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010 - ボロボロのミッションレザルト

「それじゃあ、改めてよろしくね。ラング君にタマミちゃん」

 ラング君が頷いた後、少し困った顔で聞いてくる。


「えっと、お二人はなんと呼べば……?」


「あぁ、ごめんなさいね。自己紹介もまだだったわね。私はこの艦の艦長の "カンナヅキ ユメ" よ」


「ぇ!? 艦長? 神託の巫女じゃないの……ですか?」

 あぁ、確かに今まで船の事は何も言ってなかったわね。

 そして、私も "神託の巫女" というのが気になる。


「エンジュ。神託の巫女ってなんなの? 何度か耳にした気がするけど……」


「神託の巫女は、帝国歴14515年に生まれた科学者で、そして有名な予言者です。 彼女は若くして、相転移物理学の確立に貢献し、いくつかの基礎実験を成功させたといわれています。 しかしその後、理由は不明ですが、宗教に傾倒し、いくつかの予言を残してこの世を去りました。 その予言の的中率から、敬意をこめて「神託の巫女」と呼ばれています。 そして、その最後の予言が、艦長、あなたの出現です 」


「つまり、私は神託の巫女ではないわけね?」


「いえ、それがそうでもなく…… 予言では「巫女が現れる」となっておりますので、「神託の巫女が予言した巫女」で略して「神託の巫女」と呼ばれることがあるようです 」


 なるほど、「神の依頼を受けし者」は「神に仕えし者」に含まれるのか……は分からないけど、まぁ細かいことはいいか。


「なんかややっこしいのね……というわけで、どうやら私は「神託の巫女」で、艦長の ”カンナヅキ ユメ” よ。それから、彼女はエンジュファ。私の秘書……でいいんだっけ?」


「はい艦長 」


「彼女はこの船のAIだから、突然消えても驚かなくていいわよ」


「“えーあい" って何ですか?」 とタマミちゃん。

 そうか、彼らの概念に無いものは、どうやっても伝わらないか。


「ん~。ロボットは分かる? 機械でできた動くものよ。それのすごく高度なもの、と思って頂戴」


「ぇ。こんなに自然なのに……」


「エンジュ、一回消えてみて」


ポーン 『 艦内セクレタリー[エンジュファ]を終了します。 』


 エンジュが光の粒となって消える。

 ご丁寧に、笑顔で手を振りながら消えて行った。


「ほんとに消えちゃった……」 とラング。

「おばけじゃないのよね……」 とタマミちゃん。


「コンピュータ。エンジュを出して」


ポーン 『 艦内セクレタリー[エンジュファ]を開始します。 』


「私は、お化けじゃありませんよっ! 」


 終了していたはずなのに、その間のことを知っているとは……エンジュ恐ろしい子……

 そして、エンジュの勢いに押された、黒犬族の二人は、コクコクとうなずいている。


「あ、それから、コンピュータ。あなたも名前を持って頂戴。"コンピュータ" じゃ、味気ないし、ちょっと呼びにくいわ」


ッピ 『 了解しました。艦長、良い名前があればつけてください。 』


「そうねぇ……それじゃ、あなたは "アリス" よ」


ッピ 『 了解しました。よい名をありがとうございます。 』


「彼女?……は、この船のメインコンピュータよ。お願いがあるときは "アリス" と呼び掛けてね」


ッピ 『 私は女性形で構いません。あと、黒犬族の二名の方の階級を決定してください。 』


「うーん。エンジュ何がいいかしら?」


「船のシステムを操作してもらっても困るので、”ゲスト” がいいんじゃないでしょうか? 」


「そうね。じゃそれで。貴方達もそれでいいかしら? 船のことを勉強したら、できることを増やしてあげるわ」


「「分かりました。艦長!」」

 笑顔で頷いている。素直ないい子たちだ。


「プライベートな時は名前で呼んでよね!」


「「分かりました。ユメ様?」」

 二人で顔を傾げている……カワイイ。


「もうすこし砕けてもいいのよ」


「「ユメさん?」」

 おぉぅ、首がどこまで曲がるのよ。

 90度近くまで行くとちょっと怖い。犬なら普通なのか……?


