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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
幕間 番外お家デートLINE
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幕間 1

七幕終わってから初めての土曜の話です、本当なら描写する予定なかったんですけど撮れ高ありそうなんで幕間として投稿することにします。多分そんなに長くはならないかな。


あとすみません、また目が痛いので今日の更新分結構少ないですが、明日追記するので許してください…



追記しました、よろしくお願いします。

「こ、ここ、ここ、だよね」

『場所は前から知っていたろう』


 つい、そんな言葉が溢れる朝十時。華月との和解が成ってから初めて迎える土曜日。

 ボクは、少し肌寒さの出てくる十月後半の陽気の元、呆然と立ち尽くし前を見る。

 

 眼前に聳え立つ一軒家は、当然、彼の家。彼というのは、彼氏ということだ、うん。


 ……彼氏。


 えへへ。そんな笑みが内心に生じ、口角を少しばかり釣り上げる。

 碌なことがなかったボクの人生に、突如訪れた春。愚物の輪郭を纏った真面目な青年。


 確かめるようにその名を内心で文字にする。

 蓮城 飛鳥。


 考えるだけでニヤニヤと側から見たら気色の悪い笑みが浮かぶ、大好きな人。


 そして、そんな彼の住まう家、その目の前に、ボクはいる訳だ。背後に構えるつぼみさんの家に泊まったことがボクはあるから、迷ったりはしなかった。迎えに来ることを飛鳥君は提案してくれたけど、リハビリのためだと断ったのは、惜しかったとちょっぴり後悔している。


 飛鳥君をして、虚無の町吉川。

 しかし、彼がいるならそれはどんな町よりも面白く、大切な場所だ。よくわからないなまずのマスコットも可愛く見えてくるというものである。


 バクン、バクンと胸が鳴る。心が高鳴る。

 いつか飛鳥君がボクの家に来る時、彼はインターフォンを押すのに時間を要し、その様をボクに観察されていたが、まったくもって気持ちのわかる話だった。


 というか、今実感している。


 早く会いたいのに、緊張して手が伸びない。引き篭もるのはボクの得意分野だけど、今はその時ではない。


『早くしろよ』


 マホちゃんに催促され、スマホをジッと睨め付けてから、二つほど深呼吸して、インターフォンに向き直り。


 ふと上を見やると。


 こちらを見下ろす、飛鳥君と目が合った。

 ……デジャヴだった。



「むぅ」


 プンスコむくれる睦美さんを自室に連れてから五分ほど経過している。

 現在、睦美さんは俺の部屋にあったサメのクッションを抱えてへたり込んでいる。真白の頬をプクーと膨らませてこちらを睨む様は、なんとも愛らしい。

 そんな睦美さんを前に、俺はベッドを背もたれにして胡座をかいている。


 普段通りに、とんでもなく可愛い彼女だが、彼女の過程を知るものとして、そのむくれた美貌と同等に目につくのは、衣服に黒の意匠があることだろう。……一つ困難を越えたのだと、視覚にも訴えてきている。

 そのために微力ながらも力を添えてきた身としては、感慨深いものがあった。


「ひどいよね、ボクで遊んでたんだ」

「まったくだ、以前の睦美さんにも聞かせてやりたいな」

「むぅ」

「それに、迎えに行っても良かったのに」

「リハビリだよ、これくらい一人でできないと」

「マホちゃんいるじゃん」

「むぅ、マホちゃんはアプリだからいいの」


 むくれる睦美さんを見て一頻り笑ってから、その衣服について触れてみる。


「似合ってるな、その服」

「……当然だよ」


 少し物憂げに睦美さんが答えた。

 当然という言葉に込められた万感の思いの全てを計ることは俺には叶わない。が、それでも、めでたいことだ。それは、わかる。

 

「さ、なにしよっか」


 睦美さんが、クッションで顔半分を隠しながら話題を変える。なんともソワソワしている様子。男子の部屋に入るのが初めて、的なアレだろう。

 それはなんとも光栄なことだが、リードできるほど経験に富んでいるわけではない。この部屋にきた女子というのは、つぼみを数えるのみであり、それはものの数ではないのだ。……だからと放っておく選択肢は、ないのだが。


 それと、多分そのソワソワには、我が家に来たことで、家の両親の存在を肌で感じたからというのもあるだろう。生憎今日家には誰も居ない。父母はそれぞれ仕事と買い物。兄はつぼみと、この何もない吉川を出て都会に繰り出した。

 多分、睦美さんが来ることを伝えれば母は出かけることはなかったろうが、買い物の後、ウキウキで岩盤浴に行くという母の後ろ髪を引くような真似は躊躇われた。いつも忙しなく動いている母の休養の邪魔をしてはいけない。……恥ずかしいからではない。


 そのため、今日睦美さんと両親が会うことはないわけだが、それでも。いやそれだからこそその存在を意識してしまうのかもしれない。


 いっそ、早く済ませてしまいたいものなのだ、そういうのは。気恥ずかしくて後回しにしてしまいたくても、そのソワソワを抱えたままで過ごす時間は、結局短い方がいい。そういうものだ。

