンディ 貴艦の所属と名称を述べてください。貴艦の行動は宇宙連邦法第12条第3項に違反しています。速やかに停船し武装解除してください。武装解除後、臨検を行います≫


 やばい! 見つかった! ……人道にもとる行為をしたつもりはないけど、ここは逃げの一手だ。


「隠れるやつ……なんだっけ……あれを再起動できる?」


ポーン 『 量子クローキングデバイス(かくれみの)を起動しました。 』


「これで逃げられるかしら?」


「どうでしょう…… 実は相手の発信元を確認できません。向こうのテクノロジーレベルの方が高い可能性があります」


≪こちらは、連邦宇宙艦スペニスキダエ 艦長エンガード・バーガンディ 貴艦の所属と名称を述べてください。貴艦の行動はモニターされています。貴艦の行動は宇宙連邦法第22条第5項に違反しています。 速やかに停船し、機関停止してください。≫


 22条の5項が何かわからないけど、なんとなく隠れたのがばれたのは分かる……

「ばれてるじゃん……身を隠す方法は他にないの?」


「残念ながらありません。 かなりの数の機関が異常停止している今、逃げるとしても、振り切れるかどうか…… 」


 あ、あれを試してみるか……杖を握り直し、手の紋章に意識を向ける。

【 闇:船体隠蔽 】 頭に使える魔法が浮かぶ。残量が心もとないが行けそうだ。


<<船体隠蔽!>>


≪こちらは、連邦宇宙艦スペニスキダエ 艦長エンガード・バーガンディ 貴艦の所属と名称を述べてくだ…… え? 消えた? ……


……速やかに停船し、機関停止してください≫


 どうやらうまくいったらしい……

 ここで油断しない……私は学習したのだ!


「星系外に向けて微速前進!」


「微速しか出ないですけどね…… 」


「ぅ……相手の動きはどう?」


「スキャン信号に変化なし。 こちらの位置をロストしたと思われます 」


「ぇ。スキャン信号拾ってたの? いつから?」


「ぇっと。 第5惑星と第4惑星の間にジャンプアウトした時からですが…… 」


「ぇっぇぇえーーーーーー。ずっと見られてたの?」


「いえ。 あ、えっと…… 指向性スキャンではなかったですし、こちらは量子クローキング状態でしたので、見つかっていないと思っていました。 が、先ほどの通信でこちらの位置はバレバレだったみたいですね…… ハハハ…… 」


 エンジュが乾いた笑いを再現してくれた…… 

 まぁいいか。とりあえず今は、向こうの目を欺いたと思ってもいいだろう。


「とりあえず、連邦艦? だっけ……それの動向は逐一モニターしておいてちょうだいね。あ、あと、存在確率ジャンプを外部から行ったシャトルがあるはずだから回収しておいてね!」


「了解です。 しかし艦長、さっき何をしたんですか? 今の船体の状態が一部不明なんですが…… あと、相転移炉が危ない時も何かしましたよね? 」


 今、説明してもいいが、少しは冗談を言ってもいいだろう……


「ひ ・ み ・ つ よ ~ 」

「ぇ…… 」

「ウソ。後でね」


「あと、2名の黒犬族はどうするんですか? 」


「今から見に行こうかしらね。場所は?」


「第一医務室です 」


「様子は?」

 艦橋から出る方向に歩きながら、エンジュに聞く。


「気絶中の様です。 バイタルは安定しています 」


「2名とも?」


「はい。 2名ともです 」


 扉から出て、ムーバに乗り込む。 


「第一医務室へ!」

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