「まぁ呼びやすいように呼んで頂戴。あと何か質問はあるかしら?」


「あの、治療の方は……」

 タマミちゃんが、恐る恐るといった感じで聞いてくる。

 まぁ彼女からしたら、これが目当てで船に残ったようなものだしね。気になるのも当然だ。


「エンジュ。いつ始められる?」


「そうですね。 とりあえず、最初の丸一週間はデータの取得に充てたいと思います。 ですので、本日は測定用のマイクロマシンの注射ですかね。 あとは、詳細なスキャンデータを取らせてください。 問題なければこの後すぐでも大丈夫ですよ 」


「時間はどれくらい掛かる?」


「二人で2時間くらいでしょうか…… 」


「という事らしいんだけど、どうする? すぐ始める?」

 改めて二人に話を振る。


「一応全体的な流れを聞いてもいいですか?」

 エンジュに視線で合図を送り、タマミちゃんからの質問に答えてもらう。


「治療の流れは、3つの工程を平行で進めていきます。 1つ目は健康な状態の記録。 2つ目はあなた達版の黒犬族身体シミュレータの開発。 3つ目は実際の治療。 今回はサンプルが少ないので、実際の遺伝子治療は慎重に行いたいと思います。 最初の治療は1か月後を想定していますが、終わりは数年後となると思います 」


「途中で治療を打ち切った場合は、どうなりますか?」

 最後まで治療できないパターンまで考えるとは、賢い。


「どうもなりません……というのは、治療が原因ですぐに悪化したりはしないと思います。 運が良ければそのまま寿命まで生きられます。 ただし、逆に運が悪ければ、その数年後に何かを発症して亡くなる可能性も否定できません 」


「分かりました。ありがとうございます」

「どうゆうことだ? タマミ?」

「ちょっとずつ治すから、長く掛かる……ってことですかね?」


「はい。 その通りです 」


「そっかー。ばばーんとやっちゃうわけにはいかないのか?」

 ラング君が、手を頭の後ろで組んで能天気な意見を言う。


「そのまま、ばばーんと死んじゃっても、文句を言わないのであればっ! 」


 エンジュの無邪気な顔が逆に怖い……

 そして、ラング君の顔が引きつっている……


「いぇ、ゆっくりでお願いします……」


「それじゃ、いいかしらね? エンジュ。彼らを医務室に……って医務室でいいのよね?」

 3人がそれぞれ頷くのを確認してから、彼らをエンジュに任せた。


「そうですね。 では行ってきます。 艦長はどうされますか? 」


「そうね、私は艦長室にいるわ。あとよろしく~」




 艦長室に戻ってきて、リラクゼーション機能全開の椅子に座る。

 一息つきたいところだけど、後始末がたんまり残っているはずだ……

 彼らには癒されるが、その前の出来ごとを思い出すと、心臓が締め付けられるような感覚と、冷や汗が出る感覚が、またぶりかえてしてくる。


「アリス。エンジュは二重起動できるのかしら?」


ッピ 『 可能です。エンジュを呼び出しますか? 』


「一応確認なんだけど、向こうのエンジュに影響は出る?」


ッピ 『 出ないようにすることも可能です。処理能力的なものはご心配ありません。 』


「エンジュ的には、どういう状態になるの?」


ッピ 『 2か所に同時に存在し、同時に対応します。また片方で起きたことを逆側に即座に伝えることができます。作戦行動中などでは、2000万体のエンジュを同時に運用することも、想定されています。 』


 さすがは帝国……軍事国家おそるべし……って軍事国家だったかどうかは、まだ分からないか……


「分かったわ。ありがとう。それじゃ、呼び出して頂戴」

 椅子の上で姿勢を正し、エンジュを呼び出す。


ポーン 『 艦内セクレタリー[エンジュファ]を開始します。 』


「お呼びですか? 艦長 」

 いつものエンジュが現れる。


「悪いわね。彼らの様子はどう?」


「すこし、緊張はしているみたいですが、落ち着いています。 タマミルの方が、病気に関してはよく勉強していたみたいですね。 少しずつ質問しています 」


「彼らを不安にさせない程度に、対応してあげて頂戴」


「お任せください。 それを確認するために……? 」


「いいえ、呼んだのは後処理の件よ。ミッションコンプリートしたからね! 戦果報告会と行きましょう!」


「そんなに明るく言っても、損害報告が軽くなることはありませんよ…… 」


「分かってるわよ。すごいんでしょ……損害、というか破損」


「そうですね、途方に暮れるくらいには…… まぁいずれにしても結果をまとめましょうか 」


「そうね、お願いするわ。すぐできる?」


「はい、可能です。 現在進行形のものもまだいくつかありますが、途中経過ということで報告します。 何から話しますか? 」


「そうね……まずは外の話からにしましょ。大きな問題はないでしょ?」


「そうですね。 では隕石の方から。 相転移砲による隕石の迎撃は、99.9999%の質量を蒸発または粉砕し、恒星側に吹き散らすことに成功しました。 残りの破片は、流星として惑星に落下するか、惑星の周回軌道に残ります。 大きな破片はありませんので、地上に被害が出ることはないでしょう。 これによって危機を脱した第3惑星ですが、現在、SOS信号は停波しています。 ちなみに、33分前に同一の天文台と思われる施設から、感謝を述べるメッセージが複数回発信されています 」


