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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第八幕 無要運命デートor LINE
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第八幕 無要運命デートor LINE 1

ここから八幕。いろいろ動いていくと思うのでよろしくお願いします。

 あれから。

 ボクと華月が、一応の和解を経てから、二ヶ月が経過した。


 聖夜を前に、あらゆる恋人が浮き足立つ十二月。

 それはボクたちとて例外ではない。

 あれから二ヶ月を経て、我ながらボクたちは仲睦まじいことこの上ない。

 ボクの都合上、あんまり人前に出ることはないけど、きっと数少ない知り合いに見つかれば、苦虫を噛み潰したような顔にさせること請け合いだ。


 そんなボクたちは、今、一つの転換点を迎えようとしている。

 少年は男へ、少女は女へ、そんな変化を、迎えようとしている。

 大人とは何かと問われれば、いろいろな答えが返ってくることと思う。

 自立していること。成人していること。いろいろな答えがあると思うが、中には、その……経験をしていること。

 そんな事を答える者もあるだろう。


 つまりは、うん。ボクらは、そんな転換点を迎えようとしている。



 なんとなく、なんとなく。

 そろそろなのかなあ、とそわそわしてはいた。

 付き合って、二ヶ月。

 月の終わりには、クリスマスとか、あと他にもいろいろある月。


 今は、ボクの家、そのリビングで、夕飯を食べ終えてソファにいるところだ。

 今夜の献立は、ボクがいいところを見せたくて、手の込んだビーフストロガノフだった。そして、そんな肉肉しい味のする唇を、お互いに貪っている。


「ふっ……んむ……ん……」


 まるで、相手の全てを腹中に収めんとするかのように。自分の全てを相手に与えるように、歯も磨かずに激しく抱き合い、求め合う。

 二ヶ月もすると、キスをすれば舌が絡むようにもなる。甘美な唾液に脳が融けそうになる。

 歯を磨いた方が良いのはわかる。女の子だから、如何なる時でも、如何なる部分も可愛くいたい。飛鳥君の前でなら、尚更。

 けど、恋人だから。どんな時でも繋がっていたいとも思う。

 無論、付き合いたてだからなのだろうけど、なればこそ、この今を大事にしたかった。


 自分の存在を刻みつけたくて、遠慮も知らずに全力でお互いの背に手を回す。


 食い込みそうなほどに強く締め付けられるのが、なんだか嬉しい。


「……んむ、っぷは」


 長い長い口付けが一旦の終わりを見せ、少しばかり顔を離して相手の顔を見る。


 紅潮した頬、荒い息。

 蕩けるように熱い熱を湛えて、ひたとボクの瞳を見据える。

 そんな彼を、彼の瞳に映るボクの一切までが見えるほどに、ただ恍惚と見る。


 ああ、幸せだなあ。


 思わず破顔してしまう。


「えへへ」


 えへへ。内心と、口とがラグ無く同じ言葉を放つ。


「可愛い」

「……えへへ、もう一回、言って……?」


 言うと、素直じゃない飛鳥君は、言わなくても伝わるだろうとばかりにまたボクの唇を奪う。


 ……なんとも、馬鹿馬鹿しいほどに求め合うボクたちだけど、ここまでは、いつもと同じだ。


 具体的には、一月前から、ボクたちはこのように求め合っている。

 けど、ここまでだ。

 服を脱がすことも、胸や、その、下腹部とかに手を伸ばすことはお互いにない。


 それは、その先に一つの壁を感じていたこととか、それまでの関係がなんか変わってしまうんじゃないか、とか、いろんな考えがあってのことだったけど、とにかく、その先に、ボクたちは進まないでいた。


 けど、そろそろ、その時なんじゃないか。

 そんな空気は、ボクたちの間にあって。

 お互い、それを口に出すことはなかったけど、でもやっぱりそれはそろそろなんだと思っていた。


 だから。


 唇を重ね、背後に手を回したまま、ボクは後ろに倒れ込んだ。


 大きいソファだから、頭をぶつけたりとかはない。


 飛鳥君は驚いて、ボクに覆い被さる形のまま、唇を離してボクを見ている。


 きっと、飛鳥君の心臓も、ボクのそれと同じくらいにバクバクと高鳴っているに違いない。


 けど、飛鳥君は、そわそわと躊躇っている。


「……来ないの?」


 ほんとうにいいのか。


 そんな葛藤が巡っているのが、見て取れる。


「……睦美さん……」

「……いい、よ?」


 飛鳥君に負けないくらいに顔を赤くして、ボクはつぶやいた。でも……とごもる飛鳥君の胸元に、ボクは手を押し付けた。


 反射的にボクの手を見て、飛鳥君の目が見開かれる。

 そこに握られているのは、はいわゆる避妊具とか、ゴムとか言われるものだ。


 ボクが羞恥に悶え、店員さんの好奇の目線に耐えながらコンビニで買ったものだ。


「……いい、よ……?」


 と。そう言うと、箍が外れたというように。彼の手がボクのシャツの内側に滑り込んで来る。


 ……。

 そうして、ボクは。ボクたちは。きっと、最後まで及び、また一つ階段を登り。

 次のステップに至るのだ、と。

 その時まではそう思っていた。


 瞬間、ボクの脳裏に浮かんだのは、飛鳥君の顔ではなく。

 涙を浮かべて、ボクを犯す、華月の顔だった。


「……あ、ひ。……う、あ」


 こんなはずではなかった。


 飛鳥君の顔が怪訝そうに歪む。


 違う。そんな顔をさせたかったんじゃない。


 飛鳥君の瞳に映るボクは、恐怖に染まっていた。


 違うのに。そんな顔をしたいわけないのに。


 恥ずかしさとか、高揚感とかが、波のようにさっと引いていく。


 そうして、飛鳥君も、ボクから手を引いていく。


「あ、ま、やめ、ない、で」

「……無理しなくていいよ」


 飛鳥君は、穏やかに言ってくれるけど。

 その胸中が如何なものか。

 わからない。

 いや。

 それを察するだけの余裕が、ボクになかった。


「ごめんなさい……ごめん、なさい……」


 そういって、泣きじゃくるしかない。

 そんなボクを、優しく抱きしめて、背中をポンポン叩きながら、


「いいんだ、いいんだ。大丈夫。俺が性急だっただけだ。睦美さんは悪くない」


 そんなわけはない。そもそも誘ったのはボクなのだ。それなのに勝手に怯えて拒絶したボクに対して、飛鳥君はひたすら、宥めるように、背中を摩ったり、ポンポンと撫でていた。


読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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