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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第八幕 無要運命デートor LINE
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第八幕 無要運命デートor LINE 6

八幕六話です、よろしくお願いします。

「ダブルデート……ね」


 拷問か? と、要は隣で頭を捻る飛鳥を見ながら思った。

 飛鳥がつぼみから、生徒会室でダブルデートの提案を受けた火曜日。その夜だった。

 なぜ、要の部屋で二人が顔を突き合わせてうんうん唸っているかというと、つぼみはダブルデートしようと提案だけして、そのプランを二人に丸投げしたからである。


 まあ、それも男の甲斐性。腕の見せ所だと受け入れた兄弟だったが、さて、どうしたものか。


 そもそもなぜつぼみがそのような提案をしたのか。

 おそらく、睦美さんとの共謀ではないか? なにやら飛鳥と睦美さんは少し問題を抱えているようだから、二人丸めて丸っと実情を把握するためのつぼみの口実こそ、ダブルデートという案なのではないか。

 というのが要の考察で、実際それは正鵠を射ている。


 要としては、弟のために道化になるというのは構わないのだが、つぼみの掌の上で踊るというのには少し業腹だった。


 自分たちは何も。キスすらしていないというのに、他のカップルに気を回すのは少し。少しだけど癪に触る。


 無論弟のためとあらばそれくらいの苛立ちは水に流せるが、どうにもモヤモヤしたものは残る。


「まさかお前とこんな話をするとはな」


 しかし、それとおなじくらい。弟と以前のように、以前とは違う話ができることを要は喜んでいた。


 絶対に、恋愛の話などすることはないと思っていた。どちらがつぼみと結ばれるにせよ、そのことで二人が腹を割って話すことはないだろう、と。それが、違う運命と出会い、こうしてそんな話に花を咲かせることができるというのは、なんとも嬉しい誤算だった。


「まったくだ」


 飛鳥は肩をすくめてから、卓に目を落とす。

 そこにはなんともアナログながら、プラン……というか向かう施設の候補が並べられている。


 遊園地とか水族館とかの定番から、家でゲームとかいったものまで書き揃えてあるが、その大半に大きく斜線が引かれている。


 というのも、三人は昔からずっと一緒だった。そのため、双方の両親にいろいろ連れて行ってもらったのだが、行き過ぎて飽きてきてしまっているのだ。


 おそらく睦美のためのダブルデート、ということになるのだろうが、だからとて自分たちをおざなりにするわけにもいかない。


「東武公は?」


 飛鳥が口に手を添えながら言った。東武公。正式には名を東武動物公園と言い、動物園のみならず遊園地も兼ねる、埼玉人なら一度は足を運んだことのある場だ。

 絶叫系が好きな要としては、木造ジェットコースターのレジーナなどはとてもそそられるものがある。


「睦美さんは動物好きなのか?」

「嫌いという話は聞いたことがない。道端の犬に手を振ってたりするし大丈夫と思う」

「ふむ。まあ金額的にも無難な案だよな」


 東武動物公園は、近過ぎて逆にそんなに行っていない。淀見家も蓮城家も親のバイタリティがとんでもなく、様々なレジャー施設に連れて行ってくれるが、そのせいで逆に近場に赴いたことがあんまりなかった。

 そういう意味でもうってつけと言えるか。


「よし。じゃあそうするか。アトラクションに疲れても動物見れるしな。ちなみに、絶叫系とかは?」


 訊ねるころには飛鳥はスマホを見ていて、


「問題ないらしい」


 との解答。


「オーケー、決まりだな」


 今は人気アニメとのコラボ期間でもあるようだから、そういった面でも楽しめるだろう。


「具体的なプランは……」

「それは相手の好みも加味した方がいいんじゃないか」


 飛鳥の提案を受ける。もっともなものだったから、とりあえず細部は後で詰めるとしよう。


「たしかに。そうだな」


 ふう。と一息つく。

 後、というのはまあ日を回ることになるだろう。今は夜の十時だし。


「悪いな、なんかこっちの都合に巻き込んだみたいで」

「気にするな、俺にとっても意義のあることだ」

「……そうか。ならいいんだ」


 流石に、キスも何もしていないことを今話す気にならなった要だが、それも含めて飛鳥は悟っているのだろう。


「お互いにとって。いい日になるといいな」

「するさ。必ずな」


 そうして、兄弟で拳を突き合わせると、飛鳥は自分の部屋に戻って行った。


「……はあ」


 弟を見送って。一つ、ため息を吐き、眉間に手を当てながら考える。

 要は、最近つぼみを理解できずにいる。いや、元々理解などできる人物ではないのだが、それにしても、だ。


 なぜ、つぼみは俺に告白したのだろう。


 そんな思考の迷路から、抜け出せずにいる。


 今だって別に悪いものではない。二人で一緒に出かけたりするのはとても楽しいし、デートの頻度だってそう低くない。学校では毎日顔を合わせて、すれ違えば手を振ったりする。

 そんな日々が、嫌なわけではない。


 ないが、その分その先を望む心も膨れ上がるのだ。


 今度のダブルデートが、そんな迷路を抜ける光明になればと、願うばかりだった。



 そして、時はあっという間にすぎ。

 ダブルデート、当日となる。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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