第六幕 相克相生双生相乗運命デュアルLINE 5
六幕5話ですね、よろしくお願いします。
ながくなりそうなんで分割してます。ぶった斬ったかんじになってしまってすみません。
さて、俺はなぜこんなところにいるのか?
回想してもあまり筋が通らないことしかわからない。
たしかに睦美さんが望むというのは今の俺にとっては最も重要な道理である。しかし、発端が兄の道理通らぬ神託じみた発言なのは、どうにも釈然としない。
そんなモヤモヤは、道理通らぬ決意の後も変わらない。けれど、俺は……。
などと考える、体育館舞台袖。
前生徒会長にして我が実兄が、聞いてて恥ずかしくなるような応援演説をしている。
曰く、あれは馬鹿だが無能ではない、だの、馬鹿だが優しい奴だ、だの。こいつ当選させる気あるのか? と問いたくなるような文言が並んでいるが、聞き手はうんうんと感心して頷いている……ように見える。
兄が表立って話していれば、それで大抵の女子は真面目に話を聞く。並んだ子猫の頭上でオモチャを振っている時のように寸分の狂いない。どこぞの軍隊かよと溜息が漏れる。
そして、この学校は圧倒的に女子が多いのだ。女子が一律に首を振っていれば、男子は渋々追従する他ないのである。
無論、例外はいるとはいえ、ほぼ全ての馬鹿どもが兄の言葉に耳を傾けている。俺はこれを継ぐのか? 全く持って悪い冗談だ。笑うのなんて睦美さんとつぼみくらいだろう。
そして、その悪い冗談を、馬鹿げていると思いながらも実践しようとしているのはどういうことだろう。悪い冗談に悪い冗談を重ねたミルフィーユ。きっと俺でも食わないだろうが、そんなミルフィーユを食う悪食の中に、我が運命があるのなら。
同じようなことを何度も考えているようで辟易するが、同じようなことしか思えないのだから許してほしい。
あれこれ考えている間に、兄の演説が終わり、こちらに捌けてくる。
場は温めてやったぞ、といった感じにサムズアップする兄の手を振り払い、俺は兄を背にする。
色々癪に触ることもあるが、この兄は俺にとって不可欠のものである。きっと、兄がいなければ俺はまったく違う人間に育ったに違いない。
もしかしたら、睦美さんとも出会えなかったかもしれない。
とするなら、兄や幼馴染も、俺の運命の一部なのだ。
そんな兄の意志を継ぐ。……決して言葉にはしないが、俺はそれをなんだか嬉しく思っていたりもするのだ。
兄を背にし、少し歩くともう壇上である。
仄暗い舞台袖とは違い、こちらは眩いばかりだ。視線も痛い。吉川人に目からビームを出す能力があれば、俺は微塵も残らないに違いない。
マイクの前に立ち、眼下を見渡す。
人、人、人。七百に迫る顔の全てが神妙にこちらを見ている。
彼らはなにを思うのだろう。早く終われ、とか、会長なんて誰でもいい、とか、会長変わらなくてよくね、とかそんなことを思っているのだろうか。
まったく、その通りだ。俺も、そう思って去年はそこに在った。
偉大すぎる先人に比べれば、後任は誰あろうと頼りない。別に誰でもいいだろう、そう思うのは致し方ない。が、だ。
こうして壇上に立った以上は、そんなふうに済ました態度は気に食わない。「やれー、馬鹿やろう!」などという激励も少し飛び始めた頃、俺は口を開く。
「えー、どうも、蓮城 飛鳥です。この度は兄の奇怪な思いつきで立候補することになってしまいました」
掴みは肝要。終わり良ければ、なんてのは創作に限る。常にベストを尽くしてこそ、リアルの女神は微笑むのだ。
クスクスと笑う声がチラホラ。選挙でこれはどうなのかと頭を抱える担任の鵜飼にちょっと申し訳なく思いながら、続ける。
ここからは、少し真面目に。
「立候補こそ兄の言葉を受けてのものですが、私の理念は兄とは少し違います。私は、皆が憚りなく馬鹿になれる学校を目指します。なにも考えずに馬鹿をして自分を曝け出し、誰もが笑っていられる学校を私は目指します。勿論、誰かに迷惑をかけることを是とするわけではありません。それは馬鹿ではなく、それ以下、屑の所業です。それは許してはならないことです」
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