第三幕 愚物混沌祭典デステニーLINE 10
三幕の十話ですね、よろしくお願いします。
後夜祭も終わりが見えてきた。
終わりとはつまり、その年の優秀賞の発表である。日中教員たちがクラスを見回って、いろいろなことを評価するのだ。その結果が、今明らかになろうとしている。
最優秀賞を発表するために、校長が、すっかり綺麗になった壇上に上がった。
ありがたいクソ長演説を、俺と睦美さんは手を繋ぎながら聞いている。
胸の高鳴りはあるが、自然と。そうできていた。昼間のようなアクシデントではなく、自分達のちゃんとした意志で、繋がっていた。
そして、優秀賞の発表となった。
俺の手を握る睦美さんの手に、力が篭った。
結果は。
「三位、三年五組、戦うレストラン。二位、三年三組、恋情たっぷり蓮城カレー。そして、一位は、二年四組。団子屋蓮城。みなさん、よく頑張ってくれました」
発表の瞬間、散在するクラスメイトたちが立ち上がって雄叫びを上げた。
俺は、睦美さんが隣にいる手前、そうはしなかったが、気持ち的にはクラスメイトに倣っている。
「よかった、よかったねえ、すごいねえ」
隣から、そんな声がした。無論、睦美さんのものだ。心の底から、祝ってくれているのが見て取れた。
その顔を見た瞬間。ほんとうに報われたと思った。全ての努力が結実し、この睦美さんの笑顔があるのだ。誇らしい気持ちでいっぱいだった。
クラスの代表が、賞を受け取りに校長の下に向かっていく。俺のクラスは誰が向かうかは決めていなかったが、俺かつぼみのどちらかだろう。なら、つぼみが行った方が多分いい。その旨をつぼみに伝えると、ちょっと不満げだったけど、つぼみが賞を受け取りに行った。
「よかったの?」
「……いいんだよ」
理由は、口にはしなかった。みんなの前で賞を翳すことなんかより、ここで睦美さんと共にいることの方が、俺にとっては大きなことだ。ここで睦美さんの笑顔を見ている方が遥かに達成感を刺激されるし、そんな個人的理由でことを成した俺が表に出るべきではない。
そして、盛況の中、後夜祭は終わりを迎えたのだ。
無論、俺たちの手は、離れることはなかった。
◆
あかね祭、当日の夜。
家の中で、俺は布団に包まっている。
祭の後、クラスメイトからの質問責めは凄まじかったが、睦美さんを送る名目でなんとか抜け出した。
帰り道では人の目があるから、手を繋いだりはしなかったが。
最高に楽しかった、ありがとう。そんなような言葉をしきりに言いながら、睦美さんは帰っていった。
「は……はは」
今日を振り返れば、完璧だったと、自信を持って言える。兄に土をつけられなかったのは悔しいが、そんなところも馬鹿らしくていいだろう。
そうして、俺はやっと純粋に睦美さんのことを考えていた。
あの美しく、優しい。けれど影のある少女。
……俺の、運命の人のことを。
まだ、面と向かってそうは言えない。きっと、彼女の抱える問題を片付けて、その時初めて俺たちは一つになれる。そんな気がしていた。
だから。
これからは、自分のためでなく。彼女のために、生きていこう。
俺に、根拠のない自信をくれるあの人のために。そして、それはひいては俺の愚物足るという願望を叶えることでもあるのだ。
……いや、違うか。
そんな打算は抜きにしよう。俺は、彼女が好きなのだ。だから、彼女のためが、俺のため。ロジックなど、それだけでいいのだ。
祭を終え、祭を過去とした時。やっと俺は、燻り続けた恋心を、過去にすることができたのだ。
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次回でもよろしくお願いします。
三幕はこれにて閉幕。それに伴い一区切りですね。
ですがまだまだこれからなので、今後もお付き合い頂けると嬉しいです。




