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042 - 小惑星帯で一泊

 グルンフィルステーション脱出から2時間弱で、目的の恒星系外縁部まで来た。

 クルマのナビで言えば「目的地周辺です」といったところかな。

 そろそろ作業場所を場所を決めよう。


「もう着いたんですか? 確か5光年先でしたよね?」

 部屋にいたミルアさんが艦長室に戻ってきた。

 エンジュが声を掛けたのだろう。


「そうね。とりあえず今は恒星系外縁部よ。観測結果はやはり無人ということだから、近場の小惑星帯までワープで移動中ね」


「5光年を2時間……マジですか……」

 なにやらブツブツ言っているがスルーだ。


「ここで、エムニウムコアの取り出し作業をするんだっけ?」 とラング。

「確か希少物質なんでしたよね?」 とタマミちゃん。


「そうね。まぁ作業自体はエンジュが行ってくれるから我々は見ているだけかしら? エンジュ、何かできることはある?」


「そうですね。 肝試しがしたければ、止めませんよ。 あと、廃墟探索の趣味がおありならば…… 」


「どっちも遠慮しておくわ……」


「今日はもうおなか一杯だゾ」

「怖いのはいいでつ……」


「廃墟って、ちょっと見て見たくなりません?」

 おっと、ここに伏兵がいた……

 臆病そうなミルアさんに、そんな趣味があるとは……


「母艦クラスの残骸ですから、見どころは沢山ありますよっ。 ミルアさんのご先祖も居たりして…… 」


「ぇ。それはちょっと……遠慮しようかな……」


「とりあえず、詳細スキャンを実行させてください。 その後、危険が無くて時間がある時で、いかがですか? 」

 あれ、なんか探検する方向になってる?


「今回は時間が無いから次の機会にしましょう。もう夕飯も近いし、明日はまたステーションよ!」


【アイアイマム!】「アイマム!」

 少し遅れたミルアさんも含めて、実体組はホッとしている。

 もしかしたら、エンジュは演習に使えるとか、考えているのかもしれないな……




「艦長、目的地に到着しました。ワープアウト後の速度は10.0でス」

「周辺に危険物および艦船様人工物ありません。また、本艦に反応する物体及びシグナルもありません」


「さて、それじゃ通常空間に戻るわよ。エンジュ、何か気を付けることはある?」


「周辺に危険はありませんので、特には。 残骸を出すときには重力遮蔽空間に出してもらえると、より周囲から気が付かれにくくなります 」


「重力遮蔽空間はどこ?」


「高速巡洋艦と工作艦に囲まれた範囲と考えていただければ問題ありません。戦艦にぶつけない程度離して、横に出してもらえば大丈夫です。 あ、一応小惑星帯ですから細かい岩石にも注意してくださいね」


 ぅ。そんな器用にできるかな……?


「外見える?」


「そうですね、全天スクリーンホロルームを使って見てはどうでしょうか 」

 艦橋に移動してもいいかなと思っていたが、なにやら新しい機能が出てきたので成り行きに任せよう。軽く頷いて合図する。


ポーン 『 ホロルーム「天体観測作戦室」を開始します。 』


 艦長室が足元から黒く塗りつぶされていく……が、よく見ると白く輝く点や赤い点がある。あれは、星か。

 視界の水平線には、大小様々な岩や何かの破片のようなものが散らばっていて、頭の上には無数の星が瞬いている。視覚的にはとても綺麗だ。

 目を凝らすと戦艦や高速巡洋艦が見える。

 横に目を向けると、工作艦も見つけることが出来た。


「まるで、宇宙に立っているみたいな臨場感ですね~」

 ミルアさんが、まさに今言おうとしていたことを言ってくれる。


「前に遠足で行った場所と同じ感じだな」

「そうね。でも何かが違うわね……」


「人工的なものがちらほら見えるからじゃない?」

 板状の物や、棒状のものが塊から突き出ているのが見える。どう見ても人工物だろう。


「あ~、そうかもしれないですね……ちょっと汚く見える……のかな」

「だれかが捨てたのかな?」


「その可能性もありますが、普通に考えると戦闘の結果ですね。 この恒星系では、人工物の破片がかなり多くあります。 いつ、誰が、と言ったところまでは分かりませんが 」


 みんなは星を見たり、大きめの岩石を探したりしている。

 自分の目で見えるからなのか距離感の把握がしやすい……気がする。


 さて、収納から取り出してみようか?

 なんだっけ?

≪取り出し≫ 

 よし、「残骸」が入っている。

 これを選択して…… 

 あれ?

 戦艦の横辺りに置きたいが移動させることができない…… 

 これは物が干渉しているときの挙動だったかな……?


