第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 11
五幕の十一話ですね、よろしくお願いします。
長く数多いラストゲームを終えたボクたちは、現在向かい合う形でテーブルに着き、昼食の只中……終わり際? のデザートタイム。
昼の献立は以前同様に男の子受けする……というか嫌いな人とかほとんど見ないハンバーグをメインにコンソメスープと付け合わせの野菜。あとデザートにモンブラン。デザートは昼は無くてもいいかなあとは思ったけど甘党の飛鳥君なので用意しておいてある。……単純にボクが食べたかったというのも多分にあるけど。だって女の子だし。
二人してモンブランに舌鼓を打ちながら、色々お話し中。
「美味い」
この一時間少しで10回は聞いた言葉だが、言われるだけ嬉しいもので、単純な乙女心がダンスしている。モンブランは自分で作ったものではないとはいえ、狙い通りに喜んでくれるとこちらまで嬉しい。くだらないおふざけも飛び出すというものだ。即ち、
「睦美さんはいいお嫁さんになるな?」
浮んだけど口に出すのは恥ずかしいし……みたいな顔の飛鳥君の代弁をする。
「……睦美さんはいいお嫁さんになるな」
無理やり言わせたみたいだが、聞きたい言葉のためなら恥知らずにもなれるのが女の子……でもないか。単純にボクが馬鹿なだけかな。とはいえ、望みのものは引き出せたので満悦。
うん、なかなかの破壊力。恥を知るのも吝かではない。漫画の定番シチュになるのも頷ける。
「照れるよもう」
「……なんだこれ」
「否定できないのが質の悪いとこだよな? って?」
「……メンタル強すぎだろ」
「そんなことないよ、めちゃくちゃ恥ずかしいもん。アルビノも真っ赤になっちゃうよ」
飛鳥君が返に詰まり微妙な表情になる。このアルビノジョークにはそういった効果があるのだ。実際、ボクはアルビノであること自体はさして気にしてはいない。たまに普通の女の子として生まれたら、と妄想を広げることはあるが、それに留まる。『ニートの分際で何を……』とマホちゃんが小声で呟いていたが、今のボクには聞こえない。
「……まあ、実際そうだよな、いいお嫁さんになるんだろうな」
「な、なんでいきなりそういうこと言うかな!?」
不意……不意? まあとにかく相手から来られると弱いらしいのが、新発見。自分のことでも知らないことはあるものらしい。
「はは、睦美さんも案外単純だよな」
「……心外だなあ、慣れてないだけだもん」
人と腹を割って話すこと自体、ボクにとっては珍しいことだ。それが意中の相手なら尚更だ。全てが暴投のすっぽ抜けピッチャーになりかねないのが今のボクである。
その点においては、飛鳥君の方に一日の長があると言えよう。単純と言われるのも無理からぬことか。ボク自身、単純だなあと自分を俯瞰して思うのだし。
「俺は俺で慣れてないけどな」
「どういうこと?」
「……いや、忘れてくれ。口に出すのは憚られる」
多分、両思いだろう場合の経験などはない、みたいな意味合いかな? たしかに飛鳥君なら相手の気持ちに勘付いていても相手が自分を好いている前提の物言いは憚られるのだろう。
もっとグイグイ来てもいいのに、と思わないではないが、他ならぬボクの過去のために踏みとどまっているのだからこちらからは強く言えない。
……ボクたちそんなのばっかだなあ。
と、飛鳥君が箸を置く。食べ終わったらしい。
「ふぅ、ご馳走様」
ピチッと両手を合わせて言う。律儀な人だなあ。
「うん、お粗末様でした」
「この後は上戻る?」
「そうだねえ、ここにいても何もないし」
「わかった、じゃあトイレ行こうかな」
飛鳥君がすっくと立ち上がって言う。
「……華月の部屋なら、めぼしいものはないよ」
ボクの言葉に、一瞬硬直してから飛鳥君が答える。
「……バレてたか」
「やっぱりそうなんだ」
……なんとなく、そんな気がしてた。飛鳥君なら、そうしてくれるだろうなって。
……多分、華月と接触して、その真意を確かめてからボクとの仲を取り持とうとしてくれるんじゃないか、と。確証はなかったけど。
「……鎌かけたってことか」
飛鳥君が若干沈んで言う。
「ごめんね」
「……いや。全面的に俺が悪い」
「……ううん、ボク、飛鳥君ならそうしてくれるんじゃないかって薄々思ってた。それでも話したんだから飛鳥君のせいじゃないよ。……話して欲しかったとは、少し思うけどね」
……薄々。ほんとうに、うっすらとだけど。
双生会なんて得体の知れない宗教みたいな組織に一介の学生が首を突っ込むなんて正気の沙汰じゃない。華月はそれに連なる可能性もあるのだからそれも同様。いくら馬鹿を公言して憚ることないとはいえ、無謀は弁えるはずと思ってた。
……けど、彼はボクの想像を超える馬鹿だったようだ。それは嬉しくもあるけど、それ以上に許し難い。
「……すまない」
「……ボクも、このままじゃいけないのはわかってる。けど、今のボクが一番嫌なことが何か、わかる?」
「……天津 華月と会うこと……」
「違うよ」
たしかに華月と会うのは恐ろしい。一人で会えば、脚はすくみ、恐らくはなすがままだろう。
けど、
「ボクは、飛鳥君が危ない目に合うのが一番いや。ボクのためなら尚更いや」
目を見開く飛鳥君をひたと見つめ、ボクは続ける。
「そんなの、絶対に笑えないよ」
暫くの沈黙の後、飛鳥君は目を伏せて、
「……わかった。詮索は止めるよ」
「……うん。でも、気持ちはほんとうに嬉しいよ」
喜ぶべきではないのだろうけど。きっと窮地に現れる主人公を目にしたヒロインとかいうのはこんな気持ちなのだ。今は未遂だし、そもそもそれ以上に止められてよかったという安堵が強いから喜びに浸るわけにもいかないけど。
「すまなかった」
「……ボクが言えたことじゃないけど。これからは、隠し事はしないようにしよ」
「……そうだな」
「……さ! 暗い顔は無し! これはデートなんだから! ボク、まだまだしたいことあるんだよ」
無理にだけど笑うボクに合わせて、
「そうだな、俺も、たくさんある」
気を取り直して、お家デートを再開する。
問題は取り除けた。そう思っていた。けれどやはり、運命とかいうやつは向こうからやってくるのだ。
それを、ボクは忘れていた。
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次回でもよろしくお願いします。
睦美はよく気の付く娘ですね、察し良すぎてたまに困るくらい。とはいえ今回は可能性に思い至って然るべきではあったか。




