第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 4
第五幕の四話ですね。
コロナに罹ってしまって時間が取れず、今回文量少なめになってしまっています。申し訳ありません。
次回の更新は普段と変わらないものになると思いますので、よろしくお願いします。
さて、週の中で最も憂鬱な火曜日。始まったばかりなのに活力は失せ、先も長い。学徒が最も嫌う曜日と言っても過言ではないだろうその日だが、俺は当然それどころではない。
昼休み、母のお弁当を平らげた俺は、教室の窓から空を見上げて、思索に耽るばかりだった。席替えのため、今は俺が俗に言う主人公席に腰を下ろしている。
睦美さんの詳細を訊ねる声も、さすがに減ってきた文化祭一月後の昼休みだが、俺に声をかける者がないではない。
それというのは、まあ当然といえば当然、元我が世の春である淀見 つぼみだ。
腕を組み、その美貌を顰めて、
「睦美さんのこと?」
「……ああ」
空を見たまま答える。
あの時、睦美さんの過去を聴いた俺は、何も言えなかった。
俺は愚物であるが、TPOを弁えた馬鹿である。むやみやたらに道化ればいいものでもないのはわかっている。
だから、なにか支えになるようなことでも言えれば良かった。なのに、それすらできなかった。
兄妹仲が良好な俺が口出ししていいのか。そもそも、あまりに浮世離れしていて、閉口線だった。そんな言葉はないが……いや、思考が逸れたか。
とにかく、この二日間は、普段以上に睦美さんに脳内を占拠されていた。
つぼみの方へ体を向けて訊ねる。
果てのない空から目を背けたかった。
「お前は、何も聞いてないんだよな?」
「うん。さすがにあの睦美さんには訊けないな」
昨日のつぼみ曰く、睦美さんは過去に伴う失望とも、振り切った爽快とも言えぬ、空元気なのだけは間違いない笑顔でいた、とのことだ。
まったく想像のつかない表情ではあるが、なぜか、彼女らしいとも思った。
「一緒にゲームして、本読んで。くだらないこと喋ったくらいだよ」
「そうか」
きっと、そういったものこそ最も必要なものなのだろう。平穏こそ、唯一の薬なのだ。
俺は彼女に踏み込み過ぎたゆえにそうすることはできなかったが。
「ほんと、いつ仲良くなったんだ」
「ほんとにね。正直そこまで仲良くなってたつもりもなかったんだけど。ま、今は別にしてもね」
「……まあ、一日泊まれば仲の進展くらいはするのか」
というか、睦美さんもいろいろ迂闊すぎないか。あの過去なのによく知らない人の家に泊まるなどとは。俺への信頼からかもしれないが、だとしても、だ。
まあ、睦美さんは人物眼に長けているのはわかる。俺とでは見えるものが違うのかもしれない。……それはやはり、過去から来るものなのだろう。そう思うとやり切れないが。
「ふむ」
整った顎に手を添え、つぼみが言う。
「睦美さんの抱える問題。一筋縄じゃいかないみたいね?」
「……というか、そういう問題ですらないというか……」
具体的に、何をすればいいのかが、まったくわからない。元凶たる曲土なる人物は現在干渉がないそうだし、睦美さんも渋谷以外なら出歩くのにそう抵抗がないのは、あかね祭に来てくれたことからもわかる。
となれば、天津 華月。あの双子の妹を……。どうすればいいのだ?
警察に突き出す? 睦美さんはそれを望まない。
……改心させる。それができるならそれに越したことはないが……。
わからなかった。ほんとうに。
天津 華月といえば。たしか、すべては過去である、と、そんなことを言っていたか。
……過去。いや、それはそうなのだろうが……。
「八方塞がり、って感じね」
「……まあ、そういうことだな」
そもそも睦美さんが望んでいないのだ、再び家族と共に暮らすことを。
なら、第三者がおせっかいで家族の団欒を取り戻せたとしても、彼女の幸せには繋がらない気がする。というか団欒を望まない睦美さんを要する団欒とは矛盾したものである。
「どうしたものかな」
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
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次回でもよろしくお願いします。
これからは体調とか崩さないようにするので、今しばらくお付き合い頂けると嬉しいです。




