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067 - ドルファーズアーク

 艦隊が次元迷路の外壁近くに到着し、進もうか迷っているとシンリー艦から通信が入る。


『戻ってきましたわ~(ビィー 『 工作艦のシールド低下99% 』)』


「ちょっと! 後ろで警告鳴ってるじゃないの! 大丈夫なの!?」


『壁ギリギリを飛ぶのが楽しいんですのよ~ 』


 ……こいつは、やべーやつだ……


「いいから一度戻ってきなさい!」


『ドルファーズアークまでの道も確認できましたわ。ついてきてくださいまし~』


 ……全然、話聞いてない……

 その間にも、シンリー艦は反転して奥に進んでいってしまった。


「まぁあの感じなら大丈夫でしょう。一応、一列縦隊で進みましょう。ラング、後を追って」


「アイアイマム!」




「艦長、シンリー艦の飛行データを取り寄せました 」


「どんな感じ?」

 艦橋のスクリーンにシンリー艦の機動が表示される。


「最初は通路の真ん中を奇麗になぞってますね 」

 曲がっている道も奇麗に道沿いに飛んでいる様子が見て取れる。

 壁は船のセンサーで取得したものの様だ。進むにしたがって壁が見える様子が分かる。


「今はこの道を後追いしているのよね?」


「はい。 ですので、道が変わらない限り安全だと思います 」


 しばらく順調に飛んでいたかと思うと……

「あっ!」

 シンリー艦が、壁の方に急に近づく。


「あ、危ない!」

「うぁ!」

 タマミちゃんとラングも叫ぶ。


「シールドの境界面を軽く次元迷路の壁面に当てています。 おそらくですが、感覚とのずれを調整しているのでしょう 」


「危なくはないの?」


「危険は危険なのですが……実際に危険があるかといわれると微妙なラインですね。 子供が壁を触りながら歩いているのを見て、危ないと思うか? と言ったらどうです? 」


「普通ね……」


「俺もよくやったなあ」 とラング。

「私は手が汚れるからあんまり……」 とタマミちゃん。


「次元迷路も子供の散歩感覚ですか……」 とミルアさん。


「もちろん通常の軍規では違反となる行為ですが、シンリーの能力が確かなものであることも証明されましたね 」


「そうね、有能なのは分かったけど、勝手に行ったのはよくないわね。戻ったら、お仕置きね!」


【ヒェ!】


「あと艦長、このままの速度だと到着は明日の朝になりそうです。 本日はお休みなさいますか? 」


「あら、もうそんな時間? じゃあ、今日は解散! 夕ご飯にしましょ!」


【はーい!】




「みんな、おはよう!」


【おはようございます!】


 今日はエンジュに起こされて早めの朝食も済ませた。

 地上組は艦橋でスタンバイ状態、海洋組は工作艦で先行中だ。

 もう少しで次元迷路を抜けられるだろうとのこと。


「ラング、現状報告よろしく」


「はい、艦長。本艦隊は、シンリー組が乗った工作艦の後方を速度150cで移動中です。ドルファーズアークまでは30分以内に到着します」


「タマミちゃん、次元迷路のマップはどんな感じ?」


「はい。通ってきた道を表示します」

 ディプレイに穴あきリンゴの透視図が表示され、中に通ったルートが表示される。

 そんなに行ったり来たりや、戻されるような道もなく、迷路というほど複雑ではない様子が見て取れる。

 とは言え、マップなしでは速度も出せないだろう。シンリーには感謝だ。


「シンリー組と通信は出来る?」


「はい。 今なら通信可能です。 繋ぎます 」


「シンリー聞こえる?」


『あ、艦長、さっきはゴメンナサイ』

 ちょっと意外だけど、素直に謝れるのね。それなら、さらっと流しましょうか。


「謝罪は受け入れるわ。次は無しにしてね。それから、ドルファーズアークに着いてもいきなり接近しちゃだめよ。防衛装置が稼働している可能性もあるんだからね」


『あっ……分かりましたわ。実はもう少しで到着です。この後どうしましょうか?』

 シンリー組は寝てないのか……あれ、食事はとっているのかな?


「エンジュ、どうしたらいいと思う?」


「減速して通常空間に出ましょう。 まずは一度集合して、ミーティングするのがよろしいかと思います 」


「そうね……シンリー、見通しのいいところに来たらワープから出ましょう。それから休息と、必要なら食事もとってね。……ミルアさん、ドルファーズアークとの通信をお願いしていいですか? 最初は連邦の関係者として接した方がいいと思うのよね」


「え、私ですか? できるかな……」

 ミルアさんが少しモジモジしている。


「大丈夫、大丈夫。できるだけ刺激したくないので、柔らか目の対応をお願いね」


「了解しました。頑張ります」




「みんな、まずはお疲れ様。シンリーとボルグもお疲れ様でした」


『はい。昨日は先走ってすいませんでした』

『私も、止められず申し訳ありませんでした』


「私もベテランではないけど、おばば様に任されているからには責任がありますからね。今後は気をつけてくれればいいわ。……さて、シンリーの特技でここまではスムーズにこれたわね。ラング、状況を教えてもらえる?」


