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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE
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第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 12

七幕十二話です、よろしくお願いします

 ……正直、ほんとうにその場にいるかは半信半疑だった。

 こうして肉眼で捉えても、やはりどうしても非現実感が伴う……と、そこまで考えて、ようやく少しわかった。

 どこか現実味のない光景。

 この二人が同じ場に揃うのを、俺は初めて見ているのだ。

 純白の天使と。漆黒の……。

 けれど。

 左手に伝わる温もりと震えは、断じて偽りではない。

 無意識だろう。

 睦美さんの右手は、俺の皮膚を突き破らんばかりにこの手に食い込んでいる。


 痛かった。別に、皮膚が少し破れようがそんなのはどうでもいいが、手をつたって伝わり来る恐怖を拭えない不甲斐なさが痛かった。

 せめて、その恐怖を分かち合えるようになりたい。

 そう思い、ひたと前の華月を見る。


 かつて幼稚園だった一軒家をバックにする漆黒の妹は、小さく舌打ちすると、右側に向かい脱兎の如き全力ダッシュ。


 が。運動能力はどうやら平均的な女子らしく、速度はそこまでではない。

 睦美さんに一瞥してから繋がった手を解き、華月を追う。

 十秒と経たずに追いつき、その手を掴む。


「往生際が悪い」

「……手、掴むの、やめてもらえませんか。……怖いんです、男の人」


 反射的に力を緩めた途端、拘束を振り切り再度華月が逃走を図る。

 やられた。そもそも単身男の家に乗り込むような奴が今更そんなにしおらしいことを言うはずがなかった。


「やっぱり、甘い人」


 言いつつ、華月は駆けていくが、そもそものスピードが足りない。

 何度逃げても、結果は変わらない。

 今度は彼女を追い越し、退路を塞いだ。

 苦々しそうに唇を噛み、華月は踵を返して逆方向に駆けようとする、が、そこにあったものを見て、金縛りにあったように動かなくなった。


 ……振り返った先にいる睦美さんを見て、足が止まっていた。


「……どいてくださいよ」

「……そうしたいけど、そうしたら後悔すると思うから」

「馬鹿みたいです。ほんと、馬鹿みたい……」


 華月が立ち止まっている間に、彼女の横に並ぶ。

 抵抗する気が失せたか。はたまた無駄と悟ったか、華月はもう逃げるそぶりは見せなかった。


「……帰ろうか、華月」

「……私の家は、もうあそこじゃありませんよ、お姉ちゃん」


 皮肉を返す華月に直接触れるのは躊躇われるらしい。

 睦美さんの数秒の思案の結果、俺の右手に睦美さん、左手に華月といった感じに手を繋いで睦美さんの家に向かうことになった。

 一応華月に大丈夫が訊ねたが、静かに頷くばかりだった。その胸のうちにどのような思いを抱えているのかはわからないが、少なくとも俺が怖い、というのは嘘であるようだった。


 極上の美少女二人と手を繋いでいるわけだが、両手に花……と喜べるようなシチュではない。

 沈黙が痛い。が、流石にここで馬鹿をやるほど無神経ではない。


 ここから睦美さんの家までは、バスに乗って十分、そこから歩いて五分くらいだ。


 バスでは、華月を奥の席に押し込むように位置取った。痴漢だ、とか叫んだりしなかったのは助かった。そうされると流石にどうにもならないし。

 

 途中、睦美さんが両手で俺の手を握ってきた。元々真っ白い手だが、普段より白くみえた。

 やがて、手だけでは足りなくなったか、俺の右腕を抱き抱えるように引き寄せた。


「ごめんね、このままでいい……?」

「ああ、大丈夫」


 ここでドキドキするほど無節操ではない。彼女がどれだけ恐怖しているか、それを思うと、とても興奮なんてできない。

 そんな俺たちに一瞥くれてから、華月は一つ溜め息を吐いた。そのままボソッと、


「……十分でしょう、それで」


 そんなことを呟いた。多分、聴こえたのは俺だけだった。その意味はなんとなくでしかわからないけど、きっと、そういうことではないのだと思う。家族というのは、そういうものではないのだ。

 けど、今それを口に出すこともできない。

 今日……いや、はるか未来だとしても。そう言えるようになっているのだろうか。


 バスは進む。誰の思いに囚われることもなく、進んでいく。

 彼の地へ。

 戦場へと、着実に。


読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。


もしかしたら次の木曜日は更新できないかもしれません、申し訳ありません…

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