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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE
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第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 10

すみません連休で曜日感覚バグってました…

五幕の十話です、よろしくお願いします。

 さて、お家デートだ。ボクの人生にとってそれは親戚の親戚の親戚くらいには遠い存在だったけど、今こうして只中にある。


 心の準備とかいうやつはどれだけしてもまるで足りず、昨日から心臓はバックバクだった。

 こんなボクにも真紅の血が通っているのだ、などと戦闘狂キャラみたいな考えが浮かぶほどに。


 ボクの家。行動範囲は、このボクの狭い部屋。他は行っても気まずくなるだけだし、あんまり見たくもない。ご飯時はさすがに下に降りるけど。


 ただお話するだけでも楽しいのは間違いないだろうが、せっかくならボクの楽園がどれだけ遊びのバリエーションに富んでいるかを示してみせよう。


 今、ボクたちは一つのテレビに向かい、レースゲームに興じている。本格的なやつではなくて、配管工とか出てくる類のやつ。

 始めてから一時間ほど経っているが、


「……むぅ」

「はは、詰めが甘いな」


 未だ一勝もできていなかった。一応ホストの意地があるのだが、飛鳥君は容易くボクを追い抜き、追いつくことを許さない。


「上手すぎだよぉ」

「ま、鍛えられてるからな」

「も、もう一回!」

「それ何回目だったかな」

「だってボクのゲームなのに一回も勝てないなんて悔しいよ!」

『睦美もオンラインだとそれなりに好成績だからな。無駄にプライドがあるんだな』

「うるさいよ!」

「ま、俺は構わないが」


 スマホから響くマホちゃんの言葉は真実だ。それだけにどうにも悔しい。

 一体どれだけ研鑽したというのだろう。そして、この飛鳥君すら一度も勝てたことがないお兄さんとは一体なんなのだろうか、と少し戦慄しながら考える。


 さて、この飛鳥君は、怪物であるお兄さんを打倒するために、自分の領域に兄を引き摺り込んだ。なら、ボクが同じことをしても非難はすまい。

 要は、飛鳥君の余裕を崩すか、他に意識を向けさせればいいのだ。


 ……それで守られるプライドとは一体……?

 いや、考えてはダメだ。ボクは勝つ!


 使用キャラと機体を選択し、待機。この沈黙が堪らないのだ。オフラインの対人戦など華月が去ってから初めてのことだ。否が応にもテンションは上がる。……それになにより飛鳥君だし。運命の、人だから。


 ふと、目線を隣にやる。ボクの運命の人に。

 ……気づけば、それまで巡っていた打算とか、そういうの全て纏めてどこかにやってしまっていた。

 レースの開始と同時に、ボクは頭を飛鳥君の肩に委ねていた。


「な、な、な……!?」


 というピュア過ぎる反応により、飛鳥君のスタートは遅れている。ボクはというと、どこかにやった打算がひょっこり帰ってきたか、スタートに抜かりはない。


「えへ」

「……それでいいのかよ、プライド!」


 ムッとしているんだか照れ隠しなんだか、飛鳥君は画面に集中する。


「勝てばよかろうなのだ!」

「まだ勝った気になるのは早い!」


 飛鳥君は、いつかのお兄さんのようにあくまで正攻法でレース続行。

 どうやらプライドに縛られているのは彼の方か。……いや、考えると惨めになるからよそう。

 というか、反撃来たらどうするつもりだったんだろう、ボク?


 結局、レースはボクの勝利で幕を下ろした。彼我の差は、兄弟間程ではなかったようだ。あの時のお兄さんは飛鳥君の小細工を容易く打ち破ったのだし。


「……釈然としない……」

「飛鳥君が言うんだ、それ」

「うるさいな、アレは化け物だからいいんだ。俺は馬鹿者だぞ」

「まあ、勝ちは勝ちだよね。それに、ボクだってずっと頭を乗っけてたんだから。結構やりにくいんだよ」

「……で、いつまでそうしてるんだ」

「……嫌だった?」


 レースが終わっても、ボクはまだ頭を乗っけている。となると必然的に、めちゃくちゃ近づいてもいる。端的に言えば、寄り添っている、とかそんな感じ。

 ……今更になってドキドキしてくる。二回目なんだから、少しくらい慣れてるかとも思ったんだけどなあ。……乙女か、ボクは。


「嫌……というのではない。が、だからこそ、その、困る」


 ……なんだろう、この反応。可愛いなあ、ほんと。男の子に対してこんな思いを抱くなんて、ほんとうに想定外。


「飛鳥君、肩に接着剤付けてきたでしょ」

「自分が頭に付けちゃってた、の間違いじゃないのか……?」

「固まる前に離さないと、ずっとこのままになっちゃうよ」

「……それは嫌だな」


 嫌。まあ考えてみれば当然ではあるんだけど、それでもちょっと傷付くボクに、飛鳥君の追撃が来る。


「だってこういうの、慣れるの勿体無いだろ」


 なるほど、その考え方はなかった。たしかに、色々慣れすぎて感情が動きにくくなるのは好ましくない。幾つになっても手が触れた肩が触れたでドキドキしているのはそれはそれで問題だろうけど、ボクらにはまだ早い話だ。

 ボクらは、まだくだらないことで子供みたいに胸が高鳴る方がいい。


「……そうだね、それはそうかも」


 けど、それはそれ、これはこれというものだ。

 接着剤は結構強かった。飛鳥君が照れ隠しにでも離れないのがその証拠だろう。

 結局、しばらくボクたちはそのままゲームをしていた。戦績は、その後ボクがずっと勝利を収めている。……途中からは脇突いたりしてたのでさすがに勝利と呼ぶには色々痛むけど。


 そのまま一時間ほど経ったころ、飛鳥君のお腹が鳴り響いた。

 時計を見ると、時刻は12時ほど。たしかに昼時だろう。


「じゃあ、ご飯にする?」

「待っ、もう一回! もう一回だけ」


 ……長いもう一回になりそうだった。

 ボクが言えたことではないけど。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。


さてご飯です引き多すぎぃ

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