「まずは、ミッションコンプリートってところね。ほかに何もなければ最高なんだけど……惑星からのSOSに対しては、ちゃんと対応できたということでいいのかしら?」


「はい…… ただ…… 」


「ん? どうしたの?」


「惑星上では、少なからぬ混乱が起きているようです。 彼らの放送を解析した限りでは…… “白い光の柱”、“柱に貫かれる月”、“天文台のSOS”、“赤き月”等のワードが含まれるニュースが繰り返し流れています。 事実確認も困難なようですね…… 」


「まぁそっちは何とかなるでしょ」


「次に相転移砲の事後空間です。 こちらも射程内外含めてすべて通常空間に復帰したことを確認しました 」


「一時はどうなるかと思ったけど、無事に済んでよかったわ」


「では、次に連邦艦です。 本艦を見失ったと思われる後、呼び掛けをリピート状態にしていましたが、先ほど送信を停止しました。 その後恒星系外に向けて亜空間通信を行ったと思われます 」


「内容は分かる?」


量子チューブ(機密)通信ですので内容や密度は確認できません 」


「まぁ、宇宙のお尋ね者になっちゃったと思った方が無難かしらね……」


「だいぶ、やらかしましたからね~ 」


「後ろ指さされるようなことはしていないのだから、胸を張っていきましょう! でも見つからないように……」


「どんな状態ですか……それ 」


「いいのよ。気分の問題よ! 次! つぎ!」


「以上が外界のまとめになります。 次は本艦の状態です。 覚悟してくださいね 」


「ぅ」

 AIが覚悟しろというのだから、相当悪いのだろう……

 一応移動したり、治療したり、生活環境が悪いわけでもないから、最悪の状態というわけではないだろう。

 "冷たい方程式" が出てこないことを祈ろう……


「まずは、大まかな設備の破損状況からです。 量が多いのでディスプレイにも出しますね。

 大型相転移炉 内部隔壁に亀裂 フィールド発生装置に異常 使用不能

 時空円環ゲート ゲート本体の一部が消失 使用不能

 ベクトル推進機関 20基破損 

 主機関 21機中15機大破、5機破損

 相転移砲経路に亀裂 抑制フィールド発生装置に異常 」


 壁面のディスプレイに破損状況とおおよその位置が表示されていく……


「次に本艦の機能ですが、

 相転移砲     使用不能

 時空侵略兵器   使用不能

 時間シールド   効率低下

 重力シールド   効率低下

 ベクトルシールド 効率低下

 加減速      能力低下

 ジャンプ航法   使用不可

 ワープ航法    使用不可

 艦隊製造工場   使用不可

 艦船製造こう……」

「ちょっとまって、ワープもジャンプも不可能なの!?」


「はい。 ジャンプは相転移炉から供給されるmagitoron粒子が必要ですし、ワープは出力不足です 」


 終わった…… 

 実感があるわけではないが、光の速度以下では宇宙は広すぎる。

 隣の星系に行くだけで、おばあちゃんになっちゃうよ……


「この星系から出られないのかしら……?」


「そこまで悲観する状況ではありませんが、このままでは厳しいですね。 そこで修理計画になります 」


「そうよ! 修理よ! どこまで治せるの?」


「本来はドックに入りたいところですが、ないものをネダッテも仕方がありません…… 本艦の自己修復能力のみで修理した場合の、修理完了までの時間は455年±94年です 」


「おばあちゃん通り越して骨になっちゃうわよ!」


「あ、えっと、さっきのは全部自力でしかも完全修復を目指した場合です。 時空円環ゲートの修理がとても重いので、これを修理しなければ32年と2か月。 相転移炉の修理をしなければ、3年と6か月で修理完了となります 」


 最初に455年と聞いていると短く感じるけど、それでも3年半だって十分に長い……それにそんなにゆっくりしていていいのかもよくわからない……修理を待ってたら滅亡しました、では笑えない……


「自力以外の方法は、何かあるの?」


「当てがあるわけではありませんが、エネルギーの供給源があれば修復時間を短縮することが可能です。 あと、調達は難しいとは思いますが、エムニウムや、magitoron粒子も不足しています 」


「ちなみにエネルギーの供給源は、何がありえるの?」


「交渉や、規格の問題をクリアすれば、他の艦船や宇宙ステーション等から供給してもらうことも可能です。 ほかには、支援設備を手に入れることも、有力な修理時間短縮の手段になります 」


「支援設備?」


「はい。 本艦の建造企画時に、同時に設計された支援機器です。 技術レベルの不足で、艦として成立しなかったものが支援設備。 本艦と行動を共にできるのが、支援艦と呼ばれています 」


 なんじゃそりゃ。

 持ち運べないんじゃ、その場で使う「使い切りアイテム」みたいな装備なのか?


