第三幕 愚物混沌祭典デステニーLINE 2
三幕の二話です。よろしくお願いします。
『覚悟はできたな、睦美』
「……も、もちろん、だよ。マホちゃん」
来る9月の31日。あかね祭当日である。
以前の下見の甲斐あって、ボクはすんなりとこの吉川の地に辿り着いた。
そして、ここは吉川東高校である。その校門に、今ボクはいる。
雲一つない晴天だが、秋の冷気が少し混じり、過ごしやすい陽気だ。つまりはボクの大敵でもあるけれど、お天道様の加護の元に生きる者としては、心地よい、良い天気だと言わざるを得まい。
服装は気合を入れて、純白のワンピース。あまり流行には詳しくないなりに精一杯のおめかしをして、今ここにいる。日傘をさしたこの様相は、深窓の令嬢のように見受けられるかもしれない。……いや、所作の気品みたいなものはボクにはないし、それはないか。
幼少の頃から、これを着ていれば大抵チヤホヤされたものだ。紫外線予防の観点からすれば黒い衣服を纏った方が良いのだが、黒は妹を想起させる。全身を覆う黒というのは、ボクとしては恐ろしく感じてしまうのだ。
「じ、じゃあ、行くよ。マホちゃんは、今日は静かにしててね」
『はいはい』
そうして、ボクは不思議そうに見つめる教員らしき男性を通り過ぎ、吉川東高校の敷地に踏み入った。
アニメで見るように、校舎外に出店があったりはせず、基本は教室を使って出し物は催される。一般(多分PTAの人とかかな?)のフリーマーケットが少々出店してはいるが、客入りはあまり良くなさそうだ。
校舎に目を向ける。飛鳥君から聞いた通り、改築から間もないらしく、校舎の外観は綺麗なものだ。
そのまま校舎、その2階に赴く。飛鳥君達2年生のクラスは2階にあると、先日あらかじめ尋ねておいてあるから、迷わず飛鳥君のクラスに向かう。2年4組の教室は、階段を登り下駄箱手前から四つ目。
廊下を見ると、どのクラスも賑やかに繁盛しているらしいのがわかる。
友人達と一つの目標に向かって協力し、何かを作り上げる。まさしく青春だ。今のボクにはないものだ。彼らは、ボクなんかよりよほど輝いてみえた。華月の目は、節穴であると言わざるを得ない。ボクが輝いているなど、何かの冗談であるとしか思えない。
一瞥して、その中でもとりわけ繁盛しているのが、どうやら飛鳥君のクラスらしい。
飛鳥君の言う、悪魔みたいに可愛い娘の恩恵なのだろうか。
なんだか訳もわからずムッとして、少し足早になった。
どんな顔か拝んでやる。ルックスならボクだってそれなりに自信はあるんだから。
ほら、すれ違うみな、ボクを見ているじゃないか。……アルビノだからかもしれないけど。
そして、2年4組の前に辿り着き、廊下に伸びる列に並んだ。行列になっているのはこのクラスだけだから、本当に繁盛しているらしい。飛鳥君の頑張りが報われているようで、なんだか嬉しかった。
5分程待っていると、ボクの番が来た。
スライドドアが開かれ、着物を着た女の子が、ボクの目の前に現れた。一瞬、ボクを見て驚くような表情をしたが、転瞬取り繕って、笑みを浮かべた。
彼女が視界に入った瞬間から、ボクの目はその娘から離せなかった。ボクとは違う深黒の髪と瞳は、見るものの目を引き寄せる魔力を帯びている。顔立ちは精緻であり、浮かべる笑みは朗らかで愛らしい。女の子がこうありたいと思う女の子、そして、男の子がこうあってほしいという女の子像そのままと言っていい。美しく、可愛く、愛らしい。蠱惑的ですらあり、あの華月を間近で見続けてきたボクですら、素直に美しいと思った。
……この娘だ。確信が生じた。この娘が、飛鳥君の言う悪魔みたいに可愛い娘に違いないと、断言できた。
「いらっしゃいませ。ようこそ、おいでくださいました」
きっとこれは、勝負の時だ。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。
次回でもよろしくお願いします。