「はい、艦長。本艦隊は隊列を組みなおし、通常空間を速度10.0で移動中です。ドルファーズアークまでは20分弱です。現在の予定だと目の前に停止するコースです」


「このまま目の前まで行くわけにもいかないわよね? タマミちゃん、通信を試してみて」


「艦長、その前に隠蔽状態を解除しておいた方がいいと思います。突然チャイムをならしても姿が見えないのでは警戒されてしまいませんか……ね?」

 タマミちゃんの懸念も最もだ。

 まずはこちら側から礼を尽くさないとね。


「いい案ね。まずは隠蔽を解除しましょう。とりあえず工作艦1隻だけの方が無難かしらね」


「それがいいと思います。工作艦を別艦隊として分離……完了。隠蔽を解除します」

 タマミちゃんの手が滑るようにコンソール上を動く。


「OK。まずはそれで相手の反応を観ましょう」


「工作艦の隠蔽を解除しました。ドルファーズアークに……反応ありません」


「そうしたら通信を試してみましょうか。ミルアさん、連邦の依頼で来た感でお願いできるかしら。請負者としては私が出るわ」


「わかりました。やってみます」

 ミルアさんが、両手を握り気合を入れる。


「じゃあ、タマミちゃん回線オープンよろしく」


「はい。回線繋ぎます……出ませんね……」


「寝てるのかしら?」

 ここまで来て、この肩透かしはないわぁ……


「とりあえずパッシブスキャンでドルファーズアークの状態を調べてみましょう 」


「そうね。じゃあ、エンジュとタマミちゃんでちょっと調べてみて頂戴」


「「了解」」


 この間に、ドゥーボーン氏の事を少し聞いておこう。


「シンリーとボルグはドゥーボーン氏を見たことはあるのよね?」


『『はい』ただ、昔すぎてあまり覚えておりませんわ……』

 確かドゥーボーン氏が星を離れたのは35年前だったか……

 長寿な彼らとしても、小さい子供時代だったと聞いている。


『大柄な叔父さんという印象ですが、おそらくは今の自分と同じくらいかと思います。』

 なるほど、とりあえずボルグさん位の大きさと思ってていいかしらね。


「艦長。ドルファーズアークのスキャン結果が出ました。色々とボロボロのようですが、一番重要なのは、大型生物の有鼓動シグナルが一体も出ませんでした」


「えぇえ! 居ないの?」


「はい。……もしくは亡くなっているか……? どうでしょうエンジュ先生」


「そうですね。 緊急事態とみてアクティブスキャンをしてみてもいいかもしれませんね 」


「そうね。じゃ、アクティブスキャンで」


「はい。アクティブスキャンを実施します。……ドルファーズアークに反応なし。……ドゥーボーン氏と思われる大型生物を見つけました。……生命反応……ありません」


 亡くなってしまったのか……

 状況を確認する為にも、近くで見てみたい。


「そう……エンジュ、転送は可能?」


「はい。 念のため存在確率ジャンプを使用した方がいいと思います 」


「じゃあ、タマミちゃん存在確率ジャンプでドゥーボーン氏を収容して。医務室がいいかしらね」


「了解しました。ドゥーボーン氏をロック。存在確率ジャンプ準備完了しました」


「やって頂戴。エンジュ、収容したら容態を確認してもらえる?」


「了解しました 」


「私は医務室に行ってくるわ。シンリーとボルグはどうする?」

 ドゥーボーン氏の状態がどうなっているか分からないので、見に行くのはとりあえず関係者だけに絞っておこう。


『一緒に行ってもよろしいでしょうか?』

『私もお供します』


「みんなはドルファーズアークを調べておいて頂戴。危険なことはしなくていいからね。すぐ戻るわ」


【了解!】




「それで、ドゥーボーン氏の状態は?」

 水球の中に浮いているドゥーボーン氏は、静かに眠っている様に見える。

 ボルグに比べると少しやせている印象を受ける。


「詳細は分かりませんが、亡くなって数日です。 大病の痕跡はありませんでした。 老衰と考えていいかと思います 」


「そう……先日会ったスグ後かしらね……黙祷しましょう」

 通じないかとも思ったが、全員が静かに祈りを行った。


『同胞のために、丁寧にありがとうございます。彼は老人といえる年齢ですが、老衰で死亡するほどの年齢でもありません。きっと星を離れてからの長旅では、彼なりの苦労もあったのでしょう。彼の遺体は、このままドルファ星まで運んでもらっても、よろしいでしょうか?』


「えぇ。大丈夫よ」


『私も、色々と言いたいこともありましたが、すべては大いなる海の御心に返しましょう。結果的には、彼がユメさんに働きかけて、ドルファ星が救われたんですものね……ドゥーボーンにはちゃんと感謝しなきゃいけないわね……良くやってくれました、そして本当にありがとうございました』


『そうだな……長い間お疲れ様でした。安らかにお休みください』


 二人が、ドゥーボーン氏に向かって目を瞑り、頭を静かに下げる。

 私ももう一度黙祷を行い、静かな時間が流れる。


「それじゃ、艦橋に戻りましょうか。次はアークを何とかしなくちゃね」


『『はい』』

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