表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE
81/183

第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 13

七幕十三話です、よろしくお願いします。

 運命。その言葉は、俺と睦さんを繋ぐ縁だった。それだけに、その意味は重くのしかかる。今となってはその言葉への懐疑も浮かんでいるが、だとしても依然、いやそれはそれで大きな意味がある。

 その分だけ。この場も重い。

 向き合う運命。俺と彼女の宿命は。


 睦美さんの家……いや、天津家リビング。

 そのテーブルに、俺たちはついている。

 朝、俺はここにいた。にもかかわらず、まったく違う心持ちで、目の前の少女を見る。キッと厳しい表情で唇を噛む漆黒の妹。次いで、怯えながらも、ひたと目の前を見据える姉。


 テーブルの中央には、デカデカとフレンチトーストが置かれている。朝に食べたものと同じだが、時間が経った分卵液が染みていて美味くなっている。

 やはり、睦美さんの作るものは絶品だった。

 ……こんな状況でなければ、がっついていたのだろう。というか、この状況でフレンチトーストを用意する睦美さんの胆力はどうなっているのか。……いや、少しでも先延ばしにしたかったのだろうか。この卓に着くのを。


 依然その手は震えている。震えに震えて、俺の手を取っている。流石に、さっきみたいに腕を抱えられてはいないが。


 空気が重い。フレンチトーストが置かれてから一分ほど経ったが、俺がフレンチトーストの礼を言ったこと、それに手をつけた時のフォークが発した金属音。

 そして、我が心臓の鼓動。それが、この一分で俺の耳にしたものの全てだった。


 このままではいけない。

 空気を裂くように、俺が口を開こうとした時だった。


 華月が、数秒目を閉じ、開いてから俺に先んじて文字通りに口火を切る。


「何をしても無駄ですよ。まったく、困ったものですよ。ねえ、飛鳥さん」


 言いつつ、フォークをフレンチトーストに突き刺し、口に運び、やっぱり美味しいですね、などと加えて述べた。


「お兄ちゃん、じゃないのかよ」

「じゃありませんねえ、もう。ねえ、お姉ちゃん」


 ……なら〈お姉ちゃん〉、でもないのでは。思いはするが、指摘して良いことなど何もないし黙る。

 振られた睦美さんの手に力が籠り、俺の手を膝に寄せた。

 その睦美さんが、口を開いた。


「……ごめんね、華月」


 開口一番のそれに、華月はまた唇を噛み、


「何ですか、それ。お姉ちゃんが謝ることありませんよね」

「ボク、気付けなかった。華月が、どんな……」


 口だけでなく、目の方も緩んだか、俺の手に水滴が滴った。

 ……怖いのも、本心。けど、妹を思う気持ちも、本心なのだ。

 それを見て、華月が舌打ちした。


「馬鹿みたい。被害者が加害者に謝りますか。私がお姉ちゃんにしたことは許されるべきことではありませんよ」

「……許すとか、許さないとか。そんな簡単な問題じゃないよ! ボクたち、そんな風に切り捨てられるものじゃないでしょ!?」

「よく言う。あれから一切コンタクトなんて取ろうとしなかったくせに」

「……そ、れは……」


 睦美さんの顔に狼狽が見える。

 睦美さんの引け目。それは、妹を信じきれなかったことだ。一度酷いことをされたからと、理解を放棄したことだ。

 無論、それは誰にも責められることではない。……睦美さん、以外には。

 妹が自分の分まで身体を差し出して自分を守っていた。そのことに気づくことなく、妹を拒絶した。

 ……それは、姉足らんとして妹を多勢から庇うような睦美さんに、どんな思いを与えるのだろう。


 涙となって滴り落ちる彼女の心は、絶えず俺の手を濡らす。

 止まない雨はない。

 それを晴らすに、きっと目の前の存在は不可欠なのだ。

 だから。


「露悪的な物言いは止せよ」


 ひたと、目の前の深黒を見据えて言う。

 俺もこの場にいる意味は、睦美さんに手を貸すためだ。それは、手を繋ぐだけの置き物になるということでは、無論、ない。

 

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