幕間 5
幕間、その五です。
「……むぅ、どうして起こしてくれなかったの」
「あんまり気持ちよさそうだったものだから」
「むぅ」
現在、時計は十六時を数える。即ち、二時間くらい寝たいな、を大幅に超え、既に終わりを感じてしまうような時刻となっている。
欠伸混じりに布団をたたみながら、
「……変なことしてないよね」
「しようにもあの状態ではな」
「あ……うぅ」
あの状態というのは、ボクがガッチリ飛鳥君をホールドしてしまった上にスヤスヤだったせいでどこも動かせねえよ、ということだ。
うん、幸せでした、ほんとうに。
だからまあ、この恥じらいくらいは甘んじて受け入れよう。
……飛鳥君よりボクの方がブレーキぶっ壊れてるというのは、飛鳥君の目にははしたないように映るのだろうか。
と、ふと瞳を覗くと、ぷいと顔を逸らされる。……少なくとも、嫌がられているということは無さそうだ。
安堵しながら布団を片し終え、二人してちょこんと床に座る。
正確には、ちょこんと座る飛鳥君の上に、ちょこんと収まるようにボクがいた。
サメのクッションを抱えながら座る様は、なんだかマトリョーシカを連想させる。マトリョーシカ。なんだか、将来の子供、とかにまで発展していきそうなので、あわてて想像に蓋をする。続きは帰った後に存分に堪能するとしよう。
行き場をなくした飛鳥君の両手は、少し空を彷徨ってからボクのお腹の前で組まれた。
ちょっと恥ずかしいけど、さっきまでもっととんでもないことになってたのだし、それに言及するのも、恥ずかしさの風船を割るようなものだから、触れないでおく。
どうやら飛鳥君も同じようだ。
超えてはいけないライン、というか、性的なことに触れないようにしているのだろう。抱き締めるとかは、多分純粋に愛情表現なのだ。
ボクが寝ている時、胸とかお尻とか触ったりしないのは、そういうことなんだと思う。
「そういえば、何時まで居られるんだ?」
前に吉川に来た時と同じく、つぼみさんのお家に泊まることになっているから、少しくらい遅くても問題ない。
「つぼみさんは何時でもいいよって言ってたから……八時とかかな? あんまり遅くにお邪魔するのも悪いから」
「そうか」
「あ、もしかして寂しい?」
「……」
「ボクは、寂しいよ」
こういう時、女の子の方が甘えやすいのは得だなあと思う。男の子は意地とか色々ありそうだし。
ボクにはボクで意地もプライドもあるけど、こういう時に甘えるのを阻害するようなものではない。
「……そうだな。俺もだよ」
見なくてもわかる、穏やかな微笑を湛えて、お腹に回された手に力が籠った。
「……いい匂いだな」
「か、嗅がないでよ」
「……今のうちに睦美さん成分を補充しておく」
「……言い方ってものがあるよね? ……まあ、いいけどさ」
離れることを思うと寂しいのはボクも同じだから、されるがまま、飛鳥君に身を委ねた。
……寝過ごしたことを口惜しく思ったというのに、似たようなこのシチュに異を唱えたりすることはないまま、また二人で繋がって頬を突っついたり、飛鳥君に座ったまま飛鳥君の方に向き直って、今度はこっちが匂いを嗅いだりしていると、気がつけば、もう六時くらいになっていた。
高校生というのが、どれだけ馬鹿なのか、我ながらよくわかった。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
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次回でもよろしくお願いします。
次かその次で幕間終わります。
ずっとイチャイチャさせてるだけだと無限に書いてられそう。




