第二幕 途上運命前夜デステニーLINE 5
二幕の五話ですね、よろしくお願いします。
時系列的には、二幕の初めの直後。飛鳥が睦美の家に行って夜を明かしたところですね、ちょっとわかりにくかったかな。
「んん……ん、んん……?」
9月の2日。その早朝。深夜とも朝ともいえない午前4時。寝ぼけ眼を擦るボクを迎えたのは、鳥の囀りと、1人の少年だった。
「おはよう、睦美さん」
「……」
はて、いったい、目の前の同年代の少年は、なぜ不可侵のこのボクの部屋にいるのか?
記憶を辿る内に、どんどん顔が紅潮していくのがわかった。
「う、あ。お、おはよう……飛鳥君……」
「随分としどろもどろだが、それが普段の睦美さんということでいいのかな」
「……意地悪だなあ。そうだよ、ボクなんてこんなんだよ」
「……良かった。たしかに、これは普段の睦美さんだな。画面越しで、しかもチャットでしか知らないが、たしかにそうだ」
「……意地悪だなあ」
さて、そう言うボクは、どんな顔をしているのだろう。赤く染まりきって茹で蛸みたいになっているかもしれない。
『顔でも洗ってきたらどうだ』
「う、うん。顔、洗ってくるね」
「ああ、わかった」
返事を聞ききる前に、駆けて部屋を出た。階段を駆け降り、洗面所に着く。
鏡に映る自分を見て、ふと、飛鳥君に、自分はどう見られているのかという疑念が生じた。
「ど、どうしよう。ね、寝顔、見られちゃったあ」
当然の羞恥心が湧き上がった。なんと軽率なお願いをしてしまったのか? 願った後悔はしないが、思慮すべきであったという点には、後悔あるのみだった。
そうしていれば、もう少し心の準備もできたというものだ。そんなことを考えられるのは、平時の自分に戻れている証明か。
本当に、全ては飛鳥君のおかげだ。
自分は変ではないだろうか? いや、変か否かであれば、アルビノであるボクは間違いなく異様だけど。
どうあれ、彼に見られている間は、女の子として恥のないボクでいたかった。マホちゃんが居たら、その一人称が恥でなくてなんなのかって言うだろうけど。
「……それだって、肯定してくれたもん」
ボクに、ボクのままでいいと言ってくれた。ボクを、肯定してくれた。
きっと、下心なく純粋に言ってくれた。
「えへ、えへへ」
緩みきった自分が、目の前に居た。
「頑張れ、ボク」
まだ、恋とかそういうのではない。ピンチを助けてもらったから好きになるとか、そんな単純なものではないのだ。
ただ、人として恩がある。友としても借りがある。
……友達の定義はどうでもいいけど、何通もプライベートなやりとりをしたらそれはもう友達でいいだろう……多分。
なにより、自分が、妹からの逃避ではないと確信するまで、恋だなんて思ってはいけない。
つりばし効果だとか、そんなもので選ばれては、飛鳥君も可哀想だ。
パンと頬を叩いて、顔を洗ってから部屋に戻った。
見慣れた部屋だが、一つのアクセントで印象はまったく変わる。
なにせ、異性である。異性の男子である。……いや異性なら男子か。
ともかく、男の子である。
この引きこもりの部屋に、異性……? さて、乙女ゲームか何かだろうか? これは。
「えっと、えっと……」
まず言うべきは何か? 礼か? 謝罪?
そんな袋小路に、礼の答えをだし、口にしようとした時だった。
「あ」
ぐう〜、と。
したのは、お腹の音だった。
一瞬自分のお腹かと思って、また紅潮しそうになったが、どうやら音源は飛鳥君らしい。
「あ、と。じゃあ、朝ごはんにしようか」
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