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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE
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第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 7

七幕七話です、よろしくおねがいします。

 飛鳥君と初めて通話をした翌日の朝。飛鳥君が生徒会選に勝利した翌日。

 ……華月の動機を知った翌日だった。

 ニートの分際で規則正しい生活を心がけているボクが起きた七時を少し過ぎた頃。

 リビングでボーッとするボクに、飛鳥君から再度電話がかかって来た。

 ……要件は、わかっている。


「おはよ、飛鳥君」

『……ああ、おはよう』


 おはようの挨拶を好きな人と交わす。こんな状況でなければなんとも感慨深いことだけど、今はそんなことを考えている場合ではない。


「どう、だった?」


 正直。飛鳥君の重たい声音で、成果の程は察しがつく。

 無理だったのだ。かつての笑顔を取り戻すことなど叶わないことだった。


『……すまない』

「ううん。飛鳥君は悪くないよ」


 これまた正直なところ、今のボクは華月に会いたいとは思えない。無論、事情を聞き、動機を知ればその心持ちは変化していくものだと思う。

 けど、その機会を得られなかった、と。そういう話なのだ。

 ……そんなふうに、思っていた。


『ただ、二回目の動機は、聞くことができた』

「……そう、なんだ」


 二度目の陵辱。あれが何故か。

 それ次第では、ボクが華月を許すことは多分。……いや、絶対にないだろう。

 どれだけ華月に守られていたとしても。

 それとこれとは別の話だった。


『……俺としても、情けない話でもあるが……』


 ……? 飛鳥君がどうして出てくるのだろう。

 そんなふうに思いながらその続きを聞いていき、ボクは言葉を失った。


 華月がボクを襲ったのは、ボクを飛鳥君と結ばせる為だというのだ。


 ボクの心に混沌が降りた。

それは、困惑と、怒りと、失望と。紐解いていけばそんなふうに呼ばれるものたちの集合体なのだろうけど、それぞれが複雑に絡み合い、ただボクの思考を止めていた。


 ボクと飛鳥君を結ぶという運命。それそのものが揺らぐような言葉だった。

 だって、そうだ。

 トーストを齧りながら走る時。角でぶつかる相手が実はタイミングを見計らって飛び出してきたと告げられたような心地だった。

 飛鳥君にそんな意図がないのはわかっているが、それでも仕組まれた運命に対しての捉え方は変わってしまう。

 乙女の幻想を運命と呼ぶのなら。

 それはもう、運命ではなかった。


『すまない』


 失望には、彼への失望もある。

 華月が和解の道を選ばない一因には、華月の運命の相手が飛鳥君と出たからだという。

 それというのはつまり、飛鳥君が華月に靡く可能性があるということだ。

 彼が運命の相手としてボクに接してきた以上最終的にはボクが結ばれることになるのだろうが、だからといってならいいか、とはならない。


「……ほんとだよ。酷いよね、浮気魔。最低」

『……すまない』

「ほんと、馬鹿正直なんだから」


 わざわざ言わなくてもいいのに、そんなこと。

 そうしておけば和解が成らないにしても、飛鳥君はできる限りの努力をしてくれた上で何の落ち度もないまま、ボクたちは運命を深めていけたのだ。

 きっとその方が幸福だった。

 ……まあ、飛鳥君がそれを選べないのは、散々接してきたのだからわかる。

 そもそもからして、それだから飛鳥君はボクに対して運命という言葉を使ってこなかったのだから。

 ……そして、まったくもって馬鹿なことに。

 そんな飛鳥君が、ボクは……。


 現時点での飛鳥君にとっては浮気魔なんて言葉は心外も心外だろうに、そこを否定もしない。

 激昂して言い返してもいいのに。


「……ボクね。もう運命なんてどうでもいいんだ」


 誰かの手のひらの上にいるのなら、運命に価値などない。

 しかし、だ。この感情に欺瞞はない。

 彼を思う気持ちに嘘はない。誰であろうとこの気持ちを否定なんてさせない。

 それがたとえ、華月でも。

 たとえ、飛鳥君でも。

 ボク自身だとしても。


「だって、ボクが飛鳥君を好きなことになんの関係もないもん」


 スッと。その言葉が口から溢れていた。

 赤面するでもなく、けれど確かに。

 そう断じていた。

 決して、ボクたちの付き合いは長いわけじゃない。一月と、少し。寧ろ短いくらいだと思う。

 けど、四六時中彼のことを考え続けたこの一月半は、とても濃密なものだった。思い返して一月しか経っていないことに驚愕するばかりだ。

 そんな一月が、ボクの背中を支えている。


 ボクたちが直接口にするのは初めてのことだ。

 内面でどれだけ相手を思っても、それを口することはなかったボクたちが、ついにその言葉を告げていた。


『……睦美さん……俺は』

「資格がないなんて言わせない。言ったよね、ボク。飛鳥君のこと肯定するって」


 それはあの日。あかね祭で自虐する飛鳥君に対して思わず溢れた言葉だった。

 けれど、今ボクは確かに自分の意思で。自分の言葉でそう紡いでいる。


「運命が否定しても。運命を否定しても。それでも飛鳥君はボクの運命の……。ううん。ボクの好きな人だよ」


 きっと、通話が切れた後で恥ずかしくなるんだろうけど。

 そんなことはどうでもいい。

 今大事なのは、そんなことではないのだ。


『俺も……睦美さんのこと』

「ダメ。続きは次の機会に、ね」

『……なんでだ』

「浮気性の飛鳥君を許すために、一つお願いがあるんだ。それが終わったら、改めて聞かせて」

『……釈然としないが、まあ、わかった』

「今日、学校休んでこっちに来て」

『……いや、構わないが……』

「じゃあ、決まりで」

『なんでだ? なんのために』

「面食らわせてやるんだよ。ボクの運命にね」


 このまま逃げさせなんてしない。

 ボクのこの混沌をぶつけてやらねば気が済まない。

 そして、後悔させてやるのだ。

 自分が引き合わせた、逃した魚は大きいのだと。

 ボクたちの関係は。

 逃げた程度で断ち切れるものでは、ないのだと。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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