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058 - ドルファ星到着

「ワープアウト座標確認。ワープアウト5分前です。ワープアウト後の座標はドルファ星まで6光分の距離になりまス」


「到着予定ポイント周辺に危険物および艦船様人工物ありません。また、本艦に反応する物体及びシグナルもありません」


「ワープアウト後は光速の10%、このままの速度で移動すれば1時間でドルファ星に到着となりまス」


「ここまでは順調ね。生命体の分布も確定できたかしら?」


「はい。 どの種が知的生命体かはまだ確定できていませんが、およそ10kg以上の生命体に関してはその位置と数が判明しています。 ただ、困ったことに、多くの生命体の活動が非常に弱く、生きているか死んでいるかは判然としません 」


「そう……それは大変ね。早く何とかしてあげましょう。手順・・・いえ、作戦を実行するわよ! 作戦名は惑星(テラサージカル)手術(オペレーション)よ!」


「ぉお、今回はなんかちょっとカッコいい」

「ちなみにどういう意味なんですか?」

 ぉ、今回は、ラングとタマミちゃんの受けがいい。


「普通は惑星改造(テラフォーミング)を使うんだけど、今回は生命がいる惑星を改造するのだもの、生き物が生きたまま完了させるといったら手術でしょう?」


「まぁそこで言い直す人も少ないとは思いますが、今回のミッション名としては適切かもしれませんね 」

 ちょっとエンジュがあきれているが気にしない。


「とにかく、作戦はさっき決めた通りよ! みんな準備はいい?」


【アイアイマム!】




「ワープアウトまで5、4、3、2、1、0 ワープアウトしました。ワープフィールド消滅、機関正常でス」


「ドルファ星周辺のパッシブスキャンを実行します。防衛反応、および警告反応ありません。続いて、生命体の詳細スキャンを開始します。個別分解開始。行動解析開始します」

 タマミちゃんの進化がすごいなぁ……

 手が凄い速さで動いている……


「人工太陽の詳細スキャンを開始します。構造解析……開始。構成物質……同定開始。軌道……安定。公転周期……安定。光度……変化なし。通信反応もありません。あ、無指向性の警告ビーコンを受信しました」

 ミルアさんが人工太陽の状態を並列処理で確認していく。流石の手際だ。

 人工太陽の担当はミルアさんかな。


「警告の内容は分かる?」


「はい。スクリーンに出しますね」


『当宙域はガルーダ帝国の管理下にあり、侵入および当宙域内のいかなる物体の接収もこれを許可しない。 本警告を受信した者は直ちにその進路を反転し、可及的速やかに当領域から離脱せよ。 指示に従わぬ場合は帝国法10章18条3項2号に従って攻撃を行う。 』


「穏やかじゃないわね。エンジュ、あれは帝国の物ってことでいいのよね?」


「そうですね。 比較的マイルドな接近警告です。 警告の形式から見ても軍の物ではありません。 参照法からして資源省の管轄物でしょうかね 」

 近づいたら攻撃するぞ! って脅しておいてマイルドなのね……


「それで、どうすればいいかしら?」


「軍事強制プロトコル通信で一発です。 自閉モードにしている理由も、おおかた軍に介入されたくないからでしょう 」

 こっちはこっちで、過激だな……

 まぁ、他に手が無いのも事実だし、いっか。


「じゃあ、やっちゃって頂戴」


「了解しました。 軍事強制プロトコル通信を開始します。 応答ありました。 機能掌握中……完了。 人工太陽の全状態および機能の掌握を完了しました 」

 おぉ、あっという間に乗っ取り完了か?


『本施設に介入するものに警告する。 本施設は帝国法によって保護されており、理由の無い干渉は重罪である。 速やかに回線を切断し本施設を元の状態に戻すことを要求する。 本施設は第6銀河政府、資源省、通達第80805864号によって建立され、資源省未開惑星課戦争被害室が管理を行っている。 本施設はこの星に対する軍の被害を救済するのが目的であり、これ以上の軍による被害発生は許容できない。 本施設にアクセスするものは事前に資源省に規程の書類を提出することを求める。 本施設に対する介入は、帝国法10章18条1項1号に違反しており…… 』


 苦情がいつまでも止まらない。軽く手を振って止めてもらう。


「これは?」

 全機能を掌握しているんじゃなかったけ? という意味を込めて聞いてみる。


「遅効性の警告メッセージ(嫌味)です…… 警告機能も停止しました 」


「まぁ私たちは直すのが目的だからね。ささっとやっちゃいましょう」


「あ、人工太陽の中が見えるようになりました。故障個所3か所、機能不全12か所、燃料不足警告が出ています」

 機能掌握したことで、ミルアさんのコンソールに情報が出るようになったようだ。


「燃料不足は予想通りね。燃料補給は人工太陽に着いてから?」


「はい。 人工太陽の背面ハッチを開放して直接投入します。 燃料の仕様は帝国標準に準拠していますので運搬、搬入に関してはすべて自動でも問題ありません 」


「故障と機能不全は?」


「故障は、メモリーバンクの劣化と、エネルギーパイプラインの破損、マテリアルディスペンサーの機能不全ですね。 メモリーバンクは経年劣化によって機密情報メモリ領域に欠損が発生しています。 マテリアルディスペンサーの機能不全はエネルギーパイプラインの破損によるものだと推定されます。 どちらも人工太陽の主機能に対しては影響ありません。 機能不全の方は、メモリーバンクと通信機、信号通信系に出ていますね。 故障しているメモリーバンクの影響で一部のデータに不整合が発生しているのと、通信機の方は呼びかけに応答がないことで通信機の機能に問題があると判断しているようです 」


「機密情報が失われているのはちょっと痛いかしら?」


「大した情報では無いと思います。 失われたのは航海ログと初期の運用データですね。 あと一部通信データも読めなくなっているようです 」


「そう…… 運用データは残っているのね?」


「4600年分の運用データは残っています。 解析すればドルファ星シミュレータの精度が上がりそうです 」


「後はなんだっけ? ……通信機か。問題あるの?」


「全くありません。 現在もその通信機を使って通信を行っています。 相手が出ないのは単純に通信相手が存在しないからですね 」


「あー……」

 そりゃ、旧帝国政府は何千年も前に滅んでいるわけで……出るわけもないわね……


「取り敢えず、人工太陽は問題なしだな!」

「話す相手が誰もいないって寂しいですね……」


「やっぱり、メモリーバンクは5千年は持たないのね……」

 ミルアさんが大事なことを言った気がするぞ……これはちょっと気になる。


「どうゆうこと?」


「あぁ、帝国の遺物は今でも発見されることがあるのですが、メモリーバンクは壊れているのが普通なんですよ。なので当時の日誌や記録、マテリアルディスペンサーのデータはほとんど残っていません。幸いハードウェア系のメモリーバンクは記録方式が違うので今でも問題なく動いていますが、もし5千年もたなかったとしたら、この銀河の文明レベルは一気に惑星規模になってしまったでしょうね」


「そうなの?」


「補足させていただきますと、マテリアルディスペンサーのホログラムメモリーバンクの保証期間は100年で、一般メモリーバンクは500年、ハードウェア用は1500年です。 ですので、そこから先はいつ壊れてもおかしくないのです。 そもそも普段であればそんな年月使うはずもなく、買い替えやメンテナンス等によって…… …… …… 」


 そこからの話は長かったが、要は帝国の技術が悪いんじゃなくて、仕様(そういうもの)です。 と、言いたかったようだ。

 ちなみに長期使用が前提の場合は、メンテナンスによってメモリーバンクは交換されるし、データもリフレッシュするのが普通だそうだ。

 アルクタクトが全機能を維持しているのは “死んでいた” 遺跡だからではなく、ちゃんとメンテナンスが行われていたからだと力強く説明してくれた。



「人工太陽はメンテナンスが出来なくなってどれくらい経つの?」


「およそ1500年前に故障が発生したようですね。 修理計画もまともに設定されていない杜撰な仕事です。 これだから内務管轄は…… …… …… 」

 うん、昔色々あったんだな…… 


「とりあえず、人工太陽の方は必要な機器をメンテナンスして、燃料補給を行いましょう。あとはもう少し長期稼働に対応できるように、改造できることがあったらやってみましょう」


「了解しました 」


「あ、私にやらせてもらっていいですか?」

 ぉ、ミルアさんがやる気だ。


「じゃ、お願いしようかしらね。エンジュと相談してバンバンやっちゃって頂戴」


「了解です、艦長! 人工太陽に対するメンテナンスおよびメンテナンス改良計画の策定を実施します!」

 ミルアさんの敬礼がとても様になっていてカッコイイ! さすが、軍隊経験者は違うね!


「さて、次は生命体の方ね」


「はい。 まず大きなところで、知的生命体が判明しました。 こちらの種族の様です 」


 スクリーンに立体表示されたのはパステルカラーのイルカ……?だ。

 縮尺を見ると地球のイルカと同じ位、3mよりも少し小さい個体が表示されている。何故に水色とピンク?


「種族名、彩海豚族。 知的生命体ですが、文明レベルは3-2。 言語能力を獲得しており、精神投射能力(テレパシー)を多くの個体が有しています 」


「ちょ、ちょっと待って。ドルファさんは人型だったわよね? まぁこっちの方が海洋生物っぽいけど……」


「ドルファさんはアンドロイドまたは完全な遠隔操作ロボットでしたよ。 見た目にあまり意味はありません 」


「えー! そーなの! 知ってたなら先に言ってよ!」

 言われてみればぎこちない動きもあった気がするが、老人ぽいと言えば老人ぽくもあり、全く気が付かなかった……


「申し訳ありません。 見た目にはあまりこだわらないと思いましたので…… 」


「で、イルカ型で、テレパシーを備えていると?」


「はい。 純粋に生命体としてVoid空間にアクセスできるようです。 精神文明レベルが2に達しているため帝国も保護の対象にしたようですね 」

 なにやら凄い種族の様だ。


「会話は可能なの?」


「はい。 人工太陽のメモリーバンクに翻訳データベースが残っています。 通常会話もテレパシーを通した会話も問題ありません 」


「ここからでも?」


「さすがに、この距離からでは無理です。 彼らの出力では届きません 」


「なるほどね。それで彼らの個体数は?」


「5万2千頭前後だと推定されます 」


「はっきりしない理由は?」


「彼らのほとんどが冬眠状態で、そのうちの5%は非常に生命反応が小さい状態です。 おそらくですが、冬眠から目覚めることができない個体が一定数あると思われます 」

 それはそれで可哀想だな……


「何とかできない?」


「手間暇を掛ければ、それに応じて救える個体は増えると思います。 全部収容して治療するのは、残念ながら現実的ではありませんね 」


「そう……他の生命体は?」


「位置および頭数の把握は完了しています 」


 ある程度は出たとこ勝負ね。


「よし! じゃあ、お昼を食べて作戦スタートと行きますか!」


【アイアイマム!】

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