「その支援設備の中に、修理に役立つものがあるのね?」


「はい。 そうなのですが…… 今の状態では、そこに行くことも難しいかと…… 」


「やっぱり、移動がネックか……ちなみにワープできるようになるのは?」


「主機関が5機稼働すれば、ワープが可能になります。 時間にして1年と5か月後です 」


「1年半か……とりあえず、そこを短くする相談はまた今度にしましょう。今はもう修理を始めてるの?」


「はい。 まだ破損状況の詳細は不明な部分もありますが、応急修理を開始しています。 本格的な修理開始は20時間後からとなります 」


「結構掛かるのね」


「はい。 現在本艦は第3惑星から星系外へ向けて20Gで加速移動中です。 光速の10%に達した後、慣性移動に移行し、余剰エネルギーで修理を開始します 」


 星系外に移動か……連邦艦からは距離を取りたいし、この星系の中で活動するのは無謀よね……

 でも満身創痍で星系を離れるのも不安ね……


「この星系でできることは、もうないかしら?」


「そうですね…… 連邦艦が居なければ主星からエネルギーを取り出すことも可能ですが、そんなことをすればバレるでしょうね…… 他の惑星にしても同様です。 彼らの目がどれくらい良いかわかりませんが、この星系内でエネルギー採取や物質の移動を行えば見つかると思います。 幸い、本艦の資源ストレージは94%以上を維持しておりますので、このまま星系を離れても問題はないと思います 」


「おっけ~。じゃ進路そのままで。星系外に出るのは、どれくらい掛かるの?」


「およそ4日です 」


 わりと普通な時間単位が出てきて安心する。

 地球のテクノロジーじゃ、星系外に出るのにン十年単位だったはずだ。


「星系外で行く当てはあるの?」


「現時点で有力な目的地はありません。 とりあえず修理が最優先ですから、最寄りの恒星系までが、2.1光年、そのほぼ直線上の10.5光年先にもう一つ。 後は、30.3光年先に宇宙ステーションの様なものがあります 」


「最寄りの恒星系で修理は出来そうなの?」


「そうですね…… 主系列星ですが赤色矮星なので、取り出せるエネルギーもそこそこです…… が、到着するまでにはワープ可能になっているはずなので、実際にそこで修理するかどうかは微妙ですね 」


「宇宙ステーションまで行ければ交渉とかできるかしらね?」


「そちらもどんな種族がいるかわかりませんから、これも一種の賭けですね…… 」


「あとは、何か我慢すると、修理にプラスになることはある?」


「magitoron粒子の補給が大きなネックですので、これらの使用は控えて頂けると助かります。 艦長が知っている中では存在確率ジャンプがそれに当たります。 ご不便でしょうが、艦内移動はムーバをご利用いただけると助かります 」


「艦内移動だけでいいの?」


「他の船や、惑星上陸への移動は、他の危険も含みますので、存在確率ジャンプは使ったほうがいいかと思います。 必要なのは生命体だけですので、使用量も僅かですし 」


「物の転送に、magitoron粒子は使わないのね?」


「はい。 色々細かい制約もありますが、基本的には 」


「それなら、大した問題はないわね。まぁとりあえず、当面の目標は修理しながら、星系外に向けて移動ね」


「艦長。 一つ質問があるのですがよろしいですか? 」


「ん? なぁに?」


「艦長の持っているテクノロジーに関して、です。 先ほどのトラブルの最中に2回ほど何かされましたよね? 」


 ギクッ…… 

 聞かれてもよくわからないから答えられないのよね…… 正直に言っちゃおうかしらね……


「そうね。魔法よ、魔法構造強化と隠蔽の魔法を使ったのよ!」


 明るく、当たり前のノリで言ってみる。


「魔法ですか…… そうですねっ。 魔法みたいなものですね。 エムニウムは魔法金属と呼ばれることもありますし、magitoron粒子はMP(Magitoron Particle)と呼ばれることもありますものねっ。 艦長のその右手に埋め込まれているのってエムニウム結晶ですよね。 初めて見ました! 」


 何か納得されてしまった。魔法金属とかMPとか当たり前の世界なのか?


