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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE
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第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 9

七幕九話です、よろしくお願いします

 突然睦美さんに呼び出されてから一時間。俺は渋谷の地、その睦美さんの家の前にいる。

 学校を放り出してここまで来た。無遅刻無欠席のこの俺が仮病で学校を休むのは初めてのことだが、まあ一日休んだとてどうなるわけでもない。


 しかし、俺を無理に呼びつけたことをあれだけ申し訳なさそうにしていた睦美さんからお呼びがかかるというのはなんとも予想外。原因の一端は俺にあるから文句はないが。そもそも睦美さんのお願いを無碍にできる俺ではない。


 ……そんな俺だが、インターフォンに手が伸びない。

 朝の、好きという告白が頭から離れないのだ。

 妹に浮気するとかいう可能性が浮上した上で、彼女は俺のことを好きだと言ってくれた。

 きっともやもやしているのに、それを押した、好き、だった。


 そしてそんな好きに釣られてはるばる渋谷まで足を伸ばした馬鹿だというのに、罪悪感とか、高揚感とかが絡まってどう彼女に顔向すればいいのかわからずに右往左往。

 情けない話だ。

 そして、こんなところで足踏みしていてどうなるか、というのは明白だった。俺の思考の外ではあったけど。


「遅いよ」

 

 そんな風な言葉と共に玄関が開け放たれた。

 凛とした中に、少し恥じらい。そんな感じの表情で、アルビノの少女は俺の前に現れた。


「さ、あがってあがって」



 睦美さん宅。リビングで、俺は本日二度目、一時間ぶりの朝食にありついている。

 先は普通のトーストだったから食パン続きだが、単純に美味しいので気にならない。

 フレンチトースト。良いものだ。トーストと比べて時間がかかるから家で出されることはないが、味は個人的にはこちらが勝る。そして、なんとも家族甲斐のないことに、作ってくれたのが睦美さんというのが最高のスパイスならぬチョコソースだった。

 トッピングは、チョコソースとバニラアイス。シンプルながらこれが美味いのなんの。


 二回目の朝食。まあ、朝食など満腹になるまで食べるわけでもなし。一度だろうが二度だろうが大して変わらないから、食べきれないとかいうことはない。睦美さんはかなり心配そうにフレンチトーストを出してくれたが、うら若き男子高校生なら余裕、朝飯前である。

 そして、男子高校生なら、この意中にあって美貌の人に出されたものを残すことはありえない。満漢全席だろうと完食してみせられるに違いない。


「ごめんね、いきなり呼び出しちゃって」

「構わないよ。美味いものも貰ったしな」

「いや、特別なことはできてないし……」

「睦美さんが作るというのはそれだけで特別なことだよ」

「ま、また馬鹿言って。もう。……というか、美味しそうに食べるねえ、飛鳥君」


 さっき朝ごはん食べたんだよね? というのが言外に滲んでいる。が、まあ多分を占めるのは照れ隠しだろう。ここで追撃……できる俺でもないけど。


「美味しいのだから道理だ」

「特別なことはしてないから、飛鳥君にも作れるよ」

「睦美さんが作ってくれること自体が特別なんだ。俺には真似のしようもない」

「よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるなあ」

「馬鹿を言う。恥ずかしいに決まってるさ」


 言いつつ、フレンチトーストに舌鼓を打ちながら、赤面する睦美さんを見る。向かい合う形で席に着く睦美さんは、やはりとんでもなく可愛い。


 この愚物に好意をぶつけてくる人など、ただの一人もいなかった。そういったものは兄に吸われ続けた人生だったというのに、この人は……。

 彼女と話すたびに思う。俺にはもったいない人だ、と。そしてこうも思うのだ。


 ああ、好きだな、と。


 それを今伝えることはできないけど、その思いは会うたびに大きく強くなっている。

 だからこそ、姉妹のなかを取り持ち、真の意味でしがらみを排したかったのだが、そんな中で投下された爆弾に、俺は返す言葉を持たなかった。結果、姉妹の和解への道は閉ざされたと思っていたのだが、睦美さんはどうやら思惑があるらしい。それについて、まだ俺は聞いていない。


 二人してフレンチトーストを食べ終える。タイミングは、ここしかあるまい。


「それで、今日は……」


 好きと言われたこと。華月との仲を取り持てなかったこと。いろいろ積み重なってなかなか切り出せなかったが、意を決して訊いてみる。

 途端、睦美さんが影のある笑顔を見せた。


「うん。ボク一人だと、多分向き合えなさそうだから」

「さっきからそうだったが、居場所がわかるのか?」

「……確証はないけど、ね。飛鳥君、ついてきてく」

「訊くまでもないよ、そんなことは」

「……ありがとねえ」

「睦美さんは、俺に何かないのか?」


 昨日からそうだった。もっと何かマイナスのドロドロした感情をぶつけてきてもいいと思うのだが、そういったものをぶつけてこないのだ、彼女は。


「華月の運命のことなら、気にしてない……って言ったら嘘になる。けど、思うんだ。運命は変えられる、そう思うようになったから」

「それ、は」

「端的に言えば、そうだね。飛鳥君の視線を、全部ボクが貰えば済む話だもん。華月になんて目が行かないくらい、全部」


 思わず、吹き出してしまった。席を移動して、むせる俺の背を摩りながら、顔を赤くした睦美さんが言う。


「それに、飛鳥君は目移りする自分が悪いとしか考えてないみたいだけど、もしかしたらボクに何かあったのかもしれない。何もわからないんだから、飛鳥君を責める気にはならないよ」

「それは、まあ、そうかもしれないが……」


 極論、睦美さんが事故に遭って昏睡だとかそういった線もあるのだ。……考えたくないことだが。

 いや、それ以前に今この人は何を言ったのだ?


「運命、ぶっ壊してやろうぜ」


 ……真っ赤な顔で、睦美さんは言う。

 恋する乙女は無敵なのだ、と、なにかで読んだ気がするが。

 こういうことなのかと、思った。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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