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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第四幕 相克相生運命デュアルLINE
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第四幕 相克相生運命デュアルLINE 8

四幕八話ですね、よろしくお願いします

 さて、ボクのスマホが、久しぶりに飛鳥君以外からの連絡を告げたのは、今朝七時のことだった。


 マホちゃんの通知音は他と変えてあるから、突如として鳴り響いたプレーンの通知音はボクの心臓を跳ね上がらせた。


 パパやママ……ではないだろう。あの二人はもうボクと関わることを望むまい。となれば、華月……?


 その名前を思うと、ボクは怖くて堪らなかった。ミノムシみたく毛布にくるまって十分ほど経った頃、意を決してスマホに触る。


 さて、通知の詳細は?


 それは、魔法のアプリとは無関係の普通のチャットアプリが鳴らしたものだった。半年ぶりくらいに仕事をしたアプリが告げたチャットを恐る恐るみると、ボクはたまげた。


《飛鳥が生徒会長になったら、面白そうじゃない?》


 という、つぼみさんからのメッセージが表示されていたのである。

 あの高揚ですっかり忘れていたが、ボクはつぼみさんと連絡先を交換していたのだった。ボクはつぼみさんを警戒して監視してやろうと連絡先を交換したはずだったが、浮かれるあまり失念していたらしい。


 といっても、飛鳥君の近況が聞きたければ飛鳥君に訊けば良いのだから、仕方ないか。

 まさか、つぼみさんが悪意を持って飛鳥君を弄んでいるわけではないのだし。

 そこまで考えて、やっとチャットの内容に思考を向けた。


 生徒会長、蓮城 飛鳥。……なんて馬鹿げた響きだろう。そして、なんと、面白そうな響きだろう。

 となれば、是非もない。


《話に聞く時点でもう面白いから、実際になったら堪らないね》


 そう返信した。


 すると、ならそれを飛鳥君に送れというつぼみさんの要望が来た。……なるほど、合点がいく。どうやらつぼみさんは飛鳥君を生徒会長に仕立て上げたいらしい。けれど飛鳥君はそういうのをやりたがるタイプではないだろうから、背中を押す役をボクに頼んだというわけだ。


 生徒会長蓮城 飛鳥は、もうなんだか響だけでジワジワと頬が緩むような、そんな馬鹿らしさを孕んでいる。


 そんな飛鳥君の愚痴を聞いたりするのはとても面白そうだから、協力しない理由は見当たらなかった。


 なので、つぼみさんに了承のメッセージを送ってから、すぐに飛鳥君を煽るチャットを寄越した。


《馬鹿みたいな生徒会長。ボクは素敵だと思うよ》


 ニマニマと、口角が釣り上がった。


「ふふ、生徒会長かあ」


 そういえば、ちゃんと学校に通っていた時は、ボクは生徒会副会長だった。会長は勿論華月だ。とはいえ、華月はともかくボクはお飾りそのもので、ボクが何かをしようとすると先んじて他のみんなが手を付けた。多分、気を遣ってくれていたのだろうが、ボクが手を出すと禄なことにならないと言外に告げられているようで少しむしゃくしゃしたのを覚えている。そして、そんなボクを華月が微笑ましげに眺めていたのだ。


 ……本当に、あの頃は、というか、あの日まではボク達は仲の良い姉妹だったのだ。


 ……なんで、こうなってしまったのだろう。あの日が、全ての転機だった。

 あの日。裸のボクを、涙を流しながら、愛撫する華月の姿が、思い起こされた。


 あ、ヤバい。


 すぐに、あの日のことを考えるのをやめ、飛鳥君との日々に変化させる。

 そうして暫くすると、少しづつ動悸も収まっていった。


『睦美、大丈夫か……?』

「うん……大丈夫だよ、マホちゃん。ありがとねえ」


 飛鳥君と交わしたチャットの数々。飛鳥君が、ボクを助けに来てくれたこと。飛鳥君と、一緒にお祭りを回ったこと。手を繋いで、先生の言葉に耳を傾けたこと。それら全てが見せる未来の運命への希望。それが、過去への耐性を少しずつ作ってくれているのがわかる。


 震えるばかりだったボクが、前を向いて生きている。飛鳥君と向かう運命に向かって。

 本当に、計り知れない大恩だった。


 いつか、あの日のことも乗り越えて、二人は生きていける。少し頼りないマホちゃんの保証だけど、希望を見せるには十分だった。

 そうして今日、初めてボクは、あの日の記憶に恐怖以外を見出せた気がした。

 直視できなかった記憶の、見ないでいた部分。見えていたけど、恐ろしくて弾いていた部分。


 ……なぜ、あの時華月は、泣いていたのだろう……?


 あの日。そういえば、飛鳥君と対面するきっかけを作った先月の時も、華月は、口ではボクを責め立てていたが、その目はどうだったか……?


 過去の華月。かつて愛したボクの恐怖。思えば、華月がなぜあのようなことをしたのか、というのを考えたことはなかった。


 本当に、あの日あの時まで、ボクら姉妹に蟠りは無かったのだ。

 ……華月がボクへの不満をどこかで溜め込んでいたとか、そういう可能性はないではないけど。


 ともかくあの日。華月がボクを犯したあの時。テーブルの上、ボクも、そして華月も泣いていた。

 泣きながら、ボクの……。


「う」


 しかし、耐性はここらで限界を迎えたらしい。込み上がる吐き気に駆り立てられるまま、ボクはトイレに駆け込み、ゲェゲェ吐いた。

 それでもなんとか飛鳥君のことを思い、自分を鎮ませた。五分程かけて自分を落ち着かせる。


「……華月……」


 たった一人の、ボクの妹。

 妹にして、生涯最大の絶望。

 けれどそれでも、ボクの、妹。


「どうして……」


読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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