第二幕 途上運命前夜デステニーLINE 9
第二幕の九話ですね。よろしくお願いします。読んでくださっている方、ありがとうございます。
9月も直に終わろうという23日。飛鳥君の言うあかね祭をあと一週間に控える日。
暖気もだんだん日本に飽きてきて、寒気に席を譲り始める秋の朝。
ボクは、変わらず部屋に篭っていた。昼になればとんぼ返りする暖気を呼び込む為に毛布に包まり、スマホを眺めている。
引き篭もりではあるが、昼夜が逆転したりはせず、規則正しい生活を送るニートがボクである。
時刻は朝の7時。今日は木曜日だから、飛鳥君は学校だろう。残り一週間となったあかね祭の準備に明け暮れているに違いない。
《直にあかね祭だな。好みだと言っていたあん団子、なかなかいい仕上がりだと思う》
《ほんと? 楽しみだなあ》
《ああ、楽しみにしていてくれ。自信はある》
「えへ、えへへ」
自然と、笑みが溢れた。自分は一人ではないという実感。スマホ越しでも伝わる暖かい人の温もりが、心地よかった。
『どうした、イカれたか』
「うるさいよ! というかマホちゃん全部見てるよね!?」
『いや、しかしな、あまりにニヤけているものだからな』
「そんなにい?」
『そんなにい』
「馬鹿にして。いいもん、ボクはどうせ男を知らないよ」
『男を知り尽くした大人の女なんてものよりは、純情初心な乙女の方が好かれようよ』
「そうなのかなあ」
『お前とて、プレイボーイよりは誠実な男子を好むだろう』
「……ただの言葉遊びな気がしてきたなあ。いや、たしかに百戦錬磨の手練れ、なんていうのが出てきても嫌なんだけどさあ」
それは大人になったらどうかは知らないが、学生の恋とは、プラトニックなものだろう。
玉の輿を狙うような打算などなく、ただただ気持ちに正直な恋。
例えば、運命、なんて不明瞭なものだけが標となるような。
子供っぽいと笑われるのだろうが、女の子はいつだって白馬の王子様に憧れるし、そういう運命に恋焦がれる。
そんな幻想を卒業したら、多分乙女のやめ時なのだろう。
『女を知り尽くした男は拍が付くが、男を知り尽くした女なんてのは尻軽だ。そういうものだよ、男にしてみればな』
「アプリにそんな男女の情緒があるものかなあ」
『実を言うとな、無い』
「これだもんなあ」
『ほら、さっさと返せよ』
「わかってるよ。というかマホちゃんが邪魔したんだから」
《うん、待ってるね。あ、あん団子以外って、あと何があるんだっけ?》
《みたらし、草、きな粉、ごまの団子各種。後はお茶とお汁粉だな》
《いいねえ、お汁粉。早く食べたいなあ。自信もあるらしいし、結構繁盛しそうだね》
《そうだな。宣伝に最適なのも居るから、当日はそれなりに賑わうと思うよ。まあ団子でなく、女子陣の晴れ姿目当てだろうが》
「……」
『男ってバカね、か?』
「本当だよ」
ボクが学校に通っていた時も、チヤホヤ祭り上げられたものだった。
当時は、物珍しいボクを客寄せパンダに使っているだけかと思っていたが、今考えると、流石にそれだけではなかったと思う。
自慢ではないが、ボクは、自分の容姿を醜いと思ったことはない。なにせ、ボクの隣にはあの華月が常にいて、姉のボクすら目で追ってしまうような美しさだったのだ。
それと、色は違えど瓜二つとくれば、醜いと思う方がおかしいというものだった。
とはいえ、それが招いたものをボクは有難いと思ったことはないけど。
というかそもそもボクを担いでたのは男子だけではなかったし。
《可愛い娘、いるんだ?》
《悪魔みたいに可愛いのが一人いてなあ。なかなかに目を引くやつだよ》
《ボクより?》
《……答え難いことを訊いて虐めないでくれ》
《あはは、ごめんね》
『ここは、嘘でも睦美の方が可愛いと言うべきだったろうに』
「嘘でも、ってどういう意味さ。それに、飛鳥君は気を遣ってくれてるんだよ。ボクの……アルビノのことに、触れないようにしてくれてるんだよ」
しかし、その悪魔みたいに可愛い娘というのは、どうも引っかかる。
彼にとって、ただならぬ相手であるという、そんな予感がする。
……ただの勘でしかないが、どこかそれは確証を持ってボクの中に在った。
同時に起こったのは、危機感にも似た、焦燥感だった。
荒唐無稽と自分でも思うが、彼がボクから離れていってしまうような、そんな恐ろしい未来が想起された。
凍えるような孤独の寒さが、またボクを呑むのか? そう思うと、この季節にも関わらず震えが止まらなかった。
このままでは、いけない。そんな気がしたのだ。
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