SS - ステーション長の胃が痛い一日【後編】
今回はグルンフィルステーション長の視点となります。
終わった…… 命繋がったなぁ……
それはそうと…… ユメって女怖ぇ……
途中から女房より怖くて、気が付かないうちに敬語になっちまったぜ……
問いかけに答えずに微笑んでるとかマジこえぇ…… よほど自信があるか、修羅場を潜ってなければあんな境地に達しないだろう…… 動揺もほとんど見えなかったしな…… あれは絶対見た目で判断したら命がいくつあっても足りないタイプだ。
とりあえず、俺もステーションも全部無事!
丸く収まった!
よくやった俺!
今回の件は連邦を救ったといってもいいね!
……と、最後の “山の主” は惜しかったな…… まさか俺らの伝説の酒のレプリカを持っているとはなぁ…… なにも目の前で消さなくてもいいのになぁ…… どんな香りなのかなぁ…… 絶対旨いよなぁ……
あ、こんなことをしている場合じゃないな。会談の内容を忘れないうちに残して置かなくては…… 彼女らの目的はいまいち掴み切れなかったが、基本的には旧帝国の船に乗っているということで間違いなさそうだ。先日、旧首都星で起こった事件に関係していることも言質を取ったしな。
そして彼らはエネルギーは豊富にあり、リアクターを持っていることも確実で、さらにはリアクター複製技術を持っていると…… これは超特大の極秘情報だ。連邦にとってはまさにビッグニュースだが……
これはこれで、流し方を間違えるとこのステーションが戦場になるか、俺の首が飛ぶなぁ…… はぁ、厄介な話だ……
リアクター……俺も一個欲しいなぁ……
後はなんだっけ…… 彼らには恒星間移動許可IDを発行して…… エネルギーパックと交換したんだな……
これでステーションの財政状況はだいぶ改善されるはずだ。連邦への上納も増えるがそこは仕方がない。
財政状況と言えば各種修理が滞っていたはずだ、この際一気に直してしまおう。
エネルギーの方は、ラルフに任せておけば万事問題ないはずだ。後で進捗を聞こう。
そういえば一つ気になる単語があったな……「人界に出る時」……有人惑星に降りることを、彼女はそう表現した。
それではまるで人ではないかの様にもとれる。これはただの翻訳の綾なのか、それとも ”とんでもない” 存在なのか……
いや、関係ないな……銀河外から来た生命体で、旧帝国の要塞を持っている時点で神と変わらん。
連邦の技術では見つけることも出来ず、どこでも自由に移動できるとも言っていたしな。
話していた内容を全部信じるわけではないが、彼女らの足取りは全くつかめていないのも事実だしな。
交渉して感じた印象は、老獪とまでは言わないが、冷静で用意周到。かと思うと脇が甘い時もあり人臭い。
高圧的な態度も要求もなく、感情スペクトルに尖った部分も無し。なにより経済文明がベースにあるのがありがたい。
略奪系とか支配系じゃなくてほんとによかった……
とりあえず、”気さくな神様” ……はやりすぎか、”気さくな上司” として接するのがちょうどいいところだろう。
そうそう、会談の中で影は薄かったがルミアさんは彼らの仲間になったと言っていたな。上手く情報が取れるといいが…… コンタクトを取るのは憚られるな。逆にこちらの手の内はかなり流れると考えていいだろう……
やりにくくなるか、円滑に進むか微妙なところだが、とりあえず友好的という見立てに間違いはなかった。
今後もこの方針で行こう。敵対は絶対に無しだ!
後は、もっと影が薄かったが二人の護衛が居たな…… 護衛としては優秀とも言えるか……
あの二人は旧首都星の住人じゃないか? 種族セットコードもN001だったしな。
おそらく成人前後の年齢だと思うな…… あとでラルフに確認してもらおう。
護衛の片方が ”少年” ……だったな。メールはここだけは誤報だったか。まぁこの程度の誤差なら十分ありがたいと言える範囲だ。ヤンの奴に会うことがあったら一杯奢ろう。
あー、兎に角疲れた、あの酒…… “山の主” を飲めば疲れも吹き飛びそうだが、無いものは仕方がない。今日は秘蔵の “森の主” で一杯やろう。生きてればこそ、酒も飲めるってもんだ。
あ、そうだ。
ライオネル・ジンからも話聞かないとな……
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