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003 - SF!?

 いつもの朝にも似た感覚で意識が浮上する。

 顔に当たる光を感じ、すぐには目が開けられない。

 目を開けるために手を顔の前に翳し、ゆっくりと目を開けていく。

 目に入ってくるのは、どこまでも青い空と輝く太陽。

 頬には温かい風が当たり、その風には花の香だろうか、少し甘い独特な香りが鼻腔を通り抜ける。


 ゆっくりと体を起こし、周りを見回してみる。


「草原……? 気持ちのいい風……」

 おろした手からは、芝生に似た植物の感触を伝えてくる。

 同時に着ている服も目に映る。

 上着が白の長袖で、下は膝上の赤いスカートの様だ。巫女服といえば印象が近いが、本物を知っているわけでもないので細かい違いは分からない。ただ、素材は綿だろうか……? 肌触りがとても良い……


 周りに見える花は見たこともないが、とりあえず周囲の安全を確保するのが先決だ。

 立ち上がってさらに周囲を確認してみると、少し離れたところに人工的なオブジェが見える。


「装備ってやつが置いてあるのかしら……」

 立ち上がって、歩こうとして戸惑う。体が妙に軽い。


「む、胸が無い……!」

 そういえば私は成長が遅かった……14歳の時はぺったんこに限りなく近かった気がする。

 その後、挽回するかのようにグングン成長し、最終的にはEカップまで育ったので本人的にはすっかり満足して完全に忘れていた。


「ま、いっか。どうせまた成長するなら」

 と、体が軽いのを胸のせいにしてみたが、どうにもまだ違和感が残る。


「身体強化はチートメニューには入ってなかったと思うんだけどなぁ……」

 その場でジャンプしてみると、明らかに高い。とは言っても1mくらいか。


「うげっ」

 そして、落ちる感覚はもっと変だった。明らかに地球にいたときより遅い。


「重力が違うのか! キター異世界! こんな形で実感することになるとは……」

 2、3度ジャンプし、感覚を現実に合わせていく。ついでに、歩いたり、軽く走ったりしながら、先ほど確認したオブジェの方に向かう。

 オブジェは数本の柱と、中央に円形の台座があり、その中心に何かが立っているように見える。


「これは、伝説の剣のパターンでしょうかね~」

 少しずつ環境にも慣れて、余裕が出てきた。そんな軽口も叩いてみる。

 が、もう少し近づくと、そのシルエットが剣ではない事が分かってくる。


「これは……杖?」

 台座を一回りして、正面と思われる位置から杖に歩みよる。

 杖は全体的に銀色の金属でできており、持ち手の部分は木の様な質感だ。先端には精巧な鳥の彫像があしらわれ、目は閉じられているが今にも動き出しそうだ。

 見るからに高そう……もとい、高性能アイテムのようだ。


「これが、初期装備の杖ね!」

 気前のいい神様に感謝しつつ、持ち手の部分を握り軽く力を入れると、杖は音もなく持ちあがる。


シャラン


 鳥の羽が一度開いて、閉じ軽やかな音色を立てる。続いて鳥の眼が開く。青い宝石の様な輝きがこっちを覗き込んだような気がした。


ポーン  『 【外見特徴抽出完了。外見特例認証完了。錫杖保持者を階級[特権提督(スーパーアドミラル)]として登録します。現錫杖保持者は艦内先任将校として艦長となります】 』 


「え……アドミラル? ……艦長? どこに船が……?」

 周りを見回してみても、先ほどと変わらない神殿風の遺跡と草原が広がっている。


ッピ 『 錫杖保持者の生体データを収集中…… 』 

ッピ 『 【錫杖保持者内にユニバーサル・シリアル・インターフェースの存在を検出。最優先プロトコルに個人文化パッケージの存在を確認。インストール中……】 』 


 杖が話しているようにも聞こえるが、後ろから聞こえたようにも感じる。杖の声なのだろうか……? まだ見えない船のものだろうか……?


ポーン 『 【環境変更 [黒犬族 低重力環境]から[地球 標準環境]に変更します】 』


っずし!

 っと、音がしたような気がするほど、一気に体が重くなる。今まで軽かった分なのか、地球にいた時より体が重い気がする。

 って、環境変更で重力が変わるってどんな世界よ!


ッピ 『 【言語パッケージをマージ中……完了。言語間主要単語誤差0.867。意味誤差0.936。文化類似度0.689。通常会話に於いて意思の第一種過誤及び、第二種過誤の確率は許容範囲内です】 』


ポーン 『 【言語変更 [黒犬族語]から[日本語]に変更します】 』


ッピ 『 初めまして艦長。まずは艦長のお名前を登録してください 』


 あ、言葉が日本語に変わった。これまでの音声はよくわからない音に、意味だけ乗せられていた感じだったものが、だいぶ自然な日本語になった。相当優秀な人口知能ゴーレムなのだろう。


「か、神無月 結命……です」


ポーン  『 個人名 [神無月 結命]を階級[特権提督(スーパーアドミラル)]として再登録します 』 


「あの……、あなたは?」


ッピ 『 私は、当艦のメインコンピュータ。当艦に対して指示があるときはご命令ください 』

 え、っちょ。コンピュータって言ったよ。どんな世界観?


「船が見えないんだけど、埋まっているのからしら?」


ッピ 『 いいえ。艦長が立っている場所は当艦の中です 』

 改めて見回してみるが、見渡す限り草原が続いているし、抜けるような青空も人工物には見えない。


「ここは、船の中……なの?」


ッピ 『 はい、現在艦長は航宙艦「アルクタクト」の内部、リアルプロジェクションインターフェース「神託の巫女」の環境中に居ます 』

 よくわからないが、船の中らしい。それなら、船の外はどうなっているのだろう?


「船の外は……?」


ッピ 『 宇宙です 』

 っは?


「あ、あなたは宇宙船? この船に関して教えてちょうだい」


ッピ 『 はい、当艦は第12世代型 銀河統治政務艦のプロトタイプをベースに改良された実験艦アルクタクトです 』


 っえ? 宇宙とか銀河とかって……SF?


「えぇぇぇ、異世界がSFだなんて聞いてないよぉぉおおぉぉぉぉ」

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