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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE
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第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 8

七幕八話です、よろしくお願いします。

さて。


 朝食のフレンチトースト用の卵液を混ぜながら思案する七時半。

 ……何も考えないで二人分の卵使っちゃってるけど、二度目の朝食に飛鳥君は付き合ってくれるだろうか。


 そういえば、ボクは飛鳥君に何と言ったか?

 たしか好きとか抜かしやがったのではなかったか。

 ……身体中の熱が顔に集まったような気分だった。少しでも排出しようと大きく息を吐きながらも、手は勝手に動いている。卵液を混ぜ終えると、トッピングに使えるのは何があったかなと冷蔵庫を開く。チョコソース、オレンジ、バニラアイス……まあこれだけあれば大丈夫だろう。


 いやこれデザートじゃ? ……まあ飛鳥君だし大丈夫か。


 ……ともかく、二度目の朝食に、飛鳥君は付き合ってくれるだろうか。無理だったら……まあ帰ってきてから食べて貰おう。

 トッピングはお好みでいいよね、ということでそちらは飛鳥君に任せる。

 せっかくだから、一緒に食べたいなあ、などと思いつつ食パンを卵液に浸す。ほんとうは一日くらいは漬け込みたいのだけど、飛鳥君が来るのはもうすぐだから無論そんな時間はない。

 仕込みは終わったから、あとは飛鳥君が来たら食べるか訊いてフライパンで焼いたらトッピングして出来上がり。

 どうせならできるだけ美味しいものを食べてもらいたいけど、こればっかりはどうにもならない。

 ……そうだ、なるべく浸けた方が美味しくなるのだから、飛鳥君が今は食べられないとか言ってくれた方が出来の良いものを提供できる。うん、その方がいいよね。

 ……でも、一緒に食べたいなあ……。


 ……ああ、ダメだ。


 あんな形とはいえ、一度口にしてしまった。形にしてしまったのだ。今まで以上に思いは募る。

 ちょうど、発酵させるパンのよう……いや、作ってるのがフレンチトーストだとあんまり上手くないか。

 まるで恋する乙女だ。いや、それ以外の何者でもないのだけど、それと同じくらいには考えるべきことがある。


 もう一度、大きく息を吐く。

 学校を休ませてまで彼を呼びつけたのは、当然、イチャイチャしたいからではないのだ。

 ボクの運命。それと向き合うためには、ボク一人ではダメだった。

 運命。ボクの半身。


「ねえ、マホちゃん。どういうことなの」


 訊いて何がわかるわけでもないだろうけど、訊かずにはいられなかった。


『……どういう、ことなのだろうなあ』

「ふざけてるの?」


 飛鳥君ではないけれど、アプリを消してやろうかと、少しだけ思った。

 幸か不幸か、アプリの情報というのはポイントによるアンロック式なのだとか。

 とするなら、マホちゃんがボクを謀ったとかそういうことではないのだろう。まあそれはそれとして、揺るがぬ運命を謳っておきながらこれなのか、とは思ってしまうけど。


『そう取られてしまっても仕方ないな』

「……もう、いいよ」


 別に、ふざけているわけじゃないのはわかる。わかるけど……。

 ……ダメだな、ボクは。


「結局マホちゃんはどこまで知ってるのさ」

『お前に説明した以上のことは知らない。ほんとうだ』

「……わかった」


 半ば八つ当たりじみているのは自覚している。流石にこれ以上は自嘲しないといけない。


『……運命。その言葉は、俺にとっても支えだった……』

「……そっか」


 訥々とマホちゃんが言う。

 それは、そうか。まさしくレーゾンデートル。それが揺らいだのだ、ある意味では衝撃というのはボクよりも大きいかもしれない。


『お前を無二の運命に導くことが、俺の役割ではなかったのか。俺は……』


 まるで悪戯を咎められた子どものような声音だった。

 

「あんまりウジウジしないでよ、話し相手がそんなんだとボクも調子出ないんだから」

『……まったく、お前に諭されては終わりだな』

「そ、ウジウジは終わり、普段通りに戻ってくれなきゃね」

『まったく、お前は、まったく』


 それはもちろん、マホちゃんに対して思うところはある。

 けれど、結局のところボクはマホちゃんに単なるガイド以上の価値を見出している。端的には、友人だと。

 だから、もう導くだの運命だのはどうだっていいのだ。

 それがわかった。

 恋に恋するのでなく、飛鳥君に恋するのであれば、運命に揺らぐことはない。運命の人だのなんだのは結果でしかないのだ。

 

 産まれてから今まで、ボクは運命という言葉に翻弄されるばかりだった。

 だから、運命という言葉に人並み以上の忌避感と幻想を抱いていたのだろう。

 その観念を破壊するのがボクの運命を象徴する二人だったというのは、なんとも笑える話だ。

 いや、笑えないけど。


 さて、朝食の準備も、心の準備も終えた。

 洗面台に向かい、髪型を整えて歯を磨く。ちなみに、本日三度目。

 うん、変わらず可愛い女の子が前に映っている。バッチリだ。

 ……表情は、少し強張ってるけど。

 実際のところ、ボクは今日恋する乙女モードでいてはいけないのだ。

 キッと表情を締める。

 今日は、ボクにとって大きな意味を持つ日だ。

 それがどのような顛末を迎えるにせよ、きっと、明日のボクは今日とは違うボクになっている。そんな確信がある。

 その変化の良し悪しはわからないけど。


 また、大きく息を吐く。

 すると同時に、インターフォンが鳴る。

 

 さて。これは、始まりだ。

 ボクという女の子の、終わりと始まり。

 どのように終え、どのように始めるかの、正念場だった。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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