第二幕 途上運命前夜デステニーLINE 3
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二幕の三話です。
よろしくお願いします。
吉川東高校は、その文化祭をあかね祭と呼び、開催時期は二学期早々9月の末。
馬鹿高校の阿呆どもへの抑圧は変わらないが、その日ばかりは内なる愚物の精神をほどほどに解放することを許される。
各クラス、出し物を決め、愚物の真の姿を晒してどんちゃん騒ぎの馬鹿騒ぎ。正しく、年に一度のお祭りであった。
そして、そのあかね祭が実行委員として、今まさにクラスの面々を取りまとめる努力をしているのが、俺、蓮城 飛鳥である。
9月の2日。二学期の2日目。その終わりの授業のホームルーム。お題は、来るあかね祭の出し物だ。如何に羽目を外すかという、愚物の命題とも言える議題であった。
最大多数の最大幸福、多数決という名の暴力により、望まぬあかね祭実行委員の座を勝ちとってしまった俺だが、隣にあるのがつぼみというのは、果たして幸か不幸か。
……どちらでもあるというのが、なんとも情けない真意になりそうだった。
ところで、我がスマホに記された記録。そこには、一つのやりとりがあった。
というのは、今日の朝のことだ。
睦美さんの部屋で夜を明かしたが、別段何かがあるわけでもない。それは、まあ当然のことだろう。
取り留めもない話をずっとしていた。寝る前と、起きた後。時々声の震える睦美さんと、ずっと、話していた。
そんな中、とりわけ睦美さんが食いついたのが、学園祭。あかね祭のことであった。渋谷から吉川へ帰る間の一時間の間、電車内でずっとあかね祭についてやりとりしていた。
そこで、一つ妙な話を聞いた。曰く、去年と、今年の学園祭に、自分は縁がないというのだ。学徒の身でありながら、それはなんとも理解の及ばないことだった。去年がどうというのはまあ、病欠なり何なりで説明がつくが、まだ実行されていないだろう今年までがそうというのは一体何の謂か。……推することは不可能ではないが、確証が持てはしないし、そもそも、俺は睦美さんが話してくれるのを待つ選択をしたのだから、こちらから詮索するのはナシだろう。それが、こちらのアプリの言い分でもあった。
とにかく、彼女があかね祭に興味を示したのなら、するべきは一つだった。
己が普段の愚行に感謝した。それがあるから、この座を押しつけられることになったのだから。
「皆は、何かしたいことがあるのか」
黒板の前両サイドにつぼみと配置される形の俺が問うた。
「飛鳥使ってモグラ叩きでもやれば、飛鳥の馬鹿も治って一石二鳥じゃね?」
などと抜かすのは、問題児の乱麻 國弘。
「頭を叩くと馬鹿が治るとはどういう道理だ。家電か俺は」
「いや、こう、馬鹿であることすら忘れるような一撃を見舞ってやればいいのではと」
「下手しなくても召されるな。馬鹿は死ななきゃ治らないってか? やかましいわ」
十回は舌打ちしながら、一応板書していく。
「じゃあ、次」
「私はなんかこう、お店やりたいな」
クラスの女子。確か、波江さんだったか。が、如何にも安牌といった感じの案を出した。
「まあ、こういうのだな。なんの店が、とかはあるか?」
「可愛い服着たい!」
「となると?」
「ぱっと浮かぶのは、メイド喫茶とかかなあ」
「メイド喫茶か、了解。問題は、衣装をどうするかだな。メイド喫茶でなくても言えることだが。……たしか、門脇さんは演劇部だったか? 衣装で使えそうなのとかあるか?」
「あー。メイド服は流石にないなあ。けど着物とかなら使えるかも。顧問に掛け合ってみる?」
答えたのは、演劇部の副部長の門脇さんだ。
「なるほど。波江さんは、それでいいか?」
「うん。問題ないよー」
「わかった」
そんなやり取りの陰で、野郎どものガッツポーズが散見される。まあ我がクラスには、学園に名を轟かすマドンナ、麗しき麗人、淀見 つぼみがある。それを踏まえれば、こいつらのリアクションは妥当と言えるだろう。
かくいう俺とて、以前であればあいつらの側に立っていたはずだし。つぼみの着物姿は以前何度か目にしたが、あれは格別だった。
それ以外がモノクロームに映る様な光景。抜群の美しさを誇る花が自ら辺りの草を間引くというイメージが想起された。そもそもゲームが成立しない、並外れた理外の魔力の魔性。俺の心を占有し続けた、我が世の春にして冬の美だった。
その後意見を募ったが、皆、波江さんの案に異論はない様だった。野郎どもはつぼみを始めとした女子陣の晴れ姿を見たいし、女子方は可愛い服に袖を通したい。
当然の如く、モグラ叩きとかいうふざけた案を蹴散らし、店を出すことが決められ、ホームルームの半分を終えた。
「蓮城君、着物、オッケー出たよー。使える着物的に、大正浪漫みたいなのは無理そうかなー。お団子屋さんとかだと、マッチするかも」
二時限ぶっ通しのホームルームの間の休み時間に許可を取ってきてくれた門脇さんが言う。
「団子屋か。いいのじゃないか。となれば、出来合いの物を売るか、自分たちで作るかだが……」
「許可を取るのが面倒かもね。出来合いのを売る方が良さそう」
「うーん。俺は作る方に一票。お汁粉とかも食べたい」
甘味は俺も好む所だ。甘味は人生を豊かにしてくれる。間口は広いに越したことはないのだ。お汁粉も出せて困ることはあるまい。
余れば俺が全て処理することもできる。……そうなることを願う俺がいないわけではない。
「相変わらず好きね。多数決をとりましょうか……と。とるまでもなさそうね」
女子陣の表情を見れば、自分たちで作った方が楽しそうだというのが多数派だと一目瞭然だった。
我が吉川東高校は、男女比1:2だ。女子が数の暴力を振るえば、男子などひとたまりもない。まあ、今の場合女子が女子を殴っている形だが。
「私だって自分で作れるなら作りたいし。わかったわ。そうしましょう」
「よし、じゃあ、決まりだな。詳細は、以降詰めていこう」
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次回でもよろしくお願いします。
睦美視点には次次回辺りに戻るかと思います。




