第七幕 相克相生双生相乗相対運命デュエルLINE 6
七幕六話です、よろしくお願いします。
「……はぁ」
まったくもって。なんて馬鹿げた馬鹿だろう。
私なんかのため……というのは自惚れか。
とはいえ、姉のためだけにやっているわけではないだろう。
少ないにしても、私を思ってやっている。
この天津 華月という、深黒の大罪人のために。運命の人をこの上なく傷つけた敵である私のために何かを成そうなど、馬鹿げている。
溜め息を吐きながら、私はベッドに身を投げた。枕に顔を埋めながら、潰れそうなほどに抱き締めている。
暫くして時計を見やると、時刻は午前三時。視界がぼやけているのは、はてさて、何故か。
……きっと、眠いからだ。
闇、夜の闇。私にこの上なくお似合いの閉じた世界。瞼で閉じるまでもない深黒の世界を、私は憎んでいるわけではない。
闇の静寂が覆い隠してくれるものもある。微睡むことでしか超えられないものもある。
そして、それでも消せないものも、ある。
私の姉への思い。そして、姉の私への思い。
和解。なるほど、甘美な夢だ。何もない夜の闇に浮かびあがる渇望だ。
しかし。夢は叶わないから夢なのだ。
さながら犬が追う自分の尾のように。追いつくことは容易ではなく、届いたと噛みつけば痛みから放してしまう。
今の私に姉は眩し過ぎるし、そもその資格もない。
馬の目の前ににんじんをぶら下げるのとは訳が違うのだ。
仰向けになり、意味もなく手を伸ばす。闇に溶ける。いや、闇よりも黒い腕。
何も掴めなかった腕。
姉を犯した罪の腕。
いっそ死んでしまおうか。そんな考えが浮かぶ。
……まあ、私に運命の人が示されている以上、結局私にその度胸は無いということにはなるけど。
……いや。
魔法のアプリ。それが何のためにあるのか。
偶に考えることがある。
運命の人なら、アプリの導きなくともいずれどこかで出会い、愛を深めていくはずだ。
なら、アプリとは基本無用の長物ではないのか。だというのにこんなものを組み上げた輩は何がしたいのか。
……運命を覆すこと。
それが、このアプリには可能なのではないか。
追加されていく機能の果てに、運命の改変があるのではないか、と。そんなことを考える時がある。
まあ、アプリなんであれ、姉妹仲そのものに介入してくれるわけではない。
結局、どうしたって私は姉と歩みを共にすることなどないのだ。
……蓮城、飛鳥。彼は良い人だ。馬鹿だ何だと宣ってはいるが、根っこの部分がどうしたって善人だ。だから、ほんとうの馬鹿でもないのに私の言葉を信じるし、和解などを願ったりもする。
……しかし。今回に関しては、馬鹿だと言わざるを得ない。
余計なお世話なのだ。私も姉も、もう元には戻れない。
一瞬だけ目を閉じてから、彼とのチャットルームを退室し、五つも名前のないアドレス帳からその名を消した。
これにて、全てはおしまい。
彼が私にコンタクトを取ることは叶わない。
……彼とのやりとりは結局ただの一度きりに終わったが、確かに楽しかった。姉が惹かれていくのも少しわかる。
ほんとうに。どうでもいいところばかり、私たちは姉妹だった。
しかし、それではいけないのだ。
全てを清算しなければならない。
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