 俺とて、母に声をかけておけばよかったと今になって思う。声をかけていたらかけていたで反対のことを思っていだかもしれないが。


「俺の部屋で遊ぶものというと……」


 まあ、考えていても仕方のない。せっかく共にいるのだし、付き合ってからの初デートなのだし、時間を無駄にするのは避けたい。

 初デート。なんとも甘美な響きだ。この愚物の愚骨を骨抜きして余りある。

 愚骨が消えて真人間になってしまうのではないかと錯覚するほどに甘い。

 と、甘さから目を背けるべく、我が自室に目を向ける。


 この俺のエデン足る聖域だ。女子の一人もてなすくらいはわけないだろうと、遊べるものを羅列していく。


「ゲーム、漫画。……トランプ……?」


 ……いや、男子の部屋などそんなものではあるだろうが、あらためて羅列するとなんだろう、ボキャブラリーの無さに絶望する。

 いっそ小話でも一席ぶってやろうか? と血迷った選択をする直前だった。


 睦美さんが、クッションを脇に置いて俺の本棚に飛びつき、そのまま一冊を手に取った。


「アルバムみようよ」

「……初手からアルバムなのか……?」

「目についたんだから、仕方ない」


 アルバムなんてやること尽きてから苦し紛れに開くものじゃないのか? いや、たしかに俺も睦美さんのアルバムに興味がないではないが、初手からアルバムに行くかと言われると……行くかもしれない。


「まあ、いいか」

「あれ、恥ずかしがったりしないんだ」

「俺の過去に恥ずべき物事などないよ」

「その物言いは、あとできっと悶絶する物事だと思うけどなあ」

「そうだ。つまりはまだその時ではない」

「なるほど、将来が楽しみだね」


 言いつつ、睦美さんがアルバムを開いた。小学校の卒業アルバムだ。


「うわあ、飛鳥君ちっちゃい! 可愛いね」

「……いくら俺が馬鹿だからって生命体として馬鹿げた在り方はしていないさ」

「そうかな? 産まれて初めて喋った言葉は馬鹿。手で歩き足で掴み、目で食べて口で見る。それくらい愉快な存在だと思うけど」

「それはつまりキスするのとこうして見ているのが同義な存在だと」

「……例えだよ、馬鹿」


 照れ隠しだろうが、ページを捲るスピードが少し上がった。笑ってから睦美さんによって、俺も懐かしき過去の日々を覗き込む。

 この頃の俺は儚いつぼみへの儚い恋心の出力法を馬鹿げた馬鹿に依存していたから、写真に写る俺というのは大抵奇行に走っている。羅列するとキリがないが、運動会の写真は大体紅白帽でウルトラマンの真似をしていた。


 ……そして、一線を超えたようなものがないのも、変わらない。とんでもないことをしでかしていたら、未来は変わっていたのだろうか。まあ、考えても詮無いことだし、辿り着いた現在はきっと最高のものだ。


 もう、そんな思考はするべきではない。

 眼前の存在こそ、俺の運命……というのは、前に否定したのだったか。

 好きな人、ずっと一緒にいたい人。……彼女。この俺ですら笑ってしまうほどに甘い響きこそ、睦美さんが俺へと投じる波紋なのだ。

 流れる時のように、不可逆の思いなのだ。


「つぼみさんとお兄さんと写ってるのばっかりだねえ」


 そんな俺の思考を知ってか知らずか、俺の小学校生活を一通りさらった睦美さんが言う。

 実際、あの頃。というか少し前まで、俺たち三人は常に側に居た。ほんとうに、飽きもせずに。


「ほんとにずっと一緒だったからなあ」

「ボクもそれくらい一緒にいられたらいいのに」

「妬いてるのか?」

「……そうかも」


 想定外の肯定と共に、睦美さんがもたれかかってくる。

 ドクン、と鼓動が高鳴った。


「だって、この飛鳥君。恋してる目、してるもん」


 アルバムを抱き抱えて、睦美さんが続ける。


「……それは、妬けるよ」

「今はその目で睦美さんを見てるよ」

「……なら、よし。……ダメだね。せっかく付き合ったのに、今までと同じようなやりとりしかしてないや」


 お互い、相手が自分のことを好きなことなんてわかってた。

 それ前提で、今まで俺たちは接してきた。だから、いざ付き合ってみても、境界がわからないのかもしれない。


 アルバムを本棚に戻した睦美さんが、俺に全身を向け、一つ可愛く咳払いをした。


 多分、思うことは一緒なのだろう。

 意識して恋人として接する。

 そうしなければ、壁は壊れない。


 そして、この上なく馬鹿みたいな案が、睦美さんから挙げられることになる。

 

 ノーモーションで睦美さんは全力で俺に抱きついて、そのまま言う。

 甘い匂い、甘い囁き。

 恋。それを、否応なく実感させるような、そんな言葉を。


「今日一日、ずっとくっついてよう」


分けての更新になってしまい、申し訳ありませんでした。

幕間ということで、なんか新しい試みになってますが、ついてきてもらえると嬉しいです。


イチャつきながらもちょっとしんみりするのがこの二人らしいですよね。

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