 色々やっていると、映像の上で取り出そうとしたのが悪かったのが「分かる」。

 映像の上での操作を実空間に投影するイメージを持つと、視界に残骸のサイズが赤い立体として表示されるようになった。映像を通して実空間に取り出すには一工夫いるらしい。


 とりあえず出せそうなので、戦艦の近くに動かしたり、離したりしてみる。時折、漂っている岩石等に当たってギクシャクした動きになったりもする。試行錯誤の末、納得の位置にセットすることができた。


 さて、≪実行≫っと。


「うぁ」「あ」「えぇぇ!」


 しまった。一声かけてから実行すればよかった。

 三者三葉の驚き方で、目の前に現れた残骸を見る。


「と、突然現れましたけど! 幽霊船ですか?」

 ミルアさんがビビッてエンジュにしがみついている。

 さっき、エンジュが脅かすから……

 でも確かに、一辺6 kmもある破片なので宇宙船に見えなくもない……


「収納空間から取り出しただけよ」


「さらっと、当たり前のように、よくわからない技術の名前を言わないでください!」

 ミルアさんがエンジュにしがみついたまま、叫んでいる。


「まぁまぁ、落ち着いて。とりあえずエンジュ後はよろしく。終わったら、残骸はまたしまっておくから」


「了解しました。 少々お待ちください 」

 エンジュが、残骸の方に向き直り、仮想コンソールを表示して作業を始める。

 エンジュとしては、必要の無いパフォーマンスな気はするが、雰囲気作りなのかな?


 ミルアさんが少し落ち着いて、エンジュの横に立つ。

 そして興味深そうに、エンジュの仮想コンソールを覗き込みながら尋ねる。


「エンジュさん、すごいですね。この船ってどれくらい「収納」できるんですか?」


「これは、この船の機能ではありませんよ。 艦長の能力です 」


「ぇ」

 ギギギと音がしそうな感じでこっちを見るミルアさん……


「人……ですか?」


「人よ! 生身よ! ……たぶん」

 自分で言っていて不安になってしまった……不覚。

 ミルアさんがラングとタマミちゃんの方を見る。


「たぶん……」

「おそらくは……」


 わーん。


「一応テクノロジーの恩恵のようですよ。 我々の物より進んでいるだけで 」


 エンジュまで一応とかつけてくるよ~。

 わーん。


 ……程無くして、エムニウムコアの切り離し作業は終わった。

 取り出されたエムニウムコアはユークレアスに、残骸は再び私の収納に戻った。


「さぁ夕飯にしましょう。なんかずっと食べてばっかりな感じね」


「美味しいお肉は正義です」「です」


「美味しいお野菜、楽しみです!」

 ウキウキのミルアさんがいるとそれだけでテーブルが華やぐね。




「それじゃあ、今日はもう寝ましょうか。ミルアさんはさっきの部屋を使ってね。わからないことがあったら、エンジュは呼べば出てくるから」


「分かりました。それではユメさん、おやすみなさい」


「お休み、ミルアさん」

「オヤスミ~」

「オヤスミナサイ」

「お休みなさいませ 」

 私に続いて、3人が代わる代わるミルアさんに挨拶を済ませる。


「ラングとタマミちゃんもまた明日。エンジュさん何かあればお願いします。では、失礼します」

 足取り軽くミルアさんが自室に戻っていく。毎日お風呂に入れるのが嬉しいらしい。連邦船ではエネルギーの無駄遣いと言われてしまうとか……

 お湯なんて船を動かすエネルギーに比べたら大したことないはずなのに……

 あぁ、そういえば昔ビニール袋を法律で禁止した国があったけど似たようなものか。


「さて、私たちも寝る準備をしましょうか!」


「「はーい」」

 ミルアさんを送った後は、いつもと同じように個別にお風呂に入り、寝る準備をして、みんなで眠る。


 もふもふ。


 …………


 …… 


「艦長、ご相談があります 」

 寝ている所をエンジュに軽くゆすり起こされる。


「ん?」


「コネクトでお願いできますか? 」


「分かったわ。≪コネクト≫」


《ミルアさんの船に通信が入りました。 ミルアさんの個人端末に転送してもよろしいですか?》


《えぇ。いいわよ》


《一応念のために申し上げておきますが、通信は機密通信です 》

 一瞬で意識が覚醒する。内容は、昼間の脱走に関する話題か、ワープ事故から繋がる陰謀か…… 友人知人となら何の問題もないが…… そんなことは無いだろう。


《……相手は連邦ということかしら?》


《おそらく 》


《そう。ありがとう。とりあえずそのままでいいわ》


《かしこまりました。 ごゆっくりお休みください 》


 明日、彼女から話が出ることを期待しよう……


 …………


 ……

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