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馬鹿みたいに恋がしたい  作者: 川面月夜
第二幕 途上運命前夜デステニーLINE
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第二幕 途上運命前夜デステニーLINE 8

二幕の八話目ですね。読んでくださってありがとうございます。

時間結構飛んでます。


 茹だる熱気に、秋の冷気の混じり始める九月の下旬。我が吉川東高校、文化祭。通称、あかね祭の準備に学徒達は明け暮れ……ることはない。


 適当に流して、適当に楽しむ。波に乗る能力は、馬鹿高だけあって高いが、波を起こす能力は無かった。いや、そもそも起こそうとしていないのか。


 そんなわけだから、徹夜で学校に泊まり込んで内装を作り込んだりするような生徒はいない。やる気以前に校則で禁じられている。


 馬鹿高の校則は厳しい。携帯を開くことすら許されないのだ。徹夜の泊まり込みなど言語道断だ。

 結果、適当に流して適当に楽しむ風見鶏のスタンスが大半を占める。


 手は抜いていないけど、全力ともいえない微妙な走者の中で、この俺はフルマラソンを全力ダッシュで駆ける馬鹿のように浮いていた。あまりにぷかぷか浮くものだから、まるで飛ぶ鳥の様だとつぼみに揶揄された。


 けれど、俺は誓いを立てたのである。あのアルビノの少女に、全力で楽しんでもらうのだと。

 授業は終わり、放課後である。うつらうつら授業を受け続けた俺は、放課後を迎えようやく遅すぎる覚醒を遂げ、その全力を尽くして企画を練っている。


 無論、あかね祭まであと一週間を数えるのみだ。大した変更はできないが、それでもやれることはやっておきたかった。

 とはいえ、ぷっかぷかに浮きまくる全身全霊で練り上げた企画だ。今更見直して、改善点が見つかるとも思えない。


 ……いや、それこそが、今俺を悩ませる種であった。

 非の打ち所がない優等生の企画を練ったが、果たしてそれはこの愚物が企てる意味があるのか、と。


 なんとも度し難い性だ。しかし、ロシアンルーレット団子とかを出すのは甘味への冒涜だ。そんな愚行を企む輩は死ねばいい。

 しかし、ならば? そう考えると、答えが一向に出てこない。


 つぼみは、悩む俺を観て嗤うばかりだし、兄とは少し気まずいままだ。兄は変わらず俺を気遣い手を差し伸べてくれるが、その手を取るに俺が至らない。


 つぼみとの決着をつけるまでは、兄弟は以前の関係に戻ることは叶うまい。


「……さて、どうしたものかな」

『愚物愚物と言いながら、並外れたことが出来ない。なるほど、いじらしいな』

「……まったく馬鹿らしいことだ」

『言ったろ、君は所詮』

「わかってる。わかってるさ」

『……そうか』


 俺は無論帰宅部であるから、部活動の出し物で、というわけにもいかない。有志を集って何かをやるというのも無しではないが、今からやっても間に合わない。既に構成は決まっているから、割って入る隙などはないのだ。


 このまま一人で悩むだけなら、家でも出来る。ため息を吐きながら、帰途に着く。

 この愚物の頭をどれだけ唸らせても、妙案は浮かびそうになかった。浮きまくる俺なのだから、せめて思考くらいは長けていて欲しかったものだが、しかし浮かばない。全く浮かばない。


 結局、家に着くまで何も浮かばなかった。

 駐車場を見れば、兄の自転車が止められている。どうやら先に帰っているらしい。


『つまらない意地を張っている場合じゃないんじゃあないか?』

「……わかってる」

『天津 睦美を楽しませる良い物を創り、淀見 つぼみへの未練を断ち切る。なら、別に兄の力を借りてもいいじゃあないか』

「わかってる! わかってるんだ、そんなこと!」

『なら、このまま。納得のいく出来に仕上げないまま、彼女を招くのか?』

「……わかってる……わかってるんだ……そんな、こと」


 三人寄らば文殊の知恵という。三本の矢は、折れないという。昔から、俺たちは三人だった。


 今は、一人とは同じ役割を背負い、同じ目的のために邁進している。ぷかぷか浮きまくる俺がなぜ未だ地上に留まるクラスメイトと歩みを共にできているいるかといえば、それはつぼみが重石となり、俺を繋ぎ止めてくれているからに他ならない。以前と変わらず、頼れる初恋の人である。


 そしてもう一人は、無論のこと、我が兄である。兄そのものが文殊のようなものだから、兄に頼めば三人ならぬ百人力ですらある。というか兄以外は賑やかしで、兄が文殊だったのだと、俺はこのあかね祭実行委員として活動する中で、身に染みて理解していた。つぼみは本気でやれば有能だが、何をするにしても滅多に全力を出さないから、そこまであてにできない。


 結果を重視するのなら、百人力の兄に頼らぬ手はない。

 そんなことは百も承知だ。兄が、頼まれて断らぬことも。では何が引っかかるのかと言えば、それは当然俺の側、その心境にある。

 つぼみを取られた嫉妬心などという馬鹿げたものが、今でも俺の中で燻っているのだ。


 だから、兄に頼らず成し遂げることに躍起になっている。そうすることで、未練を断ち切り、まっさらな自分で、睦美さんと向き合えるから。

 しかし、だ。

 意地の為に、出来を捨てるのか?

 それで、睦美さんに真に向き合うと言えるのか。


『わかってるんだろう?』

「……ああ。わかってるさ」

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

感想や評価、誹謗中傷でもくださると、作者は嬉しいです。

次回でもよろしくお願いします。


時間飛びすぎですかね…。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 3週間も交流しといて、睦美はそんな突飛なこと求めてるのかな?楽しませたいって飛鳥の想いは痛いほどわかるけど、所詮思考力は凡人だからね。でも、睦美が何を求めてる、何をしたいか、普通じゃな…
[良い点] むしろ1日ずつ進められたら流石にしんどかったので飛んで正解だと自分は思います。 [気になる点] まずは、意地を張って良いもの見せようと思ってることが間違いなんだよね、文化祭ってものはこうい…
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