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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
幕間 番外お家デートLINE
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幕間 2

幕間、その二です、よろしくお願いします。

「……重くない……?」

「綿菓子みたいだ」

「中身の詰まってない女ってこと?」

「何を言えばいいんだじゃあ」


 そんな、照れ隠しに照れ隠しで返すような会話をしているのには、訳がある。

 今の俺たちがどんな状況か。その馬鹿げた実態はというと。


 俺は今、飲み物を取りに一階のリビングに降り、キッチンで二人分の飲み物を用意している。


 ……睦美さんを背負って。


 フニフニと柔らかな女の子の肢体が、絡みついている。腕は首に、足は胴に回されている。顔は背中の匂いを嗅いでたり、たまに首筋にフッと息を吹きかけていたりする。

 ……なにより、その柔らかな二つの膨らみが、惜しげなく背中に当てられている。服越しだというのにたしかな存在を主張する膨らみは、否が応にも俺の精神を刺激する。流石に、下着に包まれたその本当の柔らかさまでは知れないが、逆に下着の存在は強く感じる。そして、それは膨らみを感じることと同義だった。少なくとも、この馬鹿にとっては。


 あらためて、意識する。引きこもっていたとは思えないくらいにスタイルがいい。

 手足は程よくほっそりと長いのに、出るところはしっかり出ている。ひょいと持ち上がったその体躯は多分、つぼみより軽いだろう。まあ、それはつぼみの方が背が高いというのもあるだろうけど。


 などと口には出せないことを考えながら、コップに麦茶といちごオレを注いでいく。

 ……コポコポという音が、脳を刺激する。

 さて、恋人らしさとは、こういうことでいいのだろうか? ……まあ、胸の高鳴りはどうあっても事実。なら、らしさなどというのは些細な問題……というか、相手を思って互いにドギマギするならそれでいいのだ。


「しかし、突拍子もないことを言うよな、睦美さんも」


 ドギマギする心を隠すように平静を取り繕う俺に睦美さんは、


「飛鳥君がおっかなびっくりしてるからだよ」


 それはなんとも、耳が痛い言葉だった。思えば、手を繋いだ時も、ハグも、キスも、睦美さんの方からしてきたのだ。

 男らしからぬと批判されたとて、返す言葉もない。


 しかし、これからは、今までとは状況が異なる。俺も、少しは積極的になれるかもしれない。無理をする睦美さんも可愛いものだが、そればかりでは良くないだろう。


 とはいえ、たった今に於いては、とりあえずは部屋に戻るべし。

 が、言われっぱなしは癪だから少し悪戯をするとしよう。

 コップに飲み物を注ぎ終えると、少し爪先立ちになり、間髪入れずにかかとを床に下ろした。


「わ!?」


 突然のちいさな反撃に驚いた睦美さんが素っ頓狂な声を発する。

 と同時に、反射的にだろう、首と胴に回された腕や足に、更に力が込められた。


 ……いや、自明だった。少し考えればそうなることなんてわかってた。別に倒れたりすることはないが、睦美さんの体温をより強く感じる。

 その、膨らみも。


「物理的に黙らせるのは違うんじゃないかなと思います」


 むぅ、と抗議の声を上げる睦美さんだったが、その力が弱まることはない。

 睦美さんが意識していないわけはない。

 つまり、これはその。


「当ててんのよ、ってね」


 そう、今まさに睦美さんが口に出したようなシチュなのでは……?


「……」

「あ、飛鳥君……? 反応ないと、流石に恥ずかしいなあ、って」


 いやしかし、反応しろとはいうが。

 ……これもある意味では物理的に黙らせる、の一種ではないか。

 まさか、背中の感触について克明に語るわけにもいかない。


「むう。……はむ」


 フリーズする俺に、睦美さんが追撃する。


 ウダウダと内心で考えられる程度には一応の余裕があった俺だが、突然のこれは流石に、思考ごとをフリーズを余儀なくされる。


 耳たぶを、唇で挟まれた。


「えへへ、飛鳥君の味」


 ……これで、とりあえず部屋に戻ってから考えようとかいう俺の箍が壊れた。

 トレーを置き、スタスタソファまで向かい、一旦ソファに睦美さんを下ろし、睦美さんに向かい直す。


「あ、あれ、ごめんね、調子乗りすぎた……?」


 ワタワタと申し訳なさそうに身振り手振りしている睦美さんの脇が開いた瞬間を狙って、腕と横腹の間に腕を差し込み真正面から抱きしめた。


「あ、う。あ、飛鳥君……?」

「……戻りは、だっこにする」

「ええ!? ……え? あ、うん」


 一瞬驚いたけど、よく考えれば今まで同じくらいすごいことしてたよなあ。……え、ほんとにそうかな? みたいな思考が脳内で急速展開されているだろう睦美さんにお構いなく、そのまま睦美さんを抱え上げてキッチンに戻る。


 その間、睦美さんは結構大人しかったが、やはり抱きしめる腕にはかなり力がこもっていた。


「抵抗しないんだ」

「……驚いたけど、嬉しいよ。……飛鳥君からこういうことしてくれるの、あんまりなかったし」

「これからは多分、そんなこと、言わせないようになる」


 なんだかとんでもないことを口走る。けど、仕方がない。恋心。そんなものを手にして、平常心なんて保っていられるわけがなかったのだ。


「そ、そっか」

「睦美さんが悪いんだからな」

「……飛鳥君がボクを悪い子にさせたんだよ」


 ああ、もう。

 可愛い。まだ家に来て二時間くらいだというのに、どれだけ思わせるのだろう。可愛い。その天井を知らない愛らしさに、どう応えればいいのだろう。そんなことは、多分、考えるだけ無駄なことだったのだ。

 心の、赴くまま。それでいい。


 抱き抱える手に、力が籠った。

 そのまま、抱きしめ加減の駆け引きとかいうほんとうによくわからない駆け引きがしばらく続いた。

 一応の終戦を迎え、抱き抱える睦美さん越しに注いだコップを手に取り、一気にあおった。


 氷が、溶けて無くなっていた。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。


なにやってんだ、こいつら

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