第五幕 相克相生双生運命デュアルLINE 2
五幕の二話です。よろしくお願いします。
小学校に入ったボクたちは、当然ではあるが、環境と共に向けられる視線もリセットされ、ボクほどじゃないけど白い目で見られることも増えていた。
幼稚園に入園した当初よりも、その数は多かった。そして、一つステージが上がった分だけ、色眼鏡の補正も強くなっていた。
クラスの皆が、腫れ物を見るような目で、ボクたちを見るようになったのだ。ボクたちの孤立を避けるためか、厄介者を一箇所に押し込めるためか、単に偶然かはわからないが、ボクたち双子は同じクラスだった。実際、それが功を奏したか、白い目で見られることはあれど、それ止まりだった。ちょくちょく話しかけてくれる女の子もいたけど、周りの子に流されて、次第にこちらに寄り付かなくなっていった。
ボクのそばには、いつも華月がいた。側にいる人間が、華月しか居なかったとも言えるけど、他が居ると居ないとに関わらず、二人は共にいたと思う。
産まれた時から、片時も離れたことがない双子。だから、ボクたち。……少なくともボクは、孤独に苦しむことはなかった。それは確かに、みんなで集まってドッジボールだとかをするクラスメイトを羨まなかったわけではないし、誘われなかったわけでもない。参加しても場が白けるだけなのは明白だから、混ざることはなかったけど。
とにかく、ボクたちは互い以外と必要以上に連むことなく、日々を過ごしていた。
両親も、この時までは普通に無償の愛を注いでいてくれた。この時、までは。
それが起きたのは、入学してから半年が過ぎた頃だった。
普段通りに学校から帰り、靴を脱ぎ散らかしながらリビングに入ると、両親と、なにやら見たこともない大人の男の人が卓について話し合っていた。
当時のボクに内容は理解できなかったが、どうやらお金の話をしていたことだけは理解できた。
興奮冷めやらぬ顔の両親を見て、ニヤニヤとほくそ笑む男の顔が、印象的だった。
その男は名を曲土といい、ボクたちのクラスメイトの女の子(ちょくちょく話しかけようとしてくれていた子)を娘に持ち、後にボクたちの全てを狂わせる男だった。……いや、この時すでに、両親はおかしくなっていたのかもしれない。
男を見送ってから、両親は頻りに言っていた。「これでお前たちに寂しい思いをさせなくて済む」、とかなんとか。
その晩、ボクたちは震えながら眠りについた。日常が一変してしまう、そんな予感を、童心ながら。いや童心だからこそ、悟っていた。
ボクたちの世界は、血を分つ半身。そして、血の源流足る両親と、ちょっとの学校とで出来ていた。だから、半身の次にウェイトを占める両親の変化には敏かった。
……悟ったところで、どうにもできなかったけど。
いつしか、学校から帰ると曲土がいても驚かないのが普通になっていた。彼は言った。「俺は君たちの救世主なのだ」と。その時の全身に走る怖気を、今もボクは覚えている。家族で観た映画に、家族がエイリアンに成り代わられているシーンがあったが、ちょうどそんな気分になった。
ある時、曲土の家に一家で向かうことになった。
何だかよくわからない、民族っぽい服を着せられたボクたちは、頻りに、怖い、行きたくないと述べたが、両親はお前たちのためなんだの一点張りで、全く取り合ってくれなかった。
曲土の家に上がると、そこには男女を問わない大人がたくさんいて、ボクたちを見るや、まるで神様でも見るかのように手を合わせてボクたちを拝んだ。
異様だった。小学生の女の子を拝む大人も、それを見て満足げにする曲土も、同様にする両親も。
その場に、ボクたちの味方なんて居なかった。
ボクたちは、何だかよくわからない民族っぽい装飾を施された座布団に座らされ、そこで大人たちに悩み相談のようなものを持ちかけられた。困惑するボクたちに向かって、悩みを吐露するだけ吐露すると、満足気に去っていく。それが入れ替わり入れ替わり続いて、半日ほど続いた。
曲土は満足そうに頷き、両親は曲土に感謝の意を示しながら手を握っていた。
何の説明も受けないまま、ボクたちは家に着いた。何もかもが理解できないまま、互いの温もりだけを求めて、ボクと華月は抱き合い眠りについた。
早く、終わってくれますように。そんなことを願いながら。
無論、そんなことには、ならないわけだけど。
双生会と名付けられたそれは毎週日曜日に開かれた。次第に恐怖心は膨らんでいき、行きたくないと駄々をこねたが、両親に頬を張られて切り捨てられた。ボクは姉だから、妹を守る義務があると己を奮い立たせ、何度か抗議したが、やがてはそんな意地も砕け散った。二人で涙を湛えながら抱き合う夜が続いた。
両親は変わってしまったのだ。幼心に、そんな絶望が重くのしかかっていた。
唯一の救いは、曲土の娘だった。明美という彼女は、普通の感性を持っているように見受けられた。実際、何度も赴く内に少しずつ話すようになり、それにつれて、彼女はボクたちに共感してくれた。
そうしていつしか、ボクたちの前で曲土に抗議してくれたことがあった。「二人が可哀想。やめてあげて」、と。
その次の日から、彼女は学校に来なくなった。
小4の夏のことだった。
ボクたちは悟った。ああ、抗えないのだ、と。
そんな絶望を抱えて、ボクたちは学校に通っていた。小4ともなれば、少しは色々なものが見えてくる。曲土は相当な金持ちで、多分このことを警察とかに持ち込んでももみ消されるだろうということ。そして、両親はもう完全にダメだということも。……それでも、優しかったあの頃を思うと、物悲しく思った。
学校では、相変わらずボクたちは孤立していた。けど、それでも家にいるよりは大分マシだった。少なくとも、学校ではボクたちを拝み倒す輩はいないのだから。
明美ちゃんのことを考えると、友達を作るなんて気にはならなかったけど。
暫くは、そのままの生活が続いた。
異様ではあったが、逆に言えばそこ止まりではあった。いつしか、怖気だつような気味の悪さにも慣れていた。
変化は、中学生になってから訪れた。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
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次回でもよろしくお願いします。
やっぱジャンル変わってますねこれ…次の投稿で回想終わらせるのでもうすこしだけお付き合いいただければ……




