第四幕 相克相生運命デュアルLINE 4
四幕四話ですね、よろしくお願いします。
「飛鳥君、まだかなあ」
空も茜に染まる5時ごろ。
布団に潜り、パタパタと足を揺らしながらボクは呟いた。ボクの楽園、ボクの檻。そんな自室で、ボクは飛鳥君からの返信を待っている。
『しかし、毎回思うが、50もの通知は一気に見ると気後れするものではないか』
「そう、かも。あれ、ボクヤンデレっぽい?」
『逆の立場になった場合を考えろ。お前が学校帰りにふと携帯を開いた時に通知が50も60もあったらどう思う』
「ボクのこと、思ってくれてるんだなあって思う」
『……駄目だな、これは。全く、大体なんだお前は。もうゾッコンじゃないか。自分の問題を片付けてからじゃないと向き合えないとはなんだったんだ』
「そ、それは、だって、ほら。だってなんだもん」
『それで傷つくのは蓮城 飛鳥だろう』
「……そうだね……そろそろ、ちゃんと向き合わなきゃいけないよね……」
今の関係も心地よいものだが、それが続くのであれば、いずれ彼にとってボクは柵に変わるだろう。それは、絶対に嫌だった。
「大丈夫かな……鬱陶しいとか、思われないかな……」
そんな、なんとも乙女じみた懸念が、だんだんと膨らんでいく。月並みな例えだが、風船のようだ。
「誰かを好きになるって、怖いね、マホちゃん。運命って、怖いよ」
自分が、自分でなくなるような感覚を覚えた。今までに感じたことのない恐怖だった。ボクの短い人生において、経験したことのない感情の奔流。それが今ボクを呑んでいるのだ。テセウスの船ではないが、ボクという存在への疑念は募るばかりだった。
かつて恐れていた言葉は、今では別種の恐怖と、そしてそれ以上の期待感とを伴ってボクの傍にある。
『そうだ。それが、運命だ。今お前の中にあるものこそ、お前が最も向き合うべき運命だ。お前の人生を左右する、な』
マホちゃんが、シンと張り詰める矢の言葉を放った。
その言葉にすっかりボクの心は射抜かれてしまったらしく、恐怖心は膨らむばかりだった。
けど。それでも、向き合わねばならないのは、わかる。あの祭りで得た高揚は、確かにまだボクの中で燻っているのだ。
そして、そんな火を絶やしてしまえば、あるのは凍える孤独。否、それよりもっと恐ろしい闇の混沌だ。
ボクの抱えるもう一つの運命。あれに抗う術を、飛鳥君を失ったボクは持ち合わせてはいないだろう。
「……決めたよ、マホちゃん。ボク、飛鳥君をデートに誘う」
『おお、覚悟を決めたか、睦美!』
「……決めざるを、得なかった、って感じだけどね」
本当は、もっとゆっくりと運命を確かめたかった。けれど、そんな逃げ腰では、きっとボクはいつまでもこのままだ。
……ボクの抱える全てを、晒す時が来たのだ。考えることすら、恐ろしくてならないけど。きっとそれは、デートなんて甘い思い出に終わらせることを許さないけど。
……自己満足、かもしれないけど。
決めた。飛鳥君に、報いるのだ。全力でボクに向き合ってくれた飛鳥君に。
だから、飛鳥君が連絡を返してくれたら、二人で出かける話を切り出そう。
そう思って飛鳥君の返事を待ち、午後の6時を迎えた頃だ。
飛鳥君から、チャットが来た。
ボクが送った取り止めもないことに対しての返答を何個か返した飛鳥君に対しボクが切り出そうとした時、先んじるように飛鳥君からチャットが届いた。
その内容に、ボクは運命を感じざるを得なかった。怖いほどの、運命に。
《週末、一緒に出掛けよう》
運命に、人の意志の介在する余地はない。運命という歯車は、人の力で御するには大きすぎる。
今、ボクが直面したこの状況に、果たして運命を感じない女の子などいようか?
「……えへへ」
恋を運命とするなら。運命という輪は、人の感情が織り成す万華鏡。
ボクだけのたった一つの運命は、何かに倣うことをゆるさないし、だからこそ価値が在る。
ボクの向かうべき運命。運命が向かうべきボクで在るために。
この高揚感に、嘘はつかないと誓おう。
例え、その日の最後、ボクに涙が浮かんでいる可能性が高くとも。
それこそは、エデンに至るにあって、必至の過程なのだ。
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次回でもよろしくお願いします。




