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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第三幕 愚物混沌祭典デステニーLINE
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第三幕 愚物混沌祭典デステニーLINE 1

三幕の一話ですね、よろしくお願いします。

その祭は、2日間をかけて催される。1日目は、内校生徒とその保護者に向けて。

 そして、2日目には、一般客にもその門扉が開かれる。


 馬鹿高校の愚骨で組み上げられた馬鹿どもにとって、その祭典は年に一度、ほどほどに愚物の本領を発揮することを許される場である。

 口ではやいのやいの文句を垂れるクラスのDQN共も、いざ始まれば、大抵は割と真面目にその祭に取り組む。


 一般客も巻き込んで体育館でレクリエーションを繰り広げる後夜祭など、生徒を戒めるべき教員ですら、馬鹿と馬鹿して馬鹿になる。


 体育祭でもなんでもそうだが、馬鹿共はみな、祭が好きなのだ。

 したがって、この高校は、祭が大好きなのである。

 埼玉県立吉川東高等学校、学園祭。通称、あかね祭。

 ここに、開幕である!





 始まりを迎えたあかね祭は、ほどほどに盛況であった。

 目立った異常もなく、目立った馬鹿が大目玉をくらうくらいのものである。

 無駄にきつい校則は、祭であろうと変わりはしないのだ。

 ルールの中の自由というやつか。


 多少の揉め事はあれど、1日目は、さしたる問題なく終えられた。

 そして、祭は2日目へと進む。

 一般客までもを巻き込む、真の祭、真髄である。


 我が2年4組は、事前の準備から大きな変更なく、団子屋をやっている。1日目は、それはもう盛況だった。団子自体はオーソドックスなもので、特筆することもなく無難に美味いが、それを些事とするくらいに、プロモーションと給仕の女子陣の着物姿が好評だったのだ。特につぼみなどは、つぼみ目当ての見物人が集って廊下に行列ができるほどだった。つぼみが担当の時間とそうでない時間とで、客の入りに大分差があったのは実行委員としては嬉しいやら悲しいやらだが。


 ともあれ、不安材料などは全くない。

 ……クラスの出し物に関しては。

 現在、あかね祭は2日目の朝。開店前の準備中である。

 睦美さんは、曰く正午過ぎくらいにこちらに赴くそうだ。


『さて、今日こそが本番だぞ』


 その言葉はアプリのものだが、同時に俺の内心で紡がれたものでもある。

 1日目などは、前哨戦に過ぎない。全ては、今日この日のためにあるのだ。我らが文殊の知恵を多少借りた団子屋は、意地を捨てた甲斐あって盛況だった。そうでなくては困る。


 先週、恥を偲んで兄に助力を乞うた。兄は当然のように、しこりを無視して最大限の助力を惜しまなかった。その献身ぶりと来たら、公私混同職権濫用を疑いかねないものがあった。


 なにせ、兄のインハイ優勝の垂れ幕に我がクラスの宣伝が追記されていたのだ。あれは仰天だった。《蓮城 要 テニスインターハイ優勝! けどそんなことより弟の団子屋をよろしく》、というのがでかでかと校舎に垂らされていたのである。初見時は空いた口が塞がらなかったものだ。そして、それが咎められずに感嘆される辺りが、馬鹿高の馬鹿高たる所以、そして、兄の人徳の成せる技だろう。


 その垂れ幕は1日で撤去される憂き目にあったが、それでも宣伝効果は抜群だった。生徒の全てが、立ち止まり立ち止まりみるのだから当然か。全くもって発想の根本が異なる兄である。見えるもの……いや、見ているものが常人とは違うのだ。


「順調らしいな、飛鳥」

「兄さんのせいでな」


 思考していれば、当の兄が現れた。クラスの面々が湧く。未だ、学園のマドンナつぼみと学園の王子の兄が交際を始めたことは吉高を震撼させる大事である。にも関わらず、彼女でマドンナのつぼみを差し置いて愚弟の名を押し出して宣伝したのだ。側からみればブラコン拗らせ過ぎてて気色悪いレベルだろう。


 ここ最近、兄はいくつ話題を作ったのか。原因の一端を担う分際で言えたことではないが、数える気も失せるというものである。

 ただ兄弟で会話しているだけだというのに、クラスの奴らはジロジロとこちらを見ているし、隣のクラスからも見物が出る始末だ。


「そいつは何より。いや、はしゃぎ過ぎたかと心配してたんだが、杞憂に終わりそうで本当に何より」


 と、並外れた美貌に、恐ろしく人好きのする笑みを浮かべていう。元来世話焼きの兄だから、俺に面倒をかけられている時はたいてい笑顔だが、今日はいつにも増して笑みが深かった。


 ……多分、それだけ俺のことを心配してくれていたんだろう。

 それは、人としての格を鑑みれば自意識過剰と笑うべきだ。しかし、笑いたくば笑わせよう。

 泣きたいくらいに情けないのに、溢れるのはこちらも笑みだった。二人向き合って笑い合うと、一月時を遡った気分になった。


「とはいえ、俺のクラスも負ける気はないぞ。勝負といこうか、飛鳥?」

「いいだろう。前哨戦には、相応しい」

「そうか。結果を楽しみにしていよう。もちろん、手は抜かないからな。……後夜祭でも。つぼみも、後でな」


 言って笑んでから、兄は続ける。


「じゃあ、失礼するよ。2年4組のあかね祭が、楽しいものになることを祈ってる。……言うまでもなかったかな」


 兄は手をひらひらさせながら自分のクラスに帰っていった。


 俺たちに向けられていたはずの視線は、兄の方に向かっていた。あの兄だから、あちらが目立ってこちらは見向きもされぬというのは、今更どう思うこともない。劣等感などはもはや刺激され尽くした。幼少の時から兄は俺を溺愛し、俺が何かを始める度に兄は俺と一緒にそれに勤しんだ。そして、圧倒的才能を発揮して俺を蹂躙するのである。幼いころはそれで悶着があったものだが、流石にもう慣れたし、あの兄を憎むなど、俺にできることではない。


 ……ブラコンブラコンと表立って言われるのは兄だが、俺も大概なのだ。


「さて、勝つぞ!」


 それは、兄に対して。そして、つぼみへの未練に対しての言葉であったが、その日は多くの物事にとっての決着には至らず。新たな始まりに過ぎなかったのである。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。

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