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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE
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第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 12

五幕の12話ですね、よろしくお願いします

 ご飯を食べ終え、それが諸刃であるとも思わずに飛鳥君の痛いところに言の刃を立ててから少しした午後の一時。

 程よい満腹感が眠気を呼ぶが、さて、デートで寝るわけにも……いや、それはそれで良いものかもしれないが、今は他にもしたいことがある。


 ……そして多分。しなければいけないことも。

 必然ではある。飛鳥君は、ボクのために、ボクに気取られないように華月について探ろうとした。それをボクが察したことを共有した以上、スタンスは明確にしなければならない。


 さっき勉強に使った卓を挟んで向き合いながら、飛鳥君は真剣な面持ちでボクを見ている。

 シチュが違えばドキドキもしたろうが、今はそれどころではない。


「……睦美さんは、その、妹と仲直りしたいと思ったりするのか?」

「……そうだね……正直、とても考えられないよ」


 その言葉を口に出すのに躊躇いだったりがないと言えば嘘になる。それだけ華月はボクにとっての支えだった。そしてそれだけ、華月の付けた傷は大きい。


 ……仲直りなんて、考えられない。

 華月はボクを犯した時、二回ともその双眸には涙が浮かんでいた。それが何に由来するものなのか。気にならないと言えば、それもまた嘘になる。……それだけ、華月はボクにとって支えだった。昔、まるでボクたちのようだと笑い合った四つのテディベア。それをボクは捨てることができていない。だから本心では華月を許したがっている、とか言うつもりはないけど、思うところがあるのは否定しようもない事実なのだ。

 例えば、あの涙が罪悪感だったり、それに似たようなものによるものであれば、ボクは華月を許せるのだろうか。


 ……多分、無理だ。

 ボクの胸を揉むしなやかな腕も、ボクの……膣を掻き回す細く長い指も。その全てがボクの脳裏に焼き付いて離れない。


 目を閉じれば、その漆黒はそこにある。そう錯覚してしまうくらいには、受け入れ難いものだった。


 と、そこまで考えて、ふと思い至る。

 ……華月は二度とも、いざ破瓜に至るというその時に涙を浮かべ、行為をやめて去っていった。

 ボクの股が血で濡れたことはまだないのだ。


 ……それはなぜだろう? 華月はどのような心境で去っていったのだろう。

 ……いや。それがどうであれ、この傷は受け入れられるものではない。


「……そうか、そうだよな。すまない、無遠慮だった」


 無遠慮、な訳がない。どれだけの遠慮と苦悩と躊躇の末に出た問いなのか。流石にそれを推しはかることはできないが、彼がボクを思ってくれているのは、わかる。


「……ううん、大丈夫だよ」

「……すまない」

「ほんとに大丈夫だから、気にしないで、ね」

「……」

「どうしたの?」

「いや。……その、なんだ」

「勿体ぶるなあ。早くしてよ」

「……いや、なんても」

「なんでもない、は無しで」

「……エスパーめ」


 赤らんでいた頬が、意を決したか引き締まる。


「睦美さんで良かったと。そう思った」


 ……少し開き直ってる?

 とか、そんなことを頭の片隅で考える。

 ……メインを何が占めているかは、多分ボクの顔を見ればわかるだろう。

 つまりは、ボクを見る飛鳥君を見ればわかる。

 飛鳥君の顔は、緊張に強張っているが、決してそこに畏れはない。

 ……それ以前に、彼の瞳には顔を真っ赤にするボクが写っているのだけれど。

 ……鏡代わりに好きな人の瞳を使うというのは、なんとも気のおけない感じがして……なんだろう、素直に嬉しい。

  ……多分、運命の人という言葉を口にするのに彼は少し抵抗があるのだろう。いや、それも同然のことを言ってはいるのだが、運命の人というフレーズには魔力がある。どうやらボクがその言葉にありつけるのはまだ先のようだけど。


「……ボクもそう思うよ」


 ふと、無意識にその言葉が溢れた。それを聞いて、飛鳥君は恥ずかしがるでなく(いやそれも多分にあるか)、少し考え込んでから、


「……少し、確かめたいことがある」

「なに?」

「アプリのことなんだが」

「アプリ」

『な、なんだ? 用済みだとでも言うのか』


 飛鳥君のアプリがおっかなびっくりといった感じで今日初めて口(……マイク?)を開いた。

 その絡みからは、飛鳥君とそのアプリとの関係性が窺える。なんとも愉快な日々を過ごしていそうだ。

 ボクたちとはまた別の気のおけない感じだった。アプリの言葉をスルーして、飛鳥君が続ける。


「いや、違うな。アプリの言う運命、についてか」


 そこから先は、飛鳥君が疑問を呈してその疑問にマホちゃんや飛鳥君のアプリ(名前つけてあげれば良いのに)が答えるといった流れが少し続いた。


 要約するなら、そもそも運命とはどういったものなのか、といった感じだった。「運命の糸を二人から向けられることはあるのか」という問いに、マホちゃんがノーを。赤い糸は二人を結び、第三者の糸が絡まることはない、らしい。


 どうやら、華月の運命の人がボクである可能性を危惧しての質問のようだった。華月がアプリユーザーであるらしいことは飛鳥君と同じタイミングでマホちゃんに聞かされている。


 ……華月がアプリユーザー。それもなかなか疑問が浮かぶことだ。

 ……ボクにしたことを悔いて、新たな出会いを求めてアプリに手を出した……? いや、それはないか。ボクは覚えていないけど、二度目の時、華月がマホちゃんに言葉を返したのが発覚の理由だとするなら矛盾する。


 他にも推論を挙げることはできるが、どれも確証のないほぼでっち上げでしかない。結局、飛鳥君はいくつか質問したが、収穫は無いようだった。そもそもアプリサイドも知らないことが多すぎるのでろくに答えてくれなかった。


 結局、わからん! と飛鳥君が溢して終わった。

 華月のことは考えれば考えるほどドツボにハマるようだった。

 ……それは、多分ボク自身、心の中奥の奥の奥の奥底くらいでは、ちょっとだけ仲直りできたら素敵だなと思っているというのもあるだろう。

 できたらいいな、ではなくできたら素敵だな、なのは少し物悲しいけど。

 ……多分。今双生会がどうなっているか。それを知らねばわからないことだろう。


「……遊ぼっか」

「そうだな」


 考えている内に気まずさもどこかにいってしまったらしい。

 これ以上考えても仕方ないと考えが一致したか、問題は先送りにされた。

 

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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