第三幕 愚物混沌祭典デステニーLINE 4
三幕四話ですね、よろしくお願いします。
「あの、ごめんね。さっきは」
「いや、気にすることはないさ」
教室を出てすぐのところで、ボクと飛鳥君はどこに向かうか話していた。
聞くに、このあかね祭の出し物は、大きく分けて二枠だ。クラスと、部活と。ごく一部、有志の出し物があったりもするらしいが、物の数ではないそうだ。
「なんかしたいこととかあるか?」
「えっとねえ、お腹空かせてきたから、まずは腹拵えを」
「なるほどな。となると……」
案として飛鳥君が挙げたのは、焼きそば、カレーといった定番の品々。そして、毎日訪れるらしい某弁当チェーン店のお弁当……。なんとも、商魂たくましいと言うべきか。学園祭であろうと商機を学生に譲る気はないらしい。とはいえ、今日は学園祭である。ならば。
「クラスの出し物がいいよね。青春って感じ」
「わかった。混沌に身を委ねるか」
「……言い方考えようよ」
取り敢えず、学園祭クオリティだから一つで足りる量ではないだろうということで、いくつか回ることにした。
一つ目の焼きそばは、なかなかに美味しかった。しかし飛鳥君の言うように量と値段が釣り合っていない。それと、ボクら二人を見て驚愕する人がやけに多かったのは、果たしてどういう意味なのか。
そのまま、一階のカレーに向かった。
「敵情視察だね。ワクワクするよ」
「今視察して何に活かせるわけでもないが、まあカレーには赴こう。紹介したい人もいるしな」
まさか、と思った。というか十中八九あの人だろう。
「頼もう!」
扉を開けるや、飛鳥君が言った。クラス内は、特に凝った内装というわけではないが、繁盛ぶりなら飛鳥君のクラスといい勝負だ。どうやら、品物のクオリティが売りらしい。
一階は三年生のクラスが並ぶ階だ。だというのに畏まる様子もなく全く普段通りだったし、それを咎める先輩もいなかった。どころか、またあの馬鹿が来たぞ、と笑われる始末だった。しかし、笑うといっても和やかなもので、そこに不吉なものはない。飛鳥君の人徳の成せる技なのだろうか。……こういうのも人徳と言うのかな?
朗らかな雰囲気を纏っていたが、隣のボクを見つけると、彼らの見る目もまた変わった。「なんだその娘は」「めちゃくちゃ可愛いぞ」「お人形さんみたい!」……聞いていると恥ずかしい言葉ばかりが並ぶ。中には、アルビノについていう者もあったが、大抵は可愛いとかいった麗句だった。
幼少の頃からよく言われた言葉だが、やはり言われれば嬉しいもので、頬は多分紅潮していることだろう。
「さて、愛する弟が来たとあらば、全力でもてなしたいが……隣の彼女はどなたさんかな?」
奥から、重鎮の如く現れたイケメンは、見覚えのある人物だった。白い割烹着に身を包み、腹の虫を刺激するカレーの匂いを漂わせている。
名は確か、要。蓮城 要だったか。名前から推察した通り、やはり飛鳥君のお兄さんらしい。
「ん? どこかで……ああ、体育の時の。なるほどな。しかし、俺の愚弟と関わりを持つような人には見えないが」
「……その節は、どうもありがとうございました。ボクは、天津 睦美。この飛鳥君とは、えっと……」
「ああ、失礼。もしかしたら知ってるかもしれないけど、改めて。俺は、蓮城 要。察してたみたいだけど、そこの飛鳥の兄だよ」
ボクと飛鳥君の関係。さて、どう説明すれば良いものか、全くわからない。
「二人こそどういう関係なんだ」
飛鳥君が言った。当然の疑問だと思う。
「以前、体育の時に外周走をしていたんだがな、この娘が体調を悪そうにしているのが見えたんで、ちょっと様子を見に行ったことがあったんだ」
「そうなの、飛鳥君」
「なるほど。言ってくれれば付き添ったのに」
「知られたら迷惑かけちゃうと思って」
「で、二人の関係は」
お兄さんが再び催促した。よほど気になるらしい。
「まあ、俺にも色々あるのさ。ところで、俺は客な訳だが?」
ここで、互いに運命の相手だと言えないのが、ボクたちのしょうもないところだ。いつかは、臆面もなくそう言える日が来るのだろうか。
「客である前に弟だ。が、しかし。隣の彼女にまでそうは言えないな。仕方ない、座れよ」
促されるまま、机を二つくっつけた卓に着いた。
「こんな時でなければじっくりと話し込みたいところだが。そうか、よかったな、飛鳥」
「……ほっとけ」
「全く、隅に置けないな!」
お兄さんは、実に嬉しそうだった。
「天津さん。知っての通りこいつは愚弟だが、まったくもって、見どころのあるやつでもある。仲良くしてやってくれると、兄としては嬉しい」
なんかお見合いでもしている気分になった。ヒューヒュー! といったヤジが方々からとんで来ては、お兄さんが諌める。そんな繰り返しだった。飛鳥君ですら恥ずかしそうにしているから、ボクはきっととんでもないことになっているだろう。
「もういいだろ、早くしろよ」
弟の悪態を微笑ましそうに受けて、お兄さんはカレーを盛り付けて来た。
「このカレーとライスのように、ベストマッチな関係になれよ!」
と、大して面白くないジョークと共に出てきたカレーは、ジョークとは裏腹にとても美味だった。
「……学園祭のカレーに何言ってんだよ」
「それは心配ない」
お兄さんが、満面の笑みで言った。
「これは、俺が作ったカレーだからな」
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