「それにしても艦長のMP保有量と瞬間出力は凄まじいですね。 やっぱりそのエムニウム結晶に蓄えているんですよね…… どうやって作ったんですか? 」


 さすがに、神様にもらいました、とは言えないかな……


「私もよくは分からないのよ。ごめんなさいね……それにもうほとんど空っぽよ」


 右手の紋章に意識を向けると、エムニウム結晶と呼ばれたそれが浮かび上がってくる。最初は透き通るような青色だったが、今は銀白色に変化している。


「まぁ持ってるからって、作り方まで知っている人はそんなにいないですよね…… でも、艦長の個人文化パッケージからは、技術レベルが違いすぎる様な…… うーん…… 」


 ヤバい……あまり突っ込まれないうちに方向性を変えてみよう……


「あなたたちの船ではどうやってMPを蓄えているの?」


「MPを保存するにはエムニウムにためるしかありません。 本艦では、船体中央の相転移炉からのmagitoron粒子放射を、多重殻構造のエムニウム合金船体で吸収し、利用しています。 ちなみに本艦のサイズの理由の半分は、このエムニウム合金の吸収効率の悪さと、貯蔵効率の低さによります。 もし艦長のエムニウム結晶と同じものが作れるようになれば、劇的な小型化が可能なはずです。 その右手の結晶と、本艦の保有MPがほぼ同じって酷くないですか? 」


「そういわれてもねぇ……そうだ、ついでだからエムニウムと魔法の関係に関しても教えてもらえない?」


「そこは艦長の方が詳しいんじゃないですか? 」


「まぁ、あなたたちの技術の中で説明するとどうなるか? を聞いてみたいのよ」


「そうですね…… うまく説明できるかわかりませんが、簡単に説明するとですね…… エムニウムは魔法金属と呼ばれる通り、magitoron粒子を媒介にして、魔法の様な効果を引き出せる物質です。 ここまでは大丈夫ですか? 」


「えぇ。今の場合は、エムニウムが紋章であり杖ね、magitoron粒子がマジックポイント……かしらね」


「……先に進みましょう。 エムニウムは15次元振動が可能な物質であるといわれています。 このエムニウムに特定の4次元振動を持ったmagitornを注入することで、エムニウムを特定の15次元振動状態にすることができます。 大丈夫ですか? 」


「だいぶ厳しいわ…… まぁ紋章をプログラムできるということかしら?」


「そんな理解で大丈夫です。 ……先に進みましょう。 エムニウムのこの15次元振動の組み合わせと、空間干渉による影響力の投射が魔法と言える効果につながります。 本艦が使用する量子クローキングデバイス(かくれみの)ではVoid次元を励起し通常空間との量子結合を弱めて、Tube次元で本艦の周囲を接続し、周辺空間との3次元接続を低下させることで周囲との相互作用を減少させるものです 」


「あー、前半は分かったけど、例がもう駄目だわ…… また今度、ゆっくり教えて頂戴」


 とりあえず、魔法と言っても種も仕掛けもあることが分かった。それに、プログラム次第で性能が変わるという事なら納得できる。なにせ自分のエムニウム結晶も、プログラムも神様謹製だ。


「説明が下手ですみません…… 艦長なら12年の学習プログラムを圧縮して完了すれば理解できると思います 」


 ぅ。それはツライ……でもいずれちゃんと理解しないとダメかもしれない。


「そんなことないわよ。大まかな流れは解ったから! ありがとうね」


「いえいえ、こちらもまた準備しておきます 」


「あとは…… 何かあったかしら?」


「そうですね…… ありますよっ! 」

 エンジュが満面の笑みを浮かべる。

 人より少し犬に近い顔が、人懐っこく笑うのはとてもカワイイ……


「ぇ。なに?」


「本艦は本日3名の乗員をお迎えすることができました。 実に5150年ぶりのことです。 そして艦長。 あなたこそは私たちの希望。 永らく予言という曖昧な目的で作り出された私たちを封印から解き、導いてくださる存在。 これからもどうぞ宜しくお願い致します 」


ッピ 『 私からも感謝を。そして何なりとご命令を。 』


 そうか、彼女らは5千年以上も私を『待って』いたのか……コンピュータに『不安』や『寂しさ』があるかは分からないけど、彼女らにはそれを感じるだけの知性がある。そして、こう言ってくれるのは『喜び』があるのだろうか……ならば返す言葉は決まってる!


「私からもよろしくお願いするわ。これから先、どこまでも私たちは一緒よ!」

 今話の終盤の、エムニウムと魔法の関係に関しての(くだり)はSF的なフレーバーテキストです。

読み飛ばして頂いても物語の理解に影響はありません。安心して次へお進みください。


主機関の破損状況が分かりにくかったので表現を変えました。


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