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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE
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第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 7

五幕の七話です。

一週空いての投稿になりますが、ちょっと目が痛いので、取り敢えず生存報告ということでいま書けている部分だけ投稿します。残りは明日追加しますので、よろしくお願いします。



追記しましたので、よろしくお願いします。

 10月13日の水曜日、吉川東高校、昼休み。陽の指す学校の広間で一人の馬鹿を傍に置き、選挙活動に励む男がいた。名を蓮城 要といい、傍に佇む馬鹿の兄に当たる男。

 比類なき美貌は陽光に輝きを増し、学校内を行く者を分け隔てなく照らしている。


 そんな要が、太陽から月へと転じようとしている。

 生徒会長の座を、愚弟に渡そうというのだ。その為に、広間で弟を会長にするとどうなるか、というのを語っている。


 生徒会選なんぞに身を入れるのは、低偏差値で吉川に名を馳せるこの高校では異例の事態であると言っていい。この蓮城 要は、こうして昼休みに喧伝するに留まらず、校内放送をジャックしたり、未だ垂らされる自分のテニスインハイ制覇の垂れ幕に生徒会選での愚弟をよろしく、などと書き足していたりと、割とやりたい放題やっている。

 その破天荒たるや、傍の愚物すら黙るほどである。事実、今飛鳥は気恥ずかしそうに明後日の方を向いているが、そんな弟に構わず、要は近所迷惑にならない程度に声を張る。


「この愚弟が会長になった暁には、俺には成し得なかったことを成しましょう」


 などと、とんでもなくハードルの高いことを臆面もなく言う兄に、弟は文字通りに頭を抱えている。

 時折そんな弟を見て、要は穏やかに笑む。その笑みは弟の後方の女子を射抜いているのだが、そんな罪に気付かずに、要は続ける。


「俺は思い返せば面白味のない会長だったが、この愚弟は違います! 自らを愚物と称して憚らないこの愚弟なら、きっと面白おかしく学校を彩ってくれるでしょう」


 ……面白みがない。自身のインハイ優勝の垂れ幕にさんざん追記するような会長でそうなら、果たしてどのような奇特な男を面白い会長と称するのだろう。

 上がり続けるハードルにもはやため息も吐けない飛鳥の背中をバンバン押し、


「我が愚弟、蓮城 飛鳥に、清き一票を!」


 と、お決まりの一言を添えると、丁度昼休み終了の予鈴が鳴った。


「……この愚物に、清き一票を!」


 と、最後に付け加える弟の真意を見て取るのは要と、三階の窓から二人を見下ろすつぼみくらいのものだろう。


 即ち、なぜ俺がこんなことをしているのだろう……?


 嫌になったとかでなく、単純に数奇な巡り合わせに理解が及んでいないのだろう。愚物の積み重ねに比例して遠ざかるのが、生徒会長の座であるはずなのだ。

 少しげんなりする飛鳥をみて笑いながら、二人は撤収。校舎に戻る。

 校舎に帰る道すがら、弟は呟く。


「……なんで俺が……」


 たしかにあの天津 睦美の一声により決意を固めた飛鳥ではあるが、元凶たる兄に対しては恨み節の一つも決めねば気が済まなかった。

 睦美さんを笑顔にしたい、向き合いたいというその気持ちに偽りはないが、その方法が生徒会長などというのはこの兄のせいなのだから、無理からぬことだろう。顔を合わせるたびに、飛鳥はなぜ俺が、なぜ俺がと兄に溢している。


「もう遅いさ、それに、やってみれば案外悪いものじゃないぞ。内申点も稼げる」

「よく言う。そんなもの気にしてないくせに」

「する必要もないしな」

「自慢か」


 愚問だったか、と飛鳥のため息。憂鬱ごと吐き出してしまいたい憂鬱を隠そうともしていない。


「暇人め」

「取り立てて急ぐようなことはないからな。物事は予め予測して対策を立てる。万事それを徹底すれば、基本的には上手くいくさ」

「……暇人め」

「まあ、そんなことより、だ」


 要が心底嬉しそうに続ける。


「お前、あの天津さんとはどうなってるんだ」

「特に進展はないよ。人を気にする暇があるなら自分をどうにかしろよ」

「それを言われると弱いな」


 要とつぼみが付き合ってから三カ月が経とうとしているが、未だにキスもしていないのが二人である。きっかけがないのだ。要はヘタレであった。


「予測対策、万事徹底、聞いて呆れるわ」


 鼻で笑ってから飛鳥は言う。まったくもって、今の要には刺さる言葉である。


「……なあ、頼みがあるんだが」


 突然少し神妙な面持ちになった要に嫌なものを感じたか、飛鳥はつっけんどんに、


「なんだよ。俺は暇じゃないんだ。誰かのせいでな」

「うるさいな、貸しがあるだろ」

「俺にあるのは瑕疵のみだ」

「おお、上手いな」

「普通に感心されても困るが。……で、なんだよ」


 こう、なんだかんだ付き合いの良い弟を、要は心底好いていた。男のツンデレなど一般的には忌避すべきものだろうが、要は普通とは隔絶された男だった。


「ダブルデート、しよう」

「……は? 正気か?」

「ああ、前カラオケで会ってからちょっと思ってたんだ」


 実際、そこまで悪いものではないと要は思う。三人を四人にするのは難しいとしても、天津 睦美という人の人となりは、兄として知っておいて置きたい。まあ、悪い人ではないのはわかるが、目立つのは間違いない。それはあかね祭の後、今まで続くの飛鳥の絡まれようをみれば明らかだし。

 それに、つぼみを誘い出すこれ以上ない理由でもある。一石二鳥といったところだが、弟の返答はというと。


「……まあ、たしかに悪いものではないんだろうが、待ってくれ。俺は今、やることがある」

「やること」

「ああ。多分、避けては通れない類の」

「俺に手伝えることか?」

「……行き詰まったら相談するよ」

「そっか。わかった。じゃあ、後の楽しみにしておくか」


 と、話していると、中央階段に着く。ここで学年ごとに分かれるので、当然二人も、ということになる。


「そうしとけ、じゃあな」

「ああ」


 ヒラヒラと手を振る思うとを見送ると、要も自分のクラスに向かう。

「……やっぱり、何かあるか?」


 最近の弟。あのカラオケであった夜以降の弟は、何やら思い詰めた表情をしていることが多々あった。

 実際のところ、先の提案は、一石二鳥でなく三鳥を狙ったものだった。

 まあ、断られてしまってはどうにもならないが。

 ……いや、考え過ぎかもしれないし、というか多分そうではある。それに、今の自分は大分過干渉よりだ。生徒会長を薦めたことも、含めて。


「……取り敢えずは、諦めるか」


 飛鳥の言う、まずは自分を気にしろ、は実際その通りなのだ。


「……頑張れよ」


 自分に、そして、飛鳥に。

 近い将来、ダブルデートなどというものに繰り出せる時を信じて。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。



一週間の期間を空けての投稿ですが、読んでくださってありがとうございます。これからも度々プロットの修正が必要になるかもしれません。その時は後書きでお知らせさせていただきますので、よろしくお願